講孟余話 / 滕文公上 第二章
此章孟子對フル所ノ主意ハ自盡ノ二字ニアリ、故ニ初對ニ口ヲ開キ即チ是ヲ言フ、次對ニ不可以他求者也ト云、在世子ト云、世子是ヲ開キ誠在我ト云ニ至テハ、旣ニ孟子ノ意ヲ領ス、宜ナルカナ能ク三年ノ喪ヲ成スコト、然トモ其論獨リ喪事ノミニ非ス、萬事皆然ラサルコトナシ、故ニ孔子曰爲仁由己而由人乎、誠カナ此言ヤ、三年ノ喪行ハレサル蓋シ亦久シ、孔門ノ第子、子張已ニ高宗諒闇三年不言ヲ疑フ、宰我三年ノ喪ノ久シキヲ憂フ、又尽心下篇ニ公孫丑ガ斉ノ宣王ノ短喪ヲ問フコトアリ、此類ヲ以テ此章ニ合セ考フルニ、三年ノ喪上ヨリ先廃シテ下是ニ從フナリ、三代以下、晋ノ武帝、元魏ノ孝文、南宋ノ孝宗ノ如キ、三年ノ喪ヲ行フノ君三數人ニ過キズ、此時ニ當テ其臣下徒ニ其美ヲ將順スルコト能ハサルノミナラズ、又從テ俗論ヲ造作シテ是ヲ沮歇スルニ至ル、礼法ノ頽廃是ニ至ル、実ニ歎息ニ餘リアルコト也、
新字:此章孟子対フル所ノ主意ハ自尽ノ二字ニアリ、故ニ初対ニ口ヲ開キ即チ是ヲ言フ、次対ニ不可以他求者也ト云、在世子ト云、世子是ヲ開キ誠在我ト云ニ至テハ、既ニ孟子ノ意ヲ領ス、宜ナルカナ能ク三年ノ喪ヲ成スコト、然トモ其論独リ喪事ノミニ非ス、万事皆然ラサルコトナシ、故ニ孔子曰為仁由己而由人乎、誠カナ此言ヤ、三年ノ喪行ハレサル蓋シ亦久シ、孔門ノ第子、子張已ニ高宗諒闇三年不言ヲ疑フ、宰我三年ノ喪ノ久シキヲ憂フ、又尽心下篇ニ公孫丑ガ斉ノ宣王ノ短喪ヲ問フコトアリ、此類ヲ以テ此章ニ合セ考フルニ、三年ノ喪上ヨリ先廃シテ下是ニ従フナリ、三代以下、晋ノ武帝、元魏ノ孝文、南宋ノ孝宗ノ如キ、三年ノ喪ヲ行フノ君三数人ニ過キズ、此時ニ当テ其臣下徒ニ其美ヲ将順スルコト能ハサルノミナラズ、又従テ俗論ヲ造作シテ是ヲ沮歇スルニ至ル、礼法ノ頽廃是ニ至ル、実ニ嘆息ニ余リアルコト也、
書き下し
此の章孟子対ふる所の主意は自尽の二字にあり。故に初対に口を開き即ち是れを言ふ。次対に「以て他に求むべからざる者なり」と云ひ、「世子に在り」と云ふ。世子是れを開き「誠に我に在り」と云ふに至りては、既に孟子の意を領す。宜なるかな能く三年の喪を成すこと。然れども其の論独り喪事のみに非ず、万事皆然らざることなし。故に孔子曰く「仁を為すは己れに由る、而して人に由らんや」。誠なるかな此の言や。三年の喪行はれざること蓋し亦久し。孔門の弟子、子張已に「高宗諒闇三年言はず」を疑ひ、宰我三年の喪の久しきを憂ふ。又尽心下篇に公孫丑が斉の宣王の短喪を問ふことあり。此の類を以て此の章に合せ考ふるに、三年の喪上より先づ廃して下是れに従ふなり。三代以下、晋の武帝、元魏の孝文、南宋の孝宗の如き、三年の喪を行ふの君三数人に過ぎず。此の時に当りて其の臣下徒に其の美を将順すること能はざるのみならず、又従ひて俗論を造作して是れを沮歇するに至る。礼法の頽廃是れに至る、実に歎息に余りあることなり。
現代語訳
この章で孟子が答えた趣旨は「自ら尽くす」の二字にある。だから最初の答えで口を開くとすぐにこれを言った。次の答えでは「これはほかに求めるべきものではない」と言い、「世子しだいである」と言った。世子がこれを悟って「まことに私しだいだ」と言うに至ったときには、すでに孟子の意を会得していた。三年の喪を成し遂げることができたのも、もっともである。しかしこの論は喪のことだけではない。あらゆることがみなそうである。だから孔子は「仁を行うのは自分しだいである。人しだいであろうか」と言った。まことにこの言葉のとおりである。三年の喪が行われなくなってから、おそらくもう久しい。孔子門下の弟子でさえ、子張は「殷の高宗が喪中三年ものを言わなかった」ことを疑い、宰我は三年の喪が長すぎると心配した。また尽心下篇には、公孫丑が斉の宣王の喪を短くすることについて尋ねたことがある。これらをこの章と合わせて考えると、三年の喪は上の者から先にすたれ、下がそれに従ったのである。三代以後、晋の武帝、北魏の孝文帝、南宋の孝宗のように、三年の喪を行った君主はわずか三、四人にすぎない。そのとき臣下たちは、その美しい行いをただ助け従うことができなかったばかりか、かえって俗論をこしらえてそれを妨げるに至った。礼法の頽廃がここまで至ったことは、まことに嘆いても余りある。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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論語・雍也篇宰我問いて曰く、「仁者は之に告げて『井に仁有り』と曰うと雖も、其れ之に従わんか。」子曰く、「何為れぞ其れ然らんや。君子は逝かしむ可きも、陥る可からず。欺く可きも、罔う可からず。」
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論語・憲問篇「克・伐・怨・欲、行われずんば、以て仁と為す可きか。」子曰く、「以て難しと為す可し。仁は則ち吾知らざるなり。」
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論語・八佾篇子曰く、人にして仁ならずんば、礼を如(いかん)せん;人にして仁ならずんば、楽を如せん。
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論語・里仁篇子曰わく、ただ仁者のみよく人を好み、よく人を悪む。
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論語・里仁篇子曰わく、不仁者は久しく約に処るべからず、長く楽に処るべからず。仁者は仁に安んじ、知者は仁を利とす。
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論語・微子篇微子これを去り、箕子これに為に奴となり、比干諫めて死す。孔子曰わく、殷に三仁有り。
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