甲陽軍鑑 / 品第十一
いかに山本勘介うしくぼの小身成る家より出ても、軍法を能く鍛鍊仕るにおいては、ぶしのちしきなりとて、武田信玄公勘介を聞き及ひ給ひ、百貫の知行にてめし寄せらると、小者を一人つかわぬ勘介に百貫下さること、譜代の小身衆申すへきとて板垣信形に仰せ付けられ、馬·弓·鍵·小袖·小者を道迄指し越し給ひ、山本勘介甲府へ宜しき体にて參り禮を申上ると、其座にて二百貫の知行を下さるゝ、子細はあれほどの小男にて、名の高き勘介は能々手抦こそ有らめ、約束にても百貫は比興なり、二百貫と有る義にて武田信玄公家の寶にし給ふ、
新字:いかに山本勘介うしくぼの小身成る家より出ても、軍法を能く鍛錬仕るにおいては、ぶしのちしきなりとて、武田信玄公勘介を聞き及ひ給ひ、百貫の知行にてめし寄せらると、小者を一人つかわぬ勘介に百貫下さること、譜代の小身衆申すへきとて板垣信形に仰せ付けられ、馬·弓·鍵·小袖·小者を道迄指し越し給ひ、山本勘介甲府へ宜しき体にて参り礼を申上ると、其座にて二百貫の知行を下さるゝ、子細はあれほどの小男にて、名の高き勘介は能々手抦こそ有らめ、約束にても百貫は比興なり、二百貫と有る義にて武田信玄公家の宝にし給ふ、
書き下し
いかに山本勘介うしくぼの小身成る家より出ても、軍法を能く鍛錬仕るにおいては、ぶしのちしきなりとて、武田信玄公勘介を聞き及ひ給ひ、百貫の知行にてめし寄せらると、小者を一人つかわぬ勘介に百貫下さること、譜代の小身衆申すへきとて板垣信形に仰せ付けられ、馬·弓·鍵·小袖·小者を道迄指し越し給ひ、山本勘介甲府へ宜しき体にて参り礼を申上ると、其座にて二百貫の知行を下さるゝ、子細はあれほどの小男にて、名の高き勘介は能々手抦こそ有らめ、約束にても百貫は比興なり、二百貫と有る義にて武田信玄公家の宝にし給ふ、
現代語訳
たとえ山本勘介が牛久保の小身の家から出た者でも、軍法をよく鍛錬しているからには、武士の知識であるとして、武田信玄公は勘介を聞き及びなさって、百貫の知行で召し寄せられた。小者を一人も使っていない勘介に百貫下さることを、譜代の小身衆が何か申すであろうと、板垣信形に仰せ付けられ、馬・弓・鑓・小袖・小者を道まで差し遣わしなさり、山本勘介は甲府へ立派な体で参って礼を申し上げると、その座で二百貫の知行を下された。子細は、あれほどの小男で名の高い勘介は、よくよく手柄があるのであろう、約束であっても百貫は比興(不相応)である、ということで二百貫とされ、武田信玄公は勘介を家の宝になさった。
解説
この章句が説くこと
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