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甲陽軍鑑 / 品第十四

扨大將强過給へば常にきほふて終にけがありけがあれば、まけてよき侍は大形はつる、能者はつれば猿のごとくなる、侍ども殘り居て作法あしく成、作法あしければ武邊は猶もよはし、よはければつよみ過たる大將もよはき名を取給ふ、扨こそ前に强過たる大將、末によはき大將にひとつなりと書しるす、如此の大將を、たそと尋ぬるに、武田廿八代目の四郞勝賴公にて御座候、

新字:扨大将強過給へば常にきほふて終にけがありけがあれば、まけてよき侍は大形はつる、能者はつれば猿のごとくなる、侍ども残り居て作法あしく成、作法あしければ武辺は猶もよはし、よはければつよみ過たる大将もよはき名を取給ふ、扨こそ前に強過たる大将、末によはき大将にひとつなりと書しるす、如此の大将を、たそと尋ぬるに、武田廿八代目の四郎勝頼公にて御座候、

書き下し

扨大将强過給へば常にきほふて終にけがありけがあれば、まけてよき侍は大形はつる、能者はつれば猿のごとくなる、侍ども残り居て作法あしく成、作法あしければ武辺は猶もよはし、よはければつよみ過たる大将もよはき名を取給ふ、扨こそ前に强過たる大将、末によはき大将にひとつなりと書しるす、如此の大将を、たそと尋ぬるに、武田廿八代目の四郎勝頼公にて御座候、

現代語訳

さて大将が強過ぎなさると、常にはやって、ついに怪我があり、怪我があれば負けて、よい侍はおおかた果てる。よい者が果てれば猿のような侍どもが残って作法が悪くなり、作法が悪ければ武辺はなおさら弱い。弱ければ、強み過ぎたる大将も弱い名を取られる。それゆえ前に、強過ぎたる大将は末には弱き大将と一つになる、と書き記したのである。このような大将を誰かと尋ねると、武田二十八代目の四郎勝頼公でございます。

解説

強過ぎは怪我を招き、怪我は負けを、負けはよい侍の喪失を、喪失は作法の乱れを、乱れは弱さを生む。こうして強過ぎる大将は、末には弱い大将と同じ名を取るという連鎖である。そして高坂は、それが主君勝頼だとはっきり名指しする。強さの暴走が弱さに行き着く道筋を、ここまで具体的に書いた例は珍しい。主君の名を挙げて書き残した高坂の覚悟も、あわせて読み取りたい。

この章句が説くこと

強み大将連鎖諫言勝頼弱さ

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