古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

名将言行録 / 『名将言行録』黑田孝高 草鞋と麺桶の遺し物

天下を望む者は、親も子も顧みては叶はぬなり、此博奕は其方中々我に及ぶまじと言はれ、偖小性を呼び、紫の服紗包を出して、是は譲物なりと言ふ、開き見れば、草鞋、木履を片足づゝと溜塗の麺桶なり、是を長政に譲て曰く、軍は死生の界なれば、分別過ぐれば、大事の合戰は成し難し、草鞋と、木履とかたかたにて二つの物闕にてなければ、大事の場合思切は立難し、其方は賢き故に、先の手が見え過ぎ候て、何にとしても大なる武邊は成るまじ、又此麺桶は飯入なり、貴賤共兵糧なければ、何事もならぬものなり、入らざることに、金銀を費し、損をせんより、兵糧を貯へて軍陣の用意を、常に心掛けよと言ふことを示さん爲めに譲るなりと。

新字:天下を望む者は、親も子も顧みては叶はぬなり、此博奕は其方中々我に及ぶまじと言はれ、偖小性を呼び、紫の服紗包を出して、是は譲物なりと言ふ、開き見れば、草鞋、木履を片足づゝと溜塗の麺桶なり、是を長政に譲て曰く、軍は死生の界なれば、分別過ぐれば、大事の合戦は成し難し、草鞋と、木履とかたかたにて二つの物闕にてなければ、大事の場合思切は立難し、其方は賢き故に、先の手が見え過ぎ候て、何にとしても大なる武辺は成るまじ、又此麺桶は飯入なり、貴賤共兵糧なければ、何事もならぬものなり、入らざることに、金銀を費し、損をせんより、兵糧を貯へて軍陣の用意を、常に心掛けよと言ふことを示さん為めに譲るなりと。

書き下し

天下を望む者は、親も子も顧みては叶はぬなり、此博奕は其方中々我に及ぶまじと言はれ、偖小性を呼び、紫の服紗包を出して、是は譲物なりと言ふ、開き見れば、草鞋、木履を片足づゝと溜塗の麺桶なり、是を長政に譲て曰く、軍は死生の界なれば、分別過ぐれば、大事の合戰は成し難し、草鞋と、木履とかたかたにて二つの物闕にてなければ、大事の場合思切は立難し、其方は賢き故に、先の手が見え過ぎ候て、何にとしても大なる武邊は成るまじ、又此麺桶は飯入なり、貴賤共兵糧なければ、何事もならぬものなり、入らざることに、金銀を費し、損をせんより、兵糧を貯へて軍陣の用意を、常に心掛けよと言ふことを示さん爲めに譲るなりと。

現代語訳

「天下を望む者は、親も子も顧みていては叶わぬものだ。この博奕は、お前はとても我に及ぶまい」と言われ、さて小姓を呼び、紫の袱紗包みを出して「これは譲り物だ」と言いました。開いて見ると、草鞋と木履を片足ずつと、溜塗の麺桶でした。これを長政に譲って言うには、「軍は死生の境だから、分別が過ぎると、大事な合戦はなしがたい。草鞋と木履を片方ずつにして、二つの物が欠けていても構わないという心でなければ、大事の場で思い切りは立てがたい。お前は賢いので、先の手が見えすぎて、どうしても大きな武辺はなるまい。また、この麺桶は飯入れである。貴賤ともに兵糧がなければ、何事もならぬものだ。要らぬことに金銀を費やして損をするより、兵糧をたくわえて軍陣の用意を常に心掛けよと示すために譲るのだ」と。

解説

前の逸話の続きで、孝高が長政に譲ったとされる三つの品です。片足ずつの草鞋と木履は、揃っていなくても進むという思い切りの象徴です。賢い長政は先が見えすぎて踏み切れなくなるという指摘は、慎重さが強みの管理職にも当てはまるでしょう。麺桶は飯入れで、兵糧、つまり資金や備蓄の大切さを示します。判断力と備えの両方を戒めた品々ですが、遺言としてこの形で伝わった話であり、細部の確証はありません。思い切りと備えを一つにして持つという視点は、現代の事業でも役立ちます。
『人生の方程式』の表紙

人生を、一行の式にしてみた。

志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。

本の中身を見る

この章句が説くこと

孝高草鞋麺桶思い切り兵糧備え

関連する章句

本2冊(人生の方程式・人生の教科書)+師導1か月=700円本を見る