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甲陽軍鑑 / 品第十一

左樣に親類の出頭に自慢して能人を議り、己れが身にかけてはあしくしなす人をば、馬糞つかみと云ふ鳥にたとへたり、此馬糞つかみは鷹の自然によりきるを笑ひ、又鷹の鳥取るをみても笑ひ、よりをきるは勿体なし、あの樣に取るはあしき取り樣と批判仕り、己れがいでとらんといふてはるかの野へまいおり、鳥の立ちたる跡にばふんのあれば、それをやう〳〵つかむと申し傳へたれば、手抦の侍を誹る人の二十四十に成る迄も、何の手抦もなき人を、ばふんつかみ侍とは申し習はすなり、其根元は是れ只偏へにばかなる大將のさせ給ふ義なり、

新字:左様に親類の出頭に自慢して能人を議り、己れが身にかけてはあしくしなす人をば、馬糞つかみと云ふ鳥にたとへたり、此馬糞つかみは鷹の自然によりきるを笑ひ、又鷹の鳥取るをみても笑ひ、よりをきるは勿体なし、あの様に取るはあしき取り様と批判仕り、己れがいでとらんといふてはるかの野へまいおり、鳥の立ちたる跡にばふんのあれば、それをやう〳〵つかむと申し伝へたれば、手抦の侍を誹る人の二十四十に成る迄も、何の手抦もなき人を、ばふんつかみ侍とは申し習はすなり、其根元は是れ只偏へにばかなる大将のさせ給ふ義なり、

書き下し

左様に親類の出頭に自慢して能人を議り、己れが身にかけてはあしくしなす人をば、馬糞つかみと云ふ鳥にたとへたり、此馬糞つかみは鷹の自然によりきるを笑ひ、又鷹の鳥取るをみても笑ひ、よりをきるは勿体なし、あの様に取るはあしき取り様と批判仕り、己れがいでとらんといふてはるかの野へまいおり、鳥の立ちたる跡にばふんのあれば、それをやう〳〵つかむと申し伝へたれば、手抦の侍を誹る人の二十四十に成る迄も、何の手抦もなき人を、ばふんつかみ侍とは申し習はすなり、其根元は是れ只偏へにばかなる大将のさせ給ふ義なり、

現代語訳

そのように親類の出頭を自慢して良い人を謗り、己の身にかけては悪しくしなす人を、馬糞つかみという鳥にたとえた。この馬糞つかみは、鷹が自然に獲物に寄り損じるのを笑い、また鷹が鳥を取るのを見ても笑い、「寄り損じるのはもったいない、あの取り方は悪い取り様だ」と批判して、「己が出て取ろう」と言っては遥かの野へ舞い降り、鳥の立った跡に馬糞があれば、それをようようつかむと申し伝えている。だから手柄の侍を謗る人で、二十、四十になるまで何の手柄もない人を、馬糞つかみ侍と申し習わすのである。その根元は、ただひとえに馬鹿な大将のさせることである。

解説

人の働きを批判ばかりして、自分がやれば馬糞しかつかめない者を「馬糞つかみ」と呼んだ、たとえ話である。鷹の失敗を笑い、成功しても取り方が悪いと言う。こういう評論家は、どの組織にもいる。高坂はその根元を大将に求めている。批判だけで実績のない者が幅を利かせるのは、上に立つ者が口と働きを見分けないからである。評する人には、まず自分の成果を問うことが要る。

この章句が説くこと

批判手柄大将評論馬糞つかみ見極め

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