甲陽軍鑑 / 品第十二
必ず能き大將の下には侍衆先第一は大小共に慇懃を面にする、縱へそゝげたる樣にても眞なり、藝なき樣にても身の能あり、馬を乘り弓を射、兵法をつかひ鐵炮を打、亂舞をも存じ、花を立、仕付方何事もそれ〳〵に恥をかゝず、殊に弓矢の義は心懸け强ければ、祖父·親·兄弟·親類·近付の覺有人に立入り、雜談をこまかに聞き、能く心に治むるに付十五六歲にて一度も陣をいたさずとも、惡き家にて覺の衆よりは心至つて物のすべを能しり、一言申ことも手首尾逢て殘べし、
新字:必ず能き大将の下には侍衆先第一は大小共に慇懃を面にする、縦へそゝげたる様にても真なり、芸なき様にても身の能あり、馬を乗り弓を射、兵法をつかひ鉄炮を打、乱舞をも存じ、花を立、仕付方何事もそれ〳〵に恥をかゝず、殊に弓矢の義は心懸け強ければ、祖父·親·兄弟·親類·近付の覚有人に立入り、雑談をこまかに聞き、能く心に治むるに付十五六歳にて一度も陣をいたさずとも、悪き家にて覚の衆よりは心至つて物のすべを能しり、一言申ことも手首尾逢て残べし、
書き下し
必ず能き大将の下には侍衆先第一は大小共に慇懃を面にする、縦へそゝげたる様にても真なり、芸なき様にても身の能あり、馬を乗り弓を射、兵法をつかひ鉄炮を打、乱舞をも存じ、花を立、仕付方何事もそれ〳〵に恥をかゝず、殊に弓矢の義は心懸け强ければ、祖父·親·兄弟·親類·近付の覚有人に立入り、雑談をこまかに聞き、能く心に治むるに付十五六歳にて一度も陣をいたさずとも、悪き家にて覚の衆よりは心至つて物のすべを能しり、一言申ことも手首尾逢て残べし、
現代語訳
必ずよい大将の下では、侍衆はまず第一に、大小ともに慇懃を表にする。たとえ粗雑に見えても真がある。芸がないように見えても身の能がある。馬に乗り、弓を射、兵法を使い、鉄炮を撃ち、乱舞をも心得、花を立て、仕付け方も何事もそれぞれに恥をかかない。とりわけ弓矢のことは心がけが強いので、祖父・親・兄弟・親類・知り合いの覚えのある人のもとへ立ち入り、雑談を細かに聞き、よく心に収めるので、十五、六歳で一度も陣をしたことがなくても、悪い家の覚えの衆よりは心が行き届いて物の筋をよく知り、一言申すことも首尾が合って残るであろう。
解説
この章句が説くこと
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