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名将言行録 / 『名将言行録』黒田長政 幼き日の火事場の采配

勘解由次官孝高の子、從四位下に叙し、侍從兼筑前守に任ず。筑前に封ぜられ、福岡城に住す。元和九年閏八月四日卒、年五十六。 ○長政、幼名松壽と曰ふ。一夜、孝高の弟、甚吉宅に、火災出來たり。松壽急ぎ行向ひ、家人に下知して曰く、我汝が持出したる家財を守り盜人を防ぐべし、家人等は男女共に、悉く家財を運び出し候へとて、家財を持出したる處に在りて、薙刀の鞘を外し、盜人來れば、追拂ひ家人に力を添へければ、盜賊の患なく、家人等、家財を悉く運び出しける。是を見聞く人、感ぜざるはなかりき。

新字:勘解由次官孝高の子、従四位下に叙し、侍従兼筑前守に任ず。筑前に封ぜられ、福岡城に住す。元和九年閏八月四日卒、年五十六。 ○長政、幼名松寿と曰ふ。一夜、孝高の弟、甚吉宅に、火災出来たり。松寿急ぎ行向ひ、家人に下知して曰く、我汝が持出したる家財を守り盗人を防ぐべし、家人等は男女共に、悉く家財を運び出し候へとて、家財を持出したる処に在りて、薙刀の鞘を外し、盗人来れば、追払ひ家人に力を添へければ、盗賊の患なく、家人等、家財を悉く運び出しける。是を見聞く人、感ぜざるはなかりき。

書き下し

勘解由次官孝高の子、從四位下に叙し、侍從兼筑前守に任ず。筑前に封ぜられ、福岡城に住す。元和九年閏八月四日卒、年五十六。 ○長政、幼名松壽と曰ふ。一夜、孝高の弟、甚吉宅に、火災出來たり。松壽急ぎ行向ひ、家人に下知して曰く、我汝が持出したる家財を守り盜人を防ぐべし、家人等は男女共に、悉く家財を運び出し候へとて、家財を持出したる處に在りて、薙刀の鞘を外し、盜人來れば、追拂ひ家人に力を添へければ、盜賊の患なく、家人等、家財を悉く運び出しける。是を見聞く人、感ぜざるはなかりき。

現代語訳

勘解由次官孝高の子で、従四位下に叙し、侍従兼筑前守に任じられました。筑前に封ぜられ、福岡城に住みました。元和九年閏八月四日に亡くなり、享年五十六でした。 ○長政は、幼名を松寿といいました。ある夜、孝高の弟、甚吉の屋敷で火災が起こりました。松寿は急いで駆けつけ、家人に指図して言いました。「我は、お前たちが持ち出した家財を守り、盗人を防ぐ。家人たちは男も女も、すべて家財を運び出せ」と。そして家財を持ち出した所に立って、薙刀の鞘を外し、盗人が来れば追い払い、家人に力を添えたので、盗賊の心配もなく、家人たちは家財をすべて運び出すことができました。これを見聞きした人で、感心しない者はありませんでした。

解説

長政の略歴と、幼い頃の逸話です。長政は孝高の子で、のちに筑前五十万石余りの福岡藩主となりました。ここで語られる幼名松寿の火事場の采配は、役割を分けて自分は防衛に徹するという、組織運営の基本形です。運び出す者と守る者を分ければ、混乱の中でも物が失われません。もっとも、子どもが一人で指揮をとったという細部は、顕彰の色合いのある逸話として伝わるもので、そのまま史実とは断定できません。それでも、非常時に自分の持ち場を決めて動く姿勢は、現代の危機対応にも通じます。
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この章句が説くこと

長政松寿火事役割分担防衛福岡藩

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