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甲陽軍鑑 / 品第十三

表裏結句後には四五人の衆上杉殿御前十分になし、まして本間·井又をも則政公病者の僞りいひとてあしく仰られ候間、平井衆悉く本間·井又をそねみて、あしう取り沙汰するにより兩人の者男せず北條家へ內通したる大身衆、この儀をよろこび、すがの大膳·上原兵庫兩人へ使者をつめさせてをき、兩出頭衆の門外に駒のたてどもなし、それよりして平井の旗本侍衆大小ともに行儀惡くなり、武具の支度もかつ下やめ、亂舞法度あれども、表てむきは小謠を一ツうたはねども、屋敷のうちに座敷を立て、日々夜々に亂舞を張行す、

新字:表裏結句後には四五人の衆上杉殿御前十分になし、まして本間·井又をも則政公病者の偽りいひとてあしく仰られ候間、平井衆悉く本間·井又をそねみて、あしう取り沙汰するにより両人の者男せず北条家へ内通したる大身衆、この儀をよろこび、すがの大膳·上原兵庫両人へ使者をつめさせてをき、両出頭衆の門外に駒のたてどもなし、それよりして平井の旗本侍衆大小ともに行儀悪くなり、武具の支度もかつ下やめ、乱舞法度あれども、表てむきは小謡を一ツうたはねども、屋敷のうちに座敷を立て、日々夜々に乱舞を張行す、

書き下し

表裏結句後には四五人の衆上杉殿御前十分になし、まして本間·井又をも則政公病者の偽りいひとてあしく仰られ候間、平井衆悉く本間·井又をそねみて、あしう取り沙汰するにより両人の者男せず北条家へ内通したる大身衆、この儀をよろこび、すがの大膳·上原兵庫両人へ使者をつめさせてをき、両出頭衆の門外に駒のたてどもなし、それよりして平井の旗本侍衆大小ともに行儀悪くなり、武具の支度もかつ下やめ、乱舞法度あれども、表てむきは小謡を一ツうたはねども、屋敷のうちに座敷を立て、日々夜々に乱舞を張行す、

現代語訳

表裏があって、結局は後には四五人の衆を上杉殿の御前から遠ざけ、まして本間・井又をも則政公は病者の偽り言いだと悪く仰せられたので、平井衆はことごとく本間・井又を妬んで悪く取り沙汰するので、両人は男を立てられず、北条家へ内通していた大身衆はこのことを喜び、すがの大膳・上原兵庫の両人へ使者を詰めさせておき、両出頭衆の門外には駒を立てる所もない。それから平井の旗本侍衆は大小ともに行儀が悪くなり、武具の支度も次第にやめ、乱舞は法度であっても、表向きは小謡一つ歌わないが、屋敷のうちに座敷を建てて、日々夜々に乱舞を催す。

解説

いげん入道らは退けられ、本間と井又は偽り者と言われて皆に妬まれる。北条に内通していた大身衆はこれを喜び、出頭人の門前には使者の馬があふれた。そして旗本は行儀を崩し、武具の備えをやめ、法度をくぐって屋敷の中で乱舞にふける。権力者に人が群がり、規則が表向きだけになるのは、崩れの典型的な兆しである。誰の門前がにぎわっているかは、組織の健康状態を映す鏡である。

この章句が説くこと

出頭人讒言規律内通家中乱れ

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