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名将言行録 / 『名将言行録』明智光秀 謀反の秘密と民心

○光秀、謀反の事、一二の老臣の外には知らせず、諸卒皆西國立と思へり。龜山より樫原まで出で、西國の方へ赴くかと思へば、左はなくて京の方へ行く。諸卒皆不審す。桂川を渡て、初めて陣觸せり。機事洩れ易きを以てなり。既に信長を弑し、三宅式部大輔秀朝を京都の守護職と爲し、京中の地子錢を免し、仕置を正くせり。光秀亡びて後、七月盆中戸毎に燈を點じて、光秀の冥福を祈りしとぞ。非義の義と雖も、其人心を得ること斯の如し。

新字:○光秀、謀反の事、一二の老臣の外には知らせず、諸卒皆西国立と思へり。亀山より樫原まで出で、西国の方へ赴くかと思へば、左はなくて京の方へ行く。諸卒皆不審す。桂川を渡て、初めて陣触せり。機事洩れ易きを以てなり。既に信長を弑し、三宅式部大輔秀朝を京都の守護職と為し、京中の地子銭を免し、仕置を正くせり。光秀亡びて後、七月盆中戸毎に灯を点じて、光秀の冥福を祈りしとぞ。非義の義と雖も、其人心を得ること斯の如し。

書き下し

○光秀、謀反の事、一二の老臣の外には知らせず、諸卒皆西國立と思へり。龜山より樫原まで出で、西國の方へ赴くかと思へば、左はなくて京の方へ行く。諸卒皆不審す。桂川を渡て、初めて陣觸せり。機事洩れ易きを以てなり。既に信長を弑し、三宅式部大輔秀朝を京都の守護職と爲し、京中の地子錢を免し、仕置を正くせり。光秀亡びて後、七月盆中戸毎に燈を點じて、光秀の冥福を祈りしとぞ。非義の義と雖も、其人心を得ること斯の如し。

現代語訳

光秀は、謀反のことを、一、二人の老臣のほかには知らせず、諸卒は皆、西国へ向かうのだと思っていました。亀山から樫原まで出て、西国の方へ赴くかと思うとそうではなく、京の方へ行く。諸卒は皆不審に思いました。桂川を渡って、初めて陣触れをしました。機密は漏れやすいからです。すでに信長を殺し、三宅式部大輔秀朝を京都の守護職とし、京中の地子銭を免除して、政治を整えました。光秀が滅んだ後、七月の盆の間、戸ごとに灯をともして光秀の冥福を祈ったということです。道に外れた義であっても、その人心を得ることはこのようであった、と言います。

解説

本能寺の変に向かう光秀の行軍と、変の後の治め方を語る章句です。計画を知る者を限り、桂川を渡るまで目的を明かさなかったのは、機密を守る措置として語られます。事後に地子銭を免除して民心を得ようとした点や、盆に灯をともして冥福を祈った話は、後世に伝わる逸話で、確証は分かりません。謀反という行為そのものを肯定するものではなく、民が光秀に示した情を伝える記述です。現代では、情報管理の方法と、民心を得る施策の効果を、冷静に分けて読むのが役立ちます。
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この章句が説くこと

本能寺謀反機密地子銭民心桂川

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