講孟余話 / 離婁上 第八章
自取之也、此章主意此一句ニアリ、自侮、自毀、自伐、自作孽、皆是自取ノ謂ナリ、下第十章自暴自棄モ亦此謂ナリ、自侮トハ自身ニ吾身ヲ輕侮スルナリ、凡ソ人ノ一身、性ヲ天ニ受ケ德ヲ心ニ具ス、天地ノ待ツ所、鬼神ノ依ル所、ソレ亦尊重ト云ヘシ、而シテ自ラ其尊重タルヲ知ラス、放僻邪侈至ラサルコトナキ者ハ、豈自ラ輕侮スルニ非スヤ、自毀トハ自身ニ吾家ヲ破毀スルナリ、凡ソ人ノ家、父子アリ兄弟アリ夫婦アリ、然ル後其家完全ナリ、父ノ子ヲ慈セサル、子ノ父ニ孝セサル、兄ノ弟ニ友ナラサル、弟ノ兄ニ悌ナラサル、夫ノ婦ニ教ヘサル、婦ノ夫ニ順ハサルヨリ、父子相夷リ兄弟墻ニ閱キ、夫妻目ヲ側メ終ニ骨肉相食ミ家從テ破毀スルニ至ル、是自ラ破毀スルニ非スヤ、
新字:自取之也、此章主意此一句ニアリ、自侮、自毀、自伐、自作孽、皆是自取ノ謂ナリ、下第十章自暴自棄モ亦此謂ナリ、自侮トハ自身ニ吾身ヲ軽侮スルナリ、凡ソ人ノ一身、性ヲ天ニ受ケ徳ヲ心ニ具ス、天地ノ待ツ所、鬼神ノ依ル所、ソレ亦尊重ト云ヘシ、而シテ自ラ其尊重タルヲ知ラス、放僻邪侈至ラサルコトナキ者ハ、豈自ラ軽侮スルニ非スヤ、自毀トハ自身ニ吾家ヲ破毀スルナリ、凡ソ人ノ家、父子アリ兄弟アリ夫婦アリ、然ル後其家完全ナリ、父ノ子ヲ慈セサル、子ノ父ニ孝セサル、兄ノ弟ニ友ナラサル、弟ノ兄ニ悌ナラサル、夫ノ婦ニ教ヘサル、婦ノ夫ニ順ハサルヨリ、父子相夷リ兄弟墻ニ閲キ、夫妻目ヲ側メ終ニ骨肉相食ミ家従テ破毀スルニ至ル、是自ラ破毀スルニ非スヤ、
書き下し
「自ら之れを取るなり」。此の章の主意此の一句にあり。自ら侮り、自ら毀り、自ら伐ち、自ら孽を作る、皆是れ自取の謂ひなり。下第十章の自暴自棄も亦此の謂ひなり。「自侮」とは自身に吾が身を軽侮するなり。凡そ人の一身、性を天に受け徳を心に具ふ。天地の待つ所、鬼神の依る所、夫れ亦尊重と云ふべし。而して自ら其の尊重たるを知らず、放辟邪侈至らざることなき者は、豈に自ら軽侮するに非ずや。「自毀」とは自身に吾が家を破毀するなり。凡そ人の家、父子あり兄弟あり夫婦あり、然る後其の家完全なり。父の子を慈しまざる、子の父に孝ならざる、兄の弟に友ならざる、弟の兄に悌ならざる、夫の婦に教へざる、婦の夫に順はざるより、父子相夷り、兄弟墻に鬩ぎ、夫妻目を側め、終に骨肉相食み、家従ひて破毀するに至る。是れ自ら破毀するに非ずや。
現代語訳
「災いは自分から招くのだ」。この章の主旨はこの一句にある。自分から侮り、自分から壊し、自分から攻め、自分から災いを作る、どれも「自分から招く」という意味である。後の第十章の「自暴自棄」も同じ意味である。「自侮」とは、自分で自分の身を軽んじ侮ることである。およそ人の身は、本性を天から受け、徳を心に備えている。天地が期待し、神々が宿るものであって、まことに尊いと言うべきである。それなのに自らその尊さを知らず、勝手気ままで悪いことの限りを尽くす者は、自ら自分を軽んじ侮っているのではないか。「自毀」とは、自分で自分の家を壊すことである。およそ人の家には父子があり兄弟があり夫婦があって、そのうえで家は完全になる。父が子を慈しまず、子が父に孝行せず、兄が弟に友愛を示さず、弟が兄を敬わず、夫が妻を導かず、妻が夫に従わないことから、父子が傷つけ合い、兄弟が内輪もめし、夫婦がにらみ合い、ついには骨肉が食い合って、家はそのために壊れるに至る。これは自分で壊しているのではないか。
解説
この章句が説くこと
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