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甲陽軍鑑 / 品第十二

扨て右申す利根の過ぎたる大將大方義信公にて御座候、子細は地下へも種々貪りたることを仰せられ、古屋惣二郞と申す者を惣算用聞きになされ、さま〳〵の事有りて百姓·町人のよめ子共まで在々所々へ隱し置き、無行義千萬の儀共有りて、古屋惣二郞を始め義信公の衆廿八人首をきらる、其外は皆他國へはらはるゝ、是れも永祿八年飯富兵部少輔切腹の時如此信玄公御道理千萬にて候、

新字:扨て右申す利根の過ぎたる大将大方義信公にて御座候、子細は地下へも種々貪りたることを仰せられ、古屋惣二郎と申す者を惣算用聞きになされ、さま〳〵の事有りて百姓·町人のよめ子共まで在々所々へ隠し置き、無行義千万の儀共有りて、古屋惣二郎を始め義信公の衆廿八人首をきらる、其外は皆他国へはらはるゝ、是れも永禄八年飯富兵部少輔切腹の時如此信玄公御道理千万にて候、

書き下し

扨て右申す利根の過ぎたる大将大方義信公にて御座候、子細は地下へも種々貪りたることを仰せられ、古屋惣二郎と申す者を惣算用聞きになされ、さま〳〵の事有りて百姓·町人のよめ子共まで在々所々へ隠し置き、無行義千万の儀共有りて、古屋惣二郎を始め義信公の衆廿八人首をきらる、其外は皆他国へはらはるゝ、是れも永禄八年飯富兵部少輔切腹の時如此信玄公御道理千万にて候、

現代語訳

さて右に申す利根の過ぎた大将は、おおかた義信公のことでございます。子細は、地下へもさまざまに貪ったことを仰せつけられ、古屋惣二郎という者を総算用聞きになされ、さまざまのことがあって、百姓・町人の嫁や子どもまで在所所々へ隠し置き、無行儀千万のことどもがあって、古屋惣二郎をはじめ義信公の衆二十八人が首を斬られた。その他は皆他国へ払われた。これも永禄八年、飯富兵部少輔が切腹した時のことで、このように信玄公に十分な道理がございます。

解説

高坂はここで、この品で描いてきた利根の過ぎた大将とはおおかた義信のことだと明かす。地下への貪り、算用役に据えた古屋惣二郎の専横、百姓や町人の妻子を隠し置くほどの無行儀が重なり、古屋ら二十八人が斬られた。前半の町人が奉行に取り入る話や色好みの話が、抽象論ではなく実際の家中で起きていたことだと分かる。上に立つ者の欲は、取り巻きの不正を呼び込み、最後はまとめて罰を受けることになる。

この章句が説くこと

義信利根欲側近行儀処罰

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