講孟余話 / 梁惠王上 第五章
且燕斉ノ事ヲ以テ是ヲ證セン、燕王噲国ヲ其相子之ニ讓テ国大ニ乱ル、斉ノ宣王是ヲ擊ツ、燕士卒戰ハズ、城門閉チズ、五旬ニシテ是ヲ擧ク、其後二年燕人太子平ヲ立テ王トシ、其国ヲ復ス、是ヲ昭王トス、昭王既ニ位ニ即キ、身ヲ卑フシ幣ヲ厚フシ賢者ヲ招ク、遂ニ秦楚三晋ト謀ヲ合セテ斉ヲ伐是ヲ敗リ、七十餘城皆下ル、斉城ノ下ラサル者聊莒即墨ノミ、餘ハ皆燕ニ屬ス、斉ノ潜王出走ス、田單乃チ即墨ヲ以テ大ニ燕軍ヲ敗リ、七十餘城ヲ復シ、襄王ヲ莒ニ迎ヘテ斉国旧ニ復ス、夫レ燕噲斉潜ハ昏愚ノ極ナル者ナリ、仁政ヲ民ニ施スコト絕テ無シ、然トモ昭王襄王ニ至リ、能ク国ヲ復シ讎ヲ報スルコトヲ得ル者ハ他ナシ、斉燕皆魏然タル大国ニシテ、而モ祖先以來国ヲ有スルノ日久シ、民心ヲ得ルコト深シ、故ニ一旦破潰スト雖トモ遂ニ滅絕スルコト能ハズ、况ヤ之ニ加フルニ仁政ヲ以テスル者、武備ヲ設ケズト雖トモ孰カ之ヲ取ルコトヲ得ンヤ、
新字:且燕斉ノ事ヲ以テ是ヲ証セン、燕王噲国ヲ其相子之ニ譲テ国大ニ乱ル、斉ノ宣王是ヲ撃ツ、燕士卒戦ハズ、城門閉チズ、五旬ニシテ是ヲ挙ク、其後二年燕人太子平ヲ立テ王トシ、其国ヲ復ス、是ヲ昭王トス、昭王既ニ位ニ即キ、身ヲ卑フシ幣ヲ厚フシ賢者ヲ招ク、遂ニ秦楚三晋ト謀ヲ合セテ斉ヲ伐是ヲ敗リ、七十余城皆下ル、斉城ノ下ラサル者聊莒即墨ノミ、余ハ皆燕ニ属ス、斉ノ潜王出走ス、田単乃チ即墨ヲ以テ大ニ燕軍ヲ敗リ、七十余城ヲ復シ、襄王ヲ莒ニ迎ヘテ斉国旧ニ復ス、夫レ燕噲斉潜ハ昏愚ノ極ナル者ナリ、仁政ヲ民ニ施スコト絶テ無シ、然トモ昭王襄王ニ至リ、能ク国ヲ復シ讎ヲ報スルコトヲ得ル者ハ他ナシ、斉燕皆魏然タル大国ニシテ、而モ祖先以来国ヲ有スルノ日久シ、民心ヲ得ルコト深シ、故ニ一旦破潰スト雖トモ遂ニ滅絶スルコト能ハズ、況ヤ之ニ加フルニ仁政ヲ以テスル者、武備ヲ設ケズト雖トモ孰カ之ヲ取ルコトヲ得ンヤ、
書き下し
且つ燕斉の事を以て是れを証せん。燕王噲、国を其の相子之に譲りて国大いに乱る。斉の宣王是れを撃つ。燕の士卒戦はず、城門閉ぢず、五旬にして是れを挙ぐ。其の後二年、燕人太子平を立てて王とし、其の国を復す、是れを昭王とす。昭王既に位に即き、身を卑うし幣を厚うし賢者を招く。遂に秦楚三晋と謀を合はせて斉を伐ち是れを敗り、七十余城皆下る。斉城の下らざる者は聊・莒・即墨のみ、余は皆燕に属す。斉の湣王出走す。田単乃ち即墨を以て大いに燕軍を敗り、七十余城を復し、襄王を莒に迎へて斉国旧に復す。夫れ燕噲・斉湣は昏愚の極なる者なり、仁政を民に施すこと絶えて無し。然れども昭王・襄王に至り、能く国を復し讎を報ずることを得る者は他なし、斉燕皆巍然たる大国にして、而も祖先以来国を有するの日久し、民心を得ること深し。故に一旦破潰すと雖も遂に滅絶すること能はず。況んや之れに加ふるに仁政を以てする者、武備を設けずと雖も孰か之れを取ることを得んや。
現代語訳
さらに燕と斉の事例でこれを証明しよう。燕王噲は国を宰相の子之に譲り、国は大いに乱れた。斉の宣王がこれを攻めると、燕の兵は戦わず、城門も閉じず、五十日で燕を手に入れた。その二年後、燕の人々は太子平を立てて王とし、国を回復した。これが昭王である。昭王は位につくと、へりくだって礼物を厚くし、賢者を招いた。ついに秦・楚・三晋と謀を合わせて斉を討ち破り、七十余りの城がみな降った。降らなかったのは聊・莒・即墨だけで、ほかはみな燕に属した。斉の湣王は逃げ出した。田単が即墨から燕軍を大いに破って七十余城を取り返し、襄王を莒から迎えて、斉の国はもとに戻った。燕王噲と斉の湣王は愚かさの極みで、民に仁政を施したことなどまったくない。それでも昭王・襄王の代になって国を回復し、仇を討つことができたのは、ほかでもない。斉も燕も堂々たる大国で、しかも先祖以来国を保ってきた年月が長く、民の心を深く得ていたからである。だから一度は崩れても、ついに滅び去ることはなかった。まして、それに仁政を加える国なら、武備を設けなくても、誰がそれを奪えようか。
解説
この章句が説くこと
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