及門遺範 / 偽書の弁別と善を取る度量
一古文尙書孝經孔傳孔子家語、後人僞作、東(神州)西(漢土)諸儒辨之、既有明說、先生蚤歲亦辨明之、有舜典二十八字考、又辨安國孝經序僞造之跡、鑿鑿有確據、時太田公幹倡考證學、論說經義、大有所發明、其辨古文繆妄、極爲詳悉、先生每推稱其博大、使門人謄寫其所著書、或使之游其門而受業、是以門下之士、講論經書、有得於公幹者亦多、先生取善於人、不挾彼此、如此、公幹亦與先生相懽甚厚、嘗有送序、曰、天下之英雄、公與我而已、蓋公幹所長雖在明經、而先生之志則在事業、故以英雄目之也、
新字:一古文尚書孝経孔伝孔子家語、後人偽作、東(神州)西(漢土)諸儒弁之、既有明説、先生蚤歳亦弁明之、有舜典二十八字考、又弁安国孝経序偽造之跡、鑿鑿有確拠、時太田公幹倡考証学、論説経義、大有所発明、其弁古文繆妄、極為詳悉、先生毎推称其博大、使門人謄写其所著書、或使之游其門而受業、是以門下之士、講論経書、有得於公幹者亦多、先生取善於人、不挟彼此、如此、公幹亦与先生相懽甚厚、嘗有送序、曰、天下之英雄、公与我而已、蓋公幹所長雖在明経、而先生之志則在事業、故以英雄目之也、
書き下し
一、古文尚書・孝経孔伝・孔子家語は、後人の偽作なること、東(神州)西(漢土)の諸儒之を弁じ、既に明説有り。先生蚤歳に亦た之を弁明し、舜典二十八字考有り。又安国の孝経序の偽造の跡を弁じ、鑿鑿として確拠有り。時に太田公幹考証学を倡へ、経義を論説し、大いに発明する所有り。其の古文の繆妄を弁ずること、極めて詳悉なり。先生毎に其の博大を推称し、門人をして其の著す所の書を謄写せしめ、或いは之をして其の門に游びて業を受けしむ。是を以て門下の士、経書を講論して、公幹に得る有る者も亦た多し。先生善を人に取りて、彼此を挟まざること此くの如し。公幹も亦た先生と相懽ぶこと甚だ厚く、嘗て送序有りて曰く、天下の英雄は、公と我のみ、と。蓋し公幹の長ずる所は明経に在りと雖も、先生の志は則ち事業に在り。故に英雄を以て目するなり。
現代語訳
一 『古文尚書』『孝経孔伝』『孔子家語』は後世の人の偽作であることを、日本と中国の学者たちが弁じ、すでに明らかな説があります。先生も若い頃にこれを明らかにし、『舜典二十八字考』を著しました。また孔安国の『孝経』の序が偽造されたあとをはっきり弁じ、確かな根拠がありました。当時、太田公幹が考証学を唱え、経書の意味を論じて、大いに新しい発見をしていました。古文の誤りと妄りを弁じることは、きわめて詳しいものでした。先生はいつもその博大さをたたえ、門人にその著作を書き写させ、あるいは門人をその門下に遊ばせて学ばせました。そのため門下の者で、経書を講じて公幹から得るところがあった者も多くいました。先生が善いものを人から取り入れるのに、あちらこちらの区別をつけなかったのは、このようなことです。公幹も先生と深く親しみ喜び合い、かつて送別の序に「天下の英雄は、あなたと私だけだ」と書きました。公幹の長所は経書の解明にありましたが、先生の志は事業にありました。だから英雄と見立てたのでしょう。
解説
この章句が説くこと
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