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講孟余話 / 梁惠王上 第五章

施仁政於民、可使制梃以撻秦楚之堅甲利兵矣、勿疑、魏ノ国タルヤ、西ハ秦ニ壓サレ、南ハ楚ニ逼ラレ、東ハ斉ニ窺ハル、其自立ノ難キ、言ヲ待タズ、魏ノ爲メニ策スル者、宜シク兵械ヲ修メ、糧餉ヲ儲ヘ、卒伍ヲ練リ將領ヲ撰フナト云ベシ、然ルニ孟子ハ則然ラズ、唯仁政ト言ノミ、梃ヲ制シ秦楚ヲ撻ツト云フノミ、宜ナルカナ當時孟子ノ說ヲ以テ事情ニ濶ナリトスルコト、然トモ是大ニ事情ニ切ナル者アリ、深察セサルノミ、

新字:施仁政於民、可使制梃以撻秦楚之堅甲利兵矣、勿疑、魏ノ国タルヤ、西ハ秦ニ圧サレ、南ハ楚ニ逼ラレ、東ハ斉ニ窺ハル、其自立ノ難キ、言ヲ待タズ、魏ノ為メニ策スル者、宜シク兵械ヲ修メ、糧餉ヲ儲ヘ、卒伍ヲ練リ将領ヲ撰フナト云ベシ、然ルニ孟子ハ則然ラズ、唯仁政ト言ノミ、梃ヲ制シ秦楚ヲ撻ツト云フノミ、宜ナルカナ当時孟子ノ説ヲ以テ事情ニ濶ナリトスルコト、然トモ是大ニ事情ニ切ナル者アリ、深察セサルノミ、

書き下し

仁政を民に施さば、梃を制して以て秦楚の堅甲利兵を撻たしむべし。疑ふ勿れ。魏の国たるや、西は秦に圧され、南は楚に逼られ、東は斉に窺はる。其の自立の難き、言を待たず。魏の為めに策する者、宜しく兵械を修め、糧餉を儲へ、卒伍を練り将領を撰ぶなど云ふべし。然るに孟子は則ち然らず、唯だ仁政と言ふのみ、梃を制し秦楚を撻つと云ふのみ。宜なるかな、当時孟子の説を以て事情に濶なりとすること。然れども是れ大いに事情に切なる者あり、深察せざるのみ。

現代語訳

「仁政を民に施せば、棒切れを手にして、秦や楚の堅い鎧と鋭い武器を打ち負かすことができる。疑ってはならない」。魏という国は、西は秦に圧迫され、南は楚に迫られ、東は斉にうかがわれている。自立の難しさは言うまでもない。魏のために策を立てる者なら、武器を整え、兵糧を蓄え、兵を鍛え、将を選べなどと言うはずである。ところが孟子はそうではなく、ただ仁政と言い、棒で秦楚を打つと言うだけである。当時、孟子の説が現実にうといとされたのも無理はない。しかしこれは実は大いに現実に即したものであり、人々が深く考えなかっただけである。

解説

孟子が梁の恵王に、刑罰を省き税を軽くして民を安んじれば、棒切れで秦や楚の精兵も打ち破れると説いた章の冒頭です。強国に囲まれた魏に必要なのは軍備のはずだと誰もが考える中、孟子は仁政だけを説きました。松陰は、それを世間知らずの理想論と見るのは浅く、実は最も現実的な策なのだと受け止め、続く部分でその筋道を具体的に描いていきます。正論を空論と決めつける前に、その中身を本気で詰めてみる姿勢がうかがえます。

この章句が説くこと

仁政国防現実孟子理想

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