荀子 / 大略篇
為人臣下者,有諫而無訕,有亡而無疾,有怨而無怒。
書き下し
人の臣下たる者は、諫むること有るも訕ること無く、亡ること有るも疾むこと無く、怨むこと有るも怒ること無し。
現代語訳
臣下たる者は、主君を面と向かって諫めることはあっても、陰でそしることはない。意見が容れられずに職を去ることはあっても、主君を憎むことはない。心中に怨みを抱くことはあっても、怒りをぶつけることはない。
解説
仕える者の身の処し方を、三つの対比で示した一段です。諫めることは許されるが陰口は許されない。去ることは許されるが憎むことは許されない。怨みを抱くことまでは人情として認めるが、それを怒りとして爆発させることは許されない。荀子は臣下に無感情であれとは言っていません。不満も落胆も怨みも、感情としては生じてよい。ただしそれを表に出す形には節度がなければならない、というのです。ここには、正面から言うべきことは言い、それでも通らなければ潔く身を引くという、筋の通った姿勢が描かれています。組織で働く私たちにも重い問いかけです。異論を正面から述べているか、それとも陰で不平を漏らしているか。去るときに恨みを残していないか。感情そのものではなく、その扱い方が人の品位を決めます。