講孟余話 / 離婁下 第十一章
人ニ三等アリ、下等ノ人ハ義ニ合ハズ信ナラズ果ナラサルノ徒ニテ、是レ妄人ナリ、中等ノ人ハ信ヲ必トシ果ヲ必トシ、未タ必モ義ニ合ハサルノ徒ニテ、是レ游俠ノ類ナリ、上等ノ人ハ即チ本文ノ所謂大人ニテ、信ヲ必トセス果ヲ必トセス、惟義ノ在ル所ニ從テ行フノ人ナリ、若シ汎ク人品ヲ論セハ、中等ノ人モ亦得易キニ非ス、輕ンスルコトナカレ、然トモ學ヲナスニ至テハ、上等ヲ捨テ何ヲカ学ハン
新字:人ニ三等アリ、下等ノ人ハ義ニ合ハズ信ナラズ果ナラサルノ徒ニテ、是レ妄人ナリ、中等ノ人ハ信ヲ必トシ果ヲ必トシ、未タ必モ義ニ合ハサルノ徒ニテ、是レ游侠ノ類ナリ、上等ノ人ハ即チ本文ノ所謂大人ニテ、信ヲ必トセス果ヲ必トセス、惟義ノ在ル所ニ従テ行フノ人ナリ、若シ汎ク人品ヲ論セハ、中等ノ人モ亦得易キニ非ス、軽ンスルコトナカレ、然トモ学ヲナスニ至テハ、上等ヲ捨テ何ヲカ学ハン
書き下し
人に三等あり。下等の人は義に合はず信ならず果ならざるの徒にて、是れ妄人なり。中等の人は信を必とし果を必とし、未だ必ずしも義に合はざるの徒にて、是れ游侠の類なり。上等の人は即ち本文の所謂大人にて、信を必とせず果を必とせず、惟だ義の在る所に従ひて行ふの人なり。若し汎く人品を論ぜば、中等の人も亦得易きに非ず、軽んずることなかれ。然れども学をなすに至りては、上等を捨てて何をか学ばん。
現代語訳
人には三つの等級がある。下等の人は義にかなわず、約束を守らず、やり遂げもしない者で、これはでたらめな人である。中等の人は約束を必ず守り、必ずやり遂げるが、必ずしも義にかなっているとは限らない者で、これは侠客の類である。上等の人は本文のいう「大人」で、約束を必ず守るとも、必ずやり遂げるとも決めてかからず、ただ義のあるところに従って行う人である。広く人柄を論じるなら、中等の人も得がたく、軽んじてはならない。けれども学問をするなら、上等を捨てて何を学ぼうか。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『五常訓』巻之五・信若かろがろしくうけ合ひて、後日に其義にあたらざれば、約を守りがたくして、前言いつはりとなり、信をうしなふ。一たび言ひかはし約束したる事をちがへて、其首尾あはず、いつはりとなるは、是恥づべき事甚し。人にあらずと思ふべし。若あやまりて、義にあはざる事をうけあはば、其不義と不信との軽重を考へて、宜にしたがふべし。いにしへ、尾生と云ふ者、人と約して、其所にまつに、大水出来れども、約したる所を去らで、つひにおぼれ死す。是小信にかかはりて、身を失ふ。愚と云ふべし。又身をすてても、信を守るべき事あり。時宜によるべし。孟子曰く、大人は、言必ずしも信ならず、惟義の在る所のみ。大人は大徳ある人なり。言に信を期せず、唯義をかんがへ行ひて、自ら信を失はずとなり。
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論語・学而篇有子曰く、「信義に近ければ、言復む可きなり。恭礼に近ければ、恥辱に遠ざかるなり。因りて其の親を失わざれば、亦宗とす可きなり。」
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『五常訓』巻之四・義一子曰く、君子は義以て質と為し、礼以て之を行ひ、孫以て之を出し、信以て之を成す、君子なるかな。云ふ意は君子の事を行ふは、義を以てした地とすべし。義は事を制する本なれば也。万の事を行ふに、まづ義か不義かをかへり見るべし。義にあらずんば、行ふべからず。義に合はば行ふべし。是義を以てしたぢとする也。其上は、礼を以てすべ、よく行ひ、孫を以てへりくだりて、人にたかぶらず、信を以て、始終真実に行ふべし。是君子の行なり。然れども義なければ、其事の主なし。故に礼孫信の三そなはりても、非義なれば見るに足らず。尚書に、以義制事といへるも、此意なり。
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『大和俗訓』巻之五・言語一人と約をなさば、必其信をかたく守るべし。一度約したる事をたがへば、人にあらずと思ふべし。若其契約義にかなはざる事か、又力の及びがたき事にて、後に約を守りがたからんと思はば、かねて約をなすべからず。かるがるしくうけあへば、其約たがふ。つつしむべし。論語に、信、義に近ければ、言復むべきなりといへり。人と約束したる事、首尾ちがはざるやうにせんと思はば、約する事義理にかなへば、うけ合ひたる言のごとく行ひとげられて、いつはりなくして首尾相違せずとなり。
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『五常訓』巻之五・信一有子曰く、信義に近ければ、言復むべし。いふ意は、人に約して、其言をたがへじと思はば、初約せんとする時、其人のいへること、義か不義かをかへりみるべし。義にかなはば、約すべし。義にそむかば、約すべからず。かくの如くすれば、其約違はずして、言ふむべし。言をふむとは、約したる言をふまへて、首尾ちがはざるなり。是信を失はざる道なり。老子曰く、軽く諾する者は、必ず信寡し。いふ意は、かろがろしく請ごへば、後に其事なしがたくて、約にたがふ事あり。故に信すくなしと也。はじめ約せんとする時、つつしみ思案して、後をはかるべし。故に古人は然諾を慎むとて、人の云ひかけたる事を、かろがろしくうけあはずして、約をおもくす。其事義にあたりて行ふべく、又後日に其約ちがふまじき事ならば、うけごひて約し、必約を変ずべからず。
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司馬法・仁本天下既に平らぎ、天子大いに愷(がい)し、春は蒐(しゅう)し秋は獮(せん)す。諸侯は春に旅を振い、秋に兵を治む。戦を忘れざる所以なり。古は、奔るを逐うこと百歩を過ぎず、綏(すい)を縦(お)うこと三舎を過ぎず、是を以て其の礼を明らかにす。不能を窮めずして傷病を哀憐す、是を以て其の義を明らかにす。列を成して皷(こ)す、是を以て其の信を明らかにす。
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