名将言行録 / 『名将言行録』島津義久 門は茅葺でよい
○薩摩國分の城門茅葺にてありし所、破損せし故、山田安利、伊集院抱善、義久に申は、御城御門破損致したるに付、此節御修復の序に小板葺に致し申すべし、他國より使者抔參りても、三箇國の太守の御座ます御城門茅葺にては、餘り粗末の樣に存候とありければ、義久聞て他國より使者を越し候はゞ、必ず心ある者と存ずるなり、尤も當國の地を數里通りて參るなり、然らば三箇國の太守の城門は、茅葺にて粗末なれども、國民の風俗を見れば、富み榮えたり、太守の仁政定めて厚く之あるべくと肝要の所にこそ氣を付け申べけれ、小板葺にて結構に致しても、百姓疲れては國主の仕置宜しからざるを見申べければ、肝要の所に氣を付け申べく、入ざる所に氣を付け申間敷、本の茅葺にて苦しからずと言はれけり。
新字:○薩摩国分の城門茅葺にてありし所、破損せし故、山田安利、伊集院抱善、義久に申は、御城御門破損致したるに付、此節御修復の序に小板葺に致し申すべし、他国より使者抔参りても、三箇国の太守の御座ます御城門茅葺にては、余り粗末の様に存候とありければ、義久聞て他国より使者を越し候はゞ、必ず心ある者と存ずるなり、尤も当国の地を数里通りて参るなり、然らば三箇国の太守の城門は、茅葺にて粗末なれども、国民の風俗を見れば、富み栄えたり、太守の仁政定めて厚く之あるべくと肝要の所にこそ気を付け申べけれ、小板葺にて結構に致しても、百姓疲れては国主の仕置宜しからざるを見申べければ、肝要の所に気を付け申べく、入ざる所に気を付け申間敷、本の茅葺にて苦しからずと言はれけり。
書き下し
○薩摩國分の城門茅葺にてありし所、破損せし故、山田安利、伊集院抱善、義久に申は、御城御門破損致したるに付、此節御修復の序に小板葺に致し申すべし、他國より使者抔參りても、三箇國の太守の御座ます御城門茅葺にては、餘り粗末の樣に存候とありければ、義久聞て他國より使者を越し候はゞ、必ず心ある者と存ずるなり、尤も當國の地を數里通りて參るなり、然らば三箇國の太守の城門は、茅葺にて粗末なれども、國民の風俗を見れば、富み榮えたり、太守の仁政定めて厚く之あるべくと肝要の所にこそ氣を付け申べけれ、小板葺にて結構に致しても、百姓疲れては國主の仕置宜しからざるを見申べければ、肝要の所に氣を付け申べく、入ざる所に氣を付け申間敷、本の茅葺にて苦しからずと言はれけり。
現代語訳
薩摩の国分の城門は茅葺きでしたが、破損したので、山田安利と伊集院抱善が義久に申し上げました。お城の御門が破損しておりますので、この度、修復のついでに、小板葺きにいたしましょう。他国から使者などが参りましても、三か国の太守のいらっしゃるお城の門が茅葺きでは、あまりに粗末なように存じます、と。義久は聞いて、他国から使者を寄越すならば、必ず心ある者だと思う。しかも当国の地を数里も通って来るのである。それならば、三か国の太守の城門は、茅葺きで粗末だけれども、国民の風俗を見れば、富み栄えている。太守の仁政が、さだめて厚くあるのだろう、と、肝要の所に気を付けるはずだ。小板葺きで立派にしても、百姓が疲れていては、国主の仕置がよろしくないと見るだろう。だから、肝要の所に気を付けよ。要らぬ所に気を付けてはならない。もとの茅葺きで差し支えない、と言われました。
解説

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