講孟余話 / 萬章上 第四章
說詩者、不以文害辭、不以辭害志、以意逆志、是爲得之、三句讀書ノ要訣徒タ詩ヲ說クノミナラス、凡ソ讀書ノ法ハ吾心ヲ虛クシ、胸中ニ一種ノ意見ヲ構ヘス、吾心ヲ書ノ中ヘ推入テ、書ノ道理如何ト見、其意ヲ迎ヘ來ルヘシ、今人書ヲ讀ム、都テコレ書ヲ把テ我心ヘ引ツクルナリ、志ヲ逆ルニ非ス、是亦語類ニ原ツク余謂フニ有力ノ人書ヲ觧シ、附會牽強ニ涉ル者多シ、皆志ヲ逆サルノ過ナリ、然トモ無識ノ人書ヲ信スルニ過キ、或ハ辞ニ泥着シ、活眼ヲ開キ活讀スルコト能ハス、更ニ一癖ヲ生スル者アリ、此處ノ味自得ニアリ、言傳シ難シ、大氏勿忘勿助長ノ工夫ヲ以テ悟ルヘシ、
新字:説詩者、不以文害辞、不以辞害志、以意逆志、是為得之、三句読書ノ要訣徒タ詩ヲ説クノミナラス、凡ソ読書ノ法ハ吾心ヲ虚クシ、胸中ニ一種ノ意見ヲ構ヘス、吾心ヲ書ノ中ヘ推入テ、書ノ道理如何ト見、其意ヲ迎ヘ来ルヘシ、今人書ヲ読ム、都テコレ書ヲ把テ我心ヘ引ツクルナリ、志ヲ逆ルニ非ス、是亦語類ニ原ツク余謂フニ有力ノ人書ヲ觧シ、附会牽強ニ渉ル者多シ、皆志ヲ逆サルノ過ナリ、然トモ無識ノ人書ヲ信スルニ過キ、或ハ辞ニ泥着シ、活眼ヲ開キ活読スルコト能ハス、更ニ一癖ヲ生スル者アリ、此処ノ味自得ニアリ、言伝シ難シ、大氏勿忘勿助長ノ工夫ヲ以テ悟ルヘシ、
書き下し
「詩を説く者は、文を以て辞を害せず、辞を以て志を害せず、意を以て志を逆ふ、是れ之れを得たりと為す」。三句読書の要訣、徒だ詩を説くのみならず。凡そ読書の法は吾が心を虚しくし、胸中に一種の意見を構へず、吾が心を書の中へ推し入れて、書の道理如何と見、其の意を迎へ来るべし。今人書を読む、都てこれ書を把りて我が心へ引きつくるなり、志を逆ふるに非ず。是れ亦語類に原づく。余謂ふに、有力の人書を解し、附会牽強に渉る者多し、皆志を逆へざるの過ちなり。然れども無識の人、書を信ずるに過ぎ、或は辞に泥着し、活眼を開き活読すること能はず、更に一癖を生ずる者あり。此の処の味、自得にあり、言伝へし難し。大氏「忘るる勿れ、助長する勿れ」の工夫を以て悟るべし。
現代語訳
「詩を説く者は、文字にとらわれて言葉の意味を損なわず、言葉にとらわれて作者の志を損なわず、自分の心で作者の志を迎え取る。それでこそ詩を理解したといえる」。この三句は読書の秘訣であって、詩を説く場合だけのことではない。およそ読書の方法は、自分の心を空しくして、胸の中に一つの意見を構えず、自分の心を書物の中へ押し入れて、書物の道理はどうであるかを見て、その意味を迎え取ってくるべきである。今の人の読書は、すべて書物をつかんで自分の心へ引き寄せている。これは志を迎え取るのではない。これもまた『朱子語類』にもとづく。私が思うに、力ある人が書物を解釈すると、こじつけや無理な解釈に陥る者が多い。みな志を迎え取らない過ちである。けれども見識のない人は、書物を信じすぎて、ときに言葉に固執し、生きた目を開いて生きた読み方ができず、さらに別の癖を生む者がいる。このあたりの味わいは自分で会得するしかなく、言葉では伝えにくい。おおよそ「忘れるな、助長するな」の工夫によって悟るべきである。
解説
この章句が説くこと
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