導師導古典を学びたいすべての人に

甲陽軍鑑 / 品第十四

其ごとく駿河義元公あまりかさみて、信長にて負討れ給ひて後よき衆はわきへなり、猿のごとくの侍を氏眞公崇敬に付て諸侍よき作法をとり失ひ、廐別當の小身なる見田村か茶碗一ツを三千貫にてかひつるを、氏眞公御前衆所望して是をみて見田村茶碗と名づくる、是を買は七度の鑓より手がらとてほむる、これ皆作法しらぬ猿のごとくなる侍の身の程もしらず大身衆うとく人のまねをして、堺の紹鷗が流の茶の湯にすく故也、

新字:其ごとく駿河義元公あまりかさみて、信長にて負討れ給ひて後よき衆はわきへなり、猿のごとくの侍を氏真公崇敬に付て諸侍よき作法をとり失ひ、厩別当の小身なる見田村か茶碗一ツを三千貫にてかひつるを、氏真公御前衆所望して是をみて見田村茶碗と名づくる、是を買は七度の鑓より手がらとてほむる、これ皆作法しらぬ猿のごとくなる侍の身の程もしらず大身衆うとく人のまねをして、堺の紹鴎が流の茶の湯にすく故也、

書き下し

其ごとく駿河義元公あまりかさみて、信長にて負討れ給ひて後よき衆はわきへなり、猿のごとくの侍を氏真公崇敬に付て諸侍よき作法をとり失ひ、厩別当の小身なる見田村か茶碗一ツを三千貫にてかひつるを、氏真公御前衆所望して是をみて見田村茶碗と名づくる、是を買は七度の鑓より手がらとてほむる、これ皆作法しらぬ猿のごとくなる侍の身の程もしらず大身衆うとく人のまねをして、堺の紹鷗が流の茶の湯にすく故也、

現代語訳

そのように駿河の義元公はあまりに勢いに乗って、信長に負けて討たれなさった後、よい衆は脇へ退き、猿のような侍を氏真公が崇敬したので、諸侍はよい作法を取り失い、厩別当の小身の見田村が茶碗一つを三千貫で買ったのを、氏真公の御前衆が所望してこれを見て見田村茶碗と名付け、これを買うのは七度の鑓より手柄だといって褒めた。これは皆、作法を知らない猿のような侍が身の程も知らず、大身衆や富裕な人の真似をして、堺の紹鴎流の茶の湯に好いたからである。

解説

義元の死後、今川家ではよい者が脇へ退き、身の程を知らない侍が重んじられた。茶碗一つに三千貫を投じることが、七度の鑓より手柄と褒められたという。組織が傾くと、本業の功より趣味や見栄が評価され始める。褒められる対象が本業から外れていく時が、衰えの兆しである。今何が称賛されているかを、自分の組織で見直したい。称賛の向きが変われば、人の努力の向きもそちらへ流れていく。

この章句が説くこと

評価見栄衰退作法今川氏真茶の湯

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る