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名将言行録 / 『名将言行録』黑田孝高 今川より太閤に倣え

○關白秀次、孝高に、今川の教訓見たるか、面白きものなりと言はる。孝高、未だ一見仕らず候へ共、君には入らざる御事なり、今川を御似せあらんよりは、御親父太閤を御似せあれと申す。秀次、太閤の事は中々成らず、今川抔を似せて見度と言はる。孝高、夫は卑我慢とて惡しき御事なり、太閤にも勝らんと思召すものなりと申ける。秀次、又、其方は何程の器量と思ふぞと問はる。中の位と申す、如何にとあれば、上なれば、太閤に仕へずして天下を取るなり。又下にてもなければこそ、國を取り居り候と申せり。

新字:○関白秀次、孝高に、今川の教訓見たるか、面白きものなりと言はる。孝高、未だ一見仕らず候へ共、君には入らざる御事なり、今川を御似せあらんよりは、御親父太閤を御似せあれと申す。秀次、太閤の事は中々成らず、今川抔を似せて見度と言はる。孝高、夫は卑我慢とて悪しき御事なり、太閤にも勝らんと思召すものなりと申ける。秀次、又、其方は何程の器量と思ふぞと問はる。中の位と申す、如何にとあれば、上なれば、太閤に仕へずして天下を取るなり。又下にてもなければこそ、国を取り居り候と申せり。

書き下し

○關白秀次、孝高に、今川の教訓見たるか、面白きものなりと言はる。孝高、未だ一見仕らず候へ共、君には入らざる御事なり、今川を御似せあらんよりは、御親父太閤を御似せあれと申す。秀次、太閤の事は中々成らず、今川抔を似せて見度と言はる。孝高、夫は卑我慢とて惡しき御事なり、太閤にも勝らんと思召すものなりと申ける。秀次、又、其方は何程の器量と思ふぞと問はる。中の位と申す、如何にとあれば、上なれば、太閤に仕へずして天下を取るなり。又下にてもなければこそ、國を取り居り候と申せり。

現代語訳

関白秀次が孝高に、今川の教訓は見たか、面白いものだと言いました。孝高は、まだ一見しておりませんが、あなたには必要のないことです、今川に似ようとされるよりは、ご親父の太閤にお似せなさいと申しました。秀次が、太閤のことはなかなか及ばない、今川などをまねてみたいと言いました。孝高は、それは卑しい我慢というもので悪いことです、太閤にも勝ろうと思われるものですと申しました。秀次はまた、おまえはどれほどの器量と思うかと尋ねました。孝高は、中の位でございますと言いました。どうしてかと問われると、上であれば太閤に仕えずに天下を取るでしょう、また下でもないからこそ、国を取っていますと申しました。

解説

関白秀次に、今川家の教訓より父同然の太閤を手本にせよと答え、自分の器量を中の位と評した、とんち問答のような逸話です。上手でないものをまねるより、最も大きな目標を手本にすべきだ、という趣旨と、自分を過大にも過小にも見ない物言いが特徴です。逸話であり、実際の会話かは不明です。現代でも、無難な教科書を引くより、組織の核となる人物の姿勢を学べ、という助言に通じます。自己評価を的確に言語化できることも、管理職の資質です。
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この章句が説くこと

黒田孝高豊臣秀次手本器量自己評価中の位

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