言志四録 / 言志晩録 第二百三十一条 李英公、姉の為に粥を煮る
兄弟友愛者有之。於姊妹則或否。勿傲侮以不順。李英公爲姉煮粥。可學。
新字:兄弟友愛者有之。於姊妹則或否。勿傲侮以不順。李英公為姉煮粥。可学。
書き下し
兄弟友愛する者は之れ有り。姉妹に於ては則ち或いは否ず。傲侮して以て順ならざること勿れ。李英公の姉の為に粥を煮る、学ぶべし。
現代語訳
兄弟どうし仲むつまじい者はいる。しかし姉妹に対してはそうでないこともある。おごって侮り、従順を欠いてはならない。李英公(唐の名将、李勣)が姉のために自ら粥を煮たことは、学ぶべきである。
解説
兄弟の間の友愛は説かれることが多い一方、姉妹、とりわけ姉への敬愛はおろそかにされがちだと一斎は指摘します。例に挙げる李英公は唐の太宗に仕えた名将李勣で、宰相の地位にありながら、病気の姉のために自ら粥を煮て髭を焦がしました。人が止めると、姉も自分も年老いた、これからあと何度粥を煮てあげられるだろうかと答えたと伝えられます。高い地位にあっても身内への情と礼を失わなかった姿を、一斎は手本として示しています。男性中心の家族観の強い時代に、姉妹への敬意を明記したところに一斎の目配りがうかがえます。地位が上がるほど、身近な人への気遣いが後回しになりがちです。忙しさを理由に何を省いているかを振り返らせる一条です。
この章句が説くこと
家族友愛敬意謙虚孝悌
関連する章句
-
『忍経』親戚不可失歡骨肉の歡を失ふは、至微に本づきて、終に解くべからざるに至る者有り。能く先づ氣を下す有らば、則ち彼此酬復して遂に平時に好からん。宜しく深く之を思ふべし。
-
『囲炉夜話』自序・寒夜に爐を圍むは田家の樂しみ寒夜に爐を圍むは、田家の婦子の樂しみなり。顧ふに篝燈して坐對するも、或いは默默然として一言無く、或いは嘻嘻然として言ふ宜しき所に非ざるを言ふは、皆な樂しみと謂ふ所無し、將た此の良夜を虛しくせざらんや。余は字を識る農人なり。 歲晚れて務め閑に、家人聚まり處り、相與に山芋を燒煨し、心に得る所有れば、輒ち諸を口に述べ、兒輩に命じて繕寫して之を存せしめ、題して圍爐夜話と曰ふ。但だ其の中は皆な隨ひて得、隨ひて錄し、語に倫次無く且つ意淺く辭蕪れ、多くは信心の論に非ず、特だ以て家人に課して永夜を消すのみ、外人の為に道ふに足らざるなり。 倘し有道の君子の惠みて之を正すを蒙らば、則ち幸甚なり。 咸豐甲寅二月既望、王永彬、橋西館の一經堂に書す。
-
『塩鉄論』孝養篇文學曰く、善く養う者は必ずしも芻豢ならず、善く供服する者は必ずしも錦繡ならず。己の有する所を以て盡く其の親に事うるは、孝の至りなり。故に匹夫の勤勞も、猶お以て禮に順うに足り、菽を歠り水を飲むも、以て其の敬を致すに足る。孔子曰く、『今の孝は、是れ能く養うと為す、敬せずんば、何を以て別たんや』と。故に上孝は志を養い、其の次は色を養い、其の次は體を養う。其の禮を貴びて、其の養を貪らず、禮順い心和せば、養備わらずと雖も、可なり。易に曰く、『東鄰の牛を殺すは、西鄰の禴祭に如かざるなり』と。故に富貴にして禮無きは、貧賤の孝悌に如かず。閨門の內に孝を盡くし、閨門の外に悌を盡くし、朋友の道に信を盡くす、三者は、孝の至りなり。家に居りて理まる者は、財を積むを謂うに非ず、親に事えて孝なる者は、鮮肴を謂うに非ず、亦た顏色を和らげ、意を承けて禮義を盡くすのみ。
-
『酔古堂剣掃』集靈・骨肉の變に處しては從容たるべし父兄骨肉の變に處しては、宜しく從容たるべく、宜しく激烈なるべからず。 朋友交游の失に遇ひては、宜しく剴切なるべく、宜しく優游なるべからず。
-
『幽夢影』巻下・以て難しと爲すべきも法と爲すべからず九世同居は誠に盛事爲り、然れども止だ當に割股・廬墓の者と一例と作して看るべし。以て難しと爲すべきも、以て法と爲すべからざるなり。
-
『酔古堂剣掃』集法・新怨を以て舊恩を忘るる勿かれ小嫌を似て至戚を疏んずる毋かれ、新怨を以て舊恩を忘るる勿かれ。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る