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講孟余話 / 梁惠王下 第十章

古語ニモ戰勝ハ易ク、勝ヲ守ルハ難シト云如ク、燕ヲ取ルノ難キニ非ズ、燕ヲ守ルノ難キナリ、但民心ヲ得ル者ハ善ク守ルヲ得ルナリ、然ラスンバ亦運而已矣、然レハ大業ヲ興サントナラハ、征伐ノ日ニ在ラズシテ、昇平無事ノ日ニアリ、昇平無事ノ政、眞ニ民心ヲ得ルニ足ラハ、其餘亦何ソ多言セン、世ノ輕銳浮薄ノ徒、此義ヲ思ハスシテ徒ニ遠略ニ志スハ、吾ガ甚タ懼ルヽ所ナリ

新字:古語ニモ戦勝ハ易ク、勝ヲ守ルハ難シト云如ク、燕ヲ取ルノ難キニ非ズ、燕ヲ守ルノ難キナリ、但民心ヲ得ル者ハ善ク守ルヲ得ルナリ、然ラスンバ亦運而已矣、然レハ大業ヲ興サントナラハ、征伐ノ日ニ在ラズシテ、昇平無事ノ日ニアリ、昇平無事ノ政、真ニ民心ヲ得ルニ足ラハ、其余亦何ソ多言セン、世ノ軽鋭浮薄ノ徒、此義ヲ思ハスシテ徒ニ遠略ニ志スハ、吾ガ甚タ懼ルヽ所ナリ

書き下し

古語にも、戦ひ勝つは易く、勝ちを守るは難しと云ふ如く、燕を取るの難きに非ず、燕を守るの難きなり。但だ民心を得る者は善く守るを得るなり、然らずんば亦運らすのみ。然れば大業を興さんとならば、征伐の日に在らずして、昇平無事の日にあり。昇平無事の政、真に民心を得るに足らば、其の余亦何ぞ多言せん。世の軽鋭浮薄の徒、此の義を思はずして徒に遠略に志すは、吾が甚だ懼るる所なり。

現代語訳

古い言葉にも「戦って勝つのはたやすく、勝ちを守るのは難しい」とあるように、燕を取ることが難しいのではなく、燕を守ることが難しいのである。ただ民心を得た者だけがよく守ることができ、そうでなければ、運に任せるほかない。だから大事業を興そうとするなら、その鍵は戦の日にあるのではなく、太平無事の日にある。太平無事のときの政治が、本当に民心を得るに足るなら、ほかに何を言う必要があろう。世の軽はずみで浮ついた者たちが、この道理を考えずに、いたずらに遠くへ攻めて出る策を志すのは、私の深く恐れるところである。

解説

斉が燕を攻め取ったとき、宣王が燕を併合すべきかを問い、孟子が燕の民が喜ぶなら取れ、喜ばないなら取るなと答えた章です。松陰は「勝つは易く、守るは難し」の古語を引き、征服より統治、とりわけ民心を得ることが難しいと読みます。そして大事業の成否は戦の日ではなく、何事もない平時の政治で決まると言います。勇ましい遠征論に走る若者を戒める言葉でもあります。事業でも、獲得した後の運営こそが本番だという教えとして読めます。

この章句が説くこと

民心守成平時統治戒め

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