講孟余話 / 盡心上 第四十二章
然トモ細ニ論スレハ、徒ニ是ノミニ非ス、一身若シ道ヲ離レハ、耳目手足少シモ用ニ立タス、其爲ス所繆戾ニシテ、君子ヨリ視ル時ハ、狂人ト少シモ異ナルコトナシ、若シ擧テ是ヲ一国ニ置キ天下ニ置ク時ハ、一国天下皆狂国狂天下トナル、狂國狂天下ヲ以テ外夷ノ外道邪魔ヲ防セントセハ、誠ニ危キコトナリ、故ニ人々道ノ身ヲ離レヌ樣ニ、狂人トナラヌ樣ニ心掛クヘシ、且守城ノ一事ヲ以テ云フニ、主將タル者道已ニ身ヲ離ルヽ時ハ、將吏モ士卒モ、金城湯池モ、器械糧餉モ、一ツトシテ用ニ立サルナリ、公孫丑下篇首章ニ、天時不如地利、地利不如人和ト云ヘリ、而シテ人和ノ本ハ、又主將タル者道身一体ナル所ニアル也
新字:然トモ細ニ論スレハ、徒ニ是ノミニ非ス、一身若シ道ヲ離レハ、耳目手足少シモ用ニ立タス、其為ス所繆戻ニシテ、君子ヨリ視ル時ハ、狂人ト少シモ異ナルコトナシ、若シ挙テ是ヲ一国ニ置キ天下ニ置ク時ハ、一国天下皆狂国狂天下トナル、狂国狂天下ヲ以テ外夷ノ外道邪魔ヲ防セントセハ、誠ニ危キコトナリ、故ニ人々道ノ身ヲ離レヌ様ニ、狂人トナラヌ様ニ心掛クヘシ、且守城ノ一事ヲ以テ云フニ、主将タル者道已ニ身ヲ離ルヽ時ハ、将吏モ士卒モ、金城湯池モ、器械糧餉モ、一ツトシテ用ニ立サルナリ、公孫丑下篇首章ニ、天時不如地利、地利不如人和ト云ヘリ、而シテ人和ノ本ハ、又主将タル者道身一体ナル所ニアル也
書き下し
然れども細かに論ずれば、徒らに是れのみに非ず。一身若し道を離れば、耳目手足少しも用に立たず、其の為す所繆戻にして、君子より視る時は、狂人と少しも異なることなし。若し挙げて是れを一国に置き天下に置く時は、一国天下皆狂国狂天下となる。狂国狂天下を以て外夷の外道邪魔を防がんとせば、誠に危きことなり。故に人々道の身を離れぬ様に、狂人とならぬ様に心掛くべし。且つ守城の一事を以て云ふに、主将たる者道已に身を離るる時は、将吏も士卒も、金城湯池も、器械糧餉も、一つとして用に立たざるなり。公孫丑下篇首章に、「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」と云へり。而して人和の本は、又主将たる者道身一体なる所にあるなり。
現代語訳
しかし細かく論じれば、それだけではない。一人の身がもし道を離れれば、耳も目も手足も少しも役に立たず、その行うことはねじ曲がって、君子から見れば狂人と少しも変わらない。もしそういう者をみな一国に置き、天下に置くならば、一国も天下もみな狂った国、狂った天下となる。狂った国や天下で、外国という邪な道や悪魔を防ごうとすれば、まことに危ういことだ。だから人はそれぞれ、道が身から離れないように、狂人とならないように心がけるべきである。さらに城を守る一事で言えば、総大将たる者から道がすでに身を離れているときは、将校も兵卒も、堅固な城と堀も、武器も兵糧も、一つとして役に立たない。公孫丑下篇の首章に「天の時は地の利に及ばず、地の利は人の和に及ばない」とある。そして人の和の根本は、また総大将たる者の道と身が一体であるところにあるのである。
解説
この章句が説くこと
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