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甲陽軍鑑 / 品第十二

此もとをたどすに偏に宗雲公に濫觴す、此宗雲のまねは中々思ひもよるまじ、惣別人間は大小によらずふの能き人のまねはせぬ者也、先仕合惡者の仕形を穿鑿ありそのうへ吉事の人のしわざを分別候て、其間よりいかにもあぶなげもなき働を專らにまもるべし、殊更一代にて仕出たる大身の眞似を、二代·三代·五代·十代の大將衆十が九ツまねべからず、子細は我一代に仕出る大名は、天道の惠み深かるべし、其大將にはあやうき働き有物なれども、是は天道よければ、死するきは迄は大畧理運になり、其辨へもなく代々ゆづられきたる大將あぶなき働きし給ひては、必しぞこなふなり、けが有こそ尤なれ、天道も代々惠はなき者にて候、

新字:此もとをたどすに偏に宗雲公に濫觴す、此宗雲のまねは中々思ひもよるまじ、惣別人間は大小によらずふの能き人のまねはせぬ者也、先仕合悪者の仕形を穿鑿ありそのうへ吉事の人のしわざを分別候て、其間よりいかにもあぶなげもなき働を専らにまもるべし、殊更一代にて仕出たる大身の真似を、二代·三代·五代·十代の大将衆十が九ツまねべからず、子細は我一代に仕出る大名は、天道の恵み深かるべし、其大将にはあやうき働き有物なれども、是は天道よければ、死するきは迄は大略理運になり、其弁へもなく代々ゆづられきたる大将あぶなき働きし給ひては、必しぞこなふなり、けが有こそ尤なれ、天道も代々恵はなき者にて候、

書き下し

此もとをたどすに偏に宗雲公に濫觴す、此宗雲のまねは中々思ひもよるまじ、惣別人間は大小によらずふの能き人のまねはせぬ者也、先仕合悪者の仕形を穿鑿ありそのうへ吉事の人のしわざを分別候て、其間よりいかにもあぶなげもなき働を専らにまもるべし、殊更一代にて仕出たる大身の真似を、二代·三代·五代·十代の大将衆十が九ツまねべからず、子細は我一代に仕出る大名は、天道の恵み深かるべし、其大将にはあやうき働き有物なれども、是は天道よければ、死するきは迄は大略理運になり、其弁へもなく代々ゆづられきたる大将あぶなき働きし給ひては、必しぞこなふなり、けが有こそ尤なれ、天道も代々恵はなき者にて候、

現代語訳

この元をたどれば、ひとえに宗雲公に始まる。この宗雲の真似はとても思い寄るべきではない。総じて人は大小によらず、運のよい人の真似はしないものである。まず仕合わせの悪い者のやり方をよく穿鑿し、その上で吉事を得た人の所業を分別して、その間からいかにも危なげのない働きをもっぱら守るべきである。とりわけ一代で身を起こした大身の真似を、二代・三代・五代・十代の大将衆は十のうち九つまで真似てはならない。子細は、自分一代で身を起こす大名は天道の恵みが深いのであろう。その大将には危うい働きがあるものだが、これは天道がよいので、死ぬ際までおおかた理運になる。その弁えもなく代々譲られてきた大将が危うい働きをなさっては、必ずしくじる。けががあるのももっともである。天道も代々にわたって恵むことはないものである。

解説

北条の繁栄の元を宗雲に求めたうえで、その真似をしてはならないと説く。成功者より失敗者のやり方をまず調べ、その間から危なげのない道を取れという順序が示される。創業者の危うい賭けは天運に支えられているのであって、継いだ者が同じことをすれば必ずしくじる。後継者が創業者の武勇伝を手本にする危険を、四百年前にすでに言い当てている。守るべきは型ではなく、危なげのなさである。

この章句が説くこと

後継者創業天運判断慢心二代目

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