講孟余話 / 告子下 第七章
故曰、今之大夫、今之諸侯之罪人也、此一節、是レ全章帰宿ノ處ニシテ、遽カニ是ヲ讀メハ、甚索然タルカ如シ、細ニ是ヲ味フニ、今ノ大夫其君ニ告ルニ三王ノ道ヲ以テスルコト能ハサルノミナラス、五覇ノ道スラ時ニ行ハシムルコト能ハズ、小ニシテハ君ノ悪ヲ長シ、大ニシテハ君ノ悪ヲ逢フル、最モ悪ムヘキコト也、大夫ノ罪彼カ如クニシテ、諸侯敢テ是ヲ罪セサルノミナラズ、方ニ且是ヲ崇ヒ是ヲ愛ス、是又諸侯ノ罪ナリ、大夫トシテ眞切ニ是ヲ今日ニ求ムル時ハ、三王ノ道ノ内、土地辟、田野治、養老尊賢、俊傑在位ノ数句、五覇ノ道ノ內、誅不孝、無易樹子、無以妾爲妻、尊賢育才、以彰有德、敬老慈幼、無忘賓旅、士無世官、此一句尤モ熟思スベシ官事無攝、此一句專權ヲ慮ルナリ取士必得、無專殺大夫、無曲防、此一句防ノミニ非ズ、惣テ己ヲ利シ人ヲ害スルコトヲ爲ス勿レ無遏糴、此二句隣ニ交ルノ禮シカリ無有封而不告、言帰于好、ノ五命十四五事、勉テ是ヲ其國ニ行ハヽ、諸侯ノ罪人タルヲ免ルヘシ、凢ソ王政ノ事ハ、所謂時勢ヲ待ツニ如カズ
新字:故曰、今之大夫、今之諸侯之罪人也、此一節、是レ全章帰宿ノ処ニシテ、遽カニ是ヲ読メハ、甚索然タルカ如シ、細ニ是ヲ味フニ、今ノ大夫其君ニ告ルニ三王ノ道ヲ以テスルコト能ハサルノミナラス、五覇ノ道スラ時ニ行ハシムルコト能ハズ、小ニシテハ君ノ悪ヲ長シ、大ニシテハ君ノ悪ヲ逢フル、最モ悪ムヘキコト也、大夫ノ罪彼カ如クニシテ、諸侯敢テ是ヲ罪セサルノミナラズ、方ニ且是ヲ崇ヒ是ヲ愛ス、是又諸侯ノ罪ナリ、大夫トシテ真切ニ是ヲ今日ニ求ムル時ハ、三王ノ道ノ内、土地辟、田野治、養老尊賢、俊傑在位ノ数句、五覇ノ道ノ内、誅不孝、無易樹子、無以妾為妻、尊賢育才、以彰有徳、敬老慈幼、無忘賓旅、士無世官、此一句尤モ熟思スベシ官事無摂、此一句専権ヲ慮ルナリ取士必得、無専殺大夫、無曲防、此一句防ノミニ非ズ、惣テ己ヲ利シ人ヲ害スルコトヲ為ス勿レ無遏糴、此二句隣ニ交ルノ礼シカリ無有封而不告、言帰于好、ノ五命十四五事、勉テ是ヲ其国ニ行ハヽ、諸侯ノ罪人タルヲ免ルヘシ、凢ソ王政ノ事ハ、所謂時勢ヲ待ツニ如カズ
書き下し
「故に曰く、今の大夫は今の諸侯の罪人なり」。此の一節、是れ全章帰宿の処にして、遽かに是を読めば、甚だ索然たるが如し。細かに是を味ふに、今の大夫其の君に告ぐるに三王の道を以てすること能はざるのみならず、五覇の道すら時に行はしむること能はず。小にしては君の悪を長じ、大にしては君の悪を逢ふる、最も悪むべきことなり。大夫の罪彼が如くにして、諸侯敢へて是を罪せざるのみならず、方に且つ是を崇び是を愛す。是れ又諸侯の罪なり。大夫として真切に是を今日に求むる時は、三王の道の内、「土地辟け、田野治まり、老を養ひ賢を尊び、俊傑位に在り」の数句、五覇の道の内、「不孝を誅し、樹子を易ふること無く、妾を以て妻と為すこと無く、賢を尊び才を育て、以て有徳を彰し、老を敬ひ幼を慈しみ、賓旅を忘るること無く、士は官を世々にすること無く(此の一句尤も熟思すべし)、官事は摂ぬること無く(此の一句は専権を慮るなり)、士を取るには必ず得、専ら大夫を殺すこと無く、防を曲ぐること無く(此の一句は防のみに非ず、総て己を利し人を害することを為す勿れ)、糴を遏むること無く(此の二句は隣に交るの礼しかり)、封ずること有りて告げざること無く、言に好に帰す」の五命十四五事、勉めて是を其の国に行はば、諸侯の罪人たるを免るべし。凡そ王政の事は、所謂時勢を待つに如かず。
現代語訳
「だから言う、今の大夫は今の諸侯の罪人である」。この一節はこの章全体の帰着点で、ざっと読むとひどく味気ないように思える。細かく味わうと、今の大夫は主君に三王の道を説くことができないばかりか、五覇の道さえ時に行わせることができない。小さくは主君の悪を増長させ、大きくは主君の悪に迎合してそれを助ける。最も憎むべきことである。大夫の罪がこのようであるのに、諸侯はこれを罰しないばかりか、かえって崇め愛している。これはまた諸侯の罪である。大夫として、今日これを真剣に求めるなら、三王の道のうち「土地が開かれ、田野が治まり、老人を養い賢者を尊び、優れた人物が位にある」の数句、五覇の道のうち「不孝者を罰し、跡継ぎを替えず、妾を妻としない。賢者を尊び才能を育てて、徳ある者を顕彰する。老人を敬い幼い者を慈しみ、旅人や客を忘れない。士は官職を世襲しない(この一句は最もよく考えるべきである)。官の仕事は兼任させない(この一句は権力の独占を心配するのである)。士を取るには必ず適任を得る。勝手に大夫を殺さない。堤防を曲げて造らない(この一句は堤防のことだけではない。すべて自分を利して人を害することをするなという意味である)。他国への穀物の流通を止めない(この二句は隣国と交わる礼である)。領地を与えて報告しないことはない。盟約の後は友好に帰る」の五命十四、五か条を、努めて自分の国で行えば、諸侯の罪人であることは免れるだろう。およそ王道の政治のことは、いわゆる時勢を待つのが一番である。
解説
この章句が説くこと
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『十善法語』巻第二・不偸盜戒近世ノ道俗ヲ誘ヒ導ク者ハ。易キヨリ易キニ就テ。我宗門ノ中ニハ。過ヲ改メ悪ヲ止ルニハ及ヌト云。持戒禅定モ廃スヘシト云。識別有ン者ハ推察シ看ヨ。仏世賢聖在世ハ。諸天八部人非人道俗男女ミナ善ヨリ善ニ遷タコトシヤ。倶ニ分ニ随テ持戒修禅モ有タシヤ。人ニ良心アレハ善根ノ勤ラレヌト云コトハ有マシキソ。中古已来伶利ノ士カ世ニ随ヒ俗ニ応シテ人ヲ教化ス。其次ニ出ル者ハ。又世俗ニ順シ人情ニ就。ソノ次ニ出ル者更ニ世俗ニ順シ人情ニ就テ。遂ニ賢聖ノ正規則ヲ取失フ様ニナリ下リ。悪ヲ作シテ差ヌ様ニナリ下タコトシヤ。近古明恵上人ノ言ニ。今ノ諸宗ノ者ノ云通リカ仏法ナラハ。諸道ノ中ニ仏法ヨリワロキコトハナキト。此等ハ見タ処アル趣シヤ。
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説苑・雜言子石、呉山に登りて四望し、喟然として歎息して曰く、「嗚呼悲しいかな。世に事情に明らかにして人心に合わざる者有り、人心に合いて事情に明らかならざる者有り」と。弟子問いて曰く、「何の謂いぞや」と。子石曰く、「昔者、呉王夫差、伍子胥の言を聴かず、忠を尽くし極めて諫めしも、目を抉られて辜せらる。太宰嚭・公孫雒は、偷かに合し苟くも容れられ、以て夫差の志に順いて呉を伐たしむ。二子は身を江湖に沈められ、頭は越の旗に懸けらる。昔者、費仲・惡來革・長鼻決耳、崇侯虎は紂の心に順い、意に合わんと欲せしも、武王紂を伐ちて、四子は身を牧野に死し、頭足所を異にす。比干は忠を尽くして心を剖かれて死す。今、事情を明らかにせんと欲すれば、目を抉られ心を剖かるるの禍い有らんことを恐れ、人心に合わんと欲すれば、頭足所を異にするの患い有らんことを恐る。是に由りて之を観れば、君子の道狭きのみ。誠に其の明主に逢わずんば、狭道の中、又将に危険閉塞して、従いて出づ可き無からんとす」と。
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