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甲陽軍鑑 / 品第十四

それより勝賴公つよくはたらかんとし給ひ、つよみを過しておくれを取り給ふ、勝賴公强過て國を破り給はんこと疑あるまじ、侍の輕薄にほめ奉るをよきと思し食すは、全体牛が尾の劒をねぶり、舌をきらして死するを知らず候に、ひとしければこそ、此本を四君子命期の卷とは名づくるなり仍て如件天正三年乙亥年六月吉日高坂彈正書之長坂長閑老跡部大炊助殿參

新字:それより勝頼公つよくはたらかんとし給ひ、つよみを過しておくれを取り給ふ、勝頼公強過て国を破り給はんこと疑あるまじ、侍の軽薄にほめ奉るをよきと思し食すは、全体牛が尾の劒をねぶり、舌をきらして死するを知らず候に、ひとしければこそ、此本を四君子命期の巻とは名づくるなり仍て如件天正三年乙亥年六月吉日高坂弾正書之長坂長閑老跡部大炊助殿参

書き下し

それより勝頼公つよくはたらかんとし給ひ、つよみを過しておくれを取り給ふ、勝頼公强過て国を破り給はんこと疑あるまじ、侍の軽薄にほめ奉るをよきと思し食すは、全体牛が尾の劒をねぶり、舌をきらして死するを知らず候に、ひとしければこそ、此本を四君子命期の巻とは名づくるなり仍て如件天正三年乙亥年六月吉日高坂弾正書之長坂長閑老跡部大炊助殿参

現代語訳

それなのに勝頼公は(信玄公より)強く働こうとなされ、強みを過ごして後れを取られた。勝頼公が強過ぎて国を破られることは疑いあるまい。侍が軽薄に褒め奉るのをよいと思し召すのは、まったく牛が尾の剣を舐めて舌を切らして死ぬのを知らないのに等しいので、この本を四君子命期の巻と名付けるのである。よってくだんのごとし。天正三年乙亥年六月吉日、高坂弾正これを書く。長坂長閑老・跡部大炊助殿へ参る。

解説

品第十四の結びで、高坂は勝頼が強過ぎて国を破るのは疑いないと断言する。軽薄な称賛を喜ぶのは、牛が尾の剣を舐め、血の甘さに舌を切って死ぬのと同じだという。四人の大将の型を並べたこの四品を、君子の命を左右する巻と名付けた理由がここにある。耳に心地よい称賛ほど、自分を傷つけていないか疑ってみる必要がある。甘い言葉を喜ぶ主君の周りには、甘い言葉しか言わない者が集まるからである。

この章句が説くこと

称賛慢心強み勝頼牛の尾諫言

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