国語 / 越語下
又一年,王召范蠡而問焉,曰:「吾與子謀吳,子曰:『未可也』。今其稻蟹不遺種,其可乎?」對曰:「天應至矣,人事未盡也,王姑待之。」王怒曰:「道固然乎,妄其欺不穀邪?吾與子言人事,子應我以天時;今天應至矣,子應我以人事。何也?」范蠡對曰:「王姑勿怪。夫人事必將與天地相參,然後乃可以成功。今其禍新民恐,其君臣上下,皆知其資財之不足以支長久也,彼將同其力,致其死,猶尚殆。王其且馳騁弋獵,無至禽荒;宮中之樂,無至酒荒;肆與大夫觴飲,無忘國常。彼其上將薄其德,民將盡其力,又使之望而不得食,乃可以致天地之殛。王姑待之。」
新字:又一年,王召范蠡而問焉,曰:「吾与子謀呉,子曰:『未可也』。今其稲蟹不遺種,其可乎?」対曰:「天応至矣,人事未尽也,王姑待之。」王怒曰:「道固然乎,妄其欺不穀邪?吾与子言人事,子応我以天時;今天応至矣,子応我以人事。何也?」范蠡対曰:「王姑勿怪。夫人事必将与天地相参,然後乃可以成功。今其禍新民恐,其君臣上下,皆知其資財之不足以支長久也,彼将同其力,致其死,猶尚殆。王其且馳騁弋猟,無至禽荒;宮中之楽,無至酒荒;肆与大夫觴飲,無忘国常。彼其上将薄其徳,民将尽其力,又使之望而不得食,乃可以致天地之殛。王姑待之。」
書き下し
又一年、王范蠡を召して問いて曰く、「吾子と呉を謀るに、子曰く、『未だ可ならざるなり』と。今其の稲蟹(とうかい)種を遺さず。其れ可ならんか」と。対えて曰く、「天応至れり。人事未だ尽きざるなり。王姑く之を待て」と。王怒りて曰く、「道固より然るか。妄(みだ)りに其れ不穀を欺くか。吾子と人事を言えば、子我に応ずるに天時を以てす。今天応至れば、子我に応ずるに人事を以てす。何ぞや」と。范蠡対えて曰く、「王姑く怪しむこと勿かれ。夫れ人事は必ず将に天地と相参(まじ)わりて、然る後に乃ち以て功を成すべし。今其の禍新たにして民恐る。其の君臣上下、皆其の資財の以て長久を支うるに足らざるを知る。彼将に其の力を同じくし、其の死を致さんとす。猶尚お殆(あや)うし。王其れ且(しばら)く馳騁弋猟(ちていよくりょう)すれども、禽荒に至ること無かれ。宮中の楽しみも、酒荒に至ること無かれ。肆(ほしいまま)に大夫と觴飲(しょういん)すれども、国常を忘るること無かれ。彼其の上将に其の徳を薄くせんとし、民将に其の力を尽くさんとし、又之をして望みて食を得ざらしめば、乃ち以て天地の殛(きょく)を致すべし。王姑く之を待て」と。
現代語訳
また一年たって、王は范蠡を呼んで尋ねた。「わたしがあなたと呉のことを謀ったとき、あなたは『まだなりません』と言った。いま呉では、稲が蟹に食い荒らされて種籾さえ残っていないという。もうよいだろうか」。范蠡は答えた。「天の応えはやってきました。しかし人の事がまだ極まっていません。王よ、いましばらくお待ちください」。王は怒って言った。「道理とはもともとそういうものなのか。それとも、でたらめを言ってわたしを欺いているのか。わたしが人の事を言えば、あなたは天の時をもって答え、いま天の応えがやってくると、今度は人の事をもって答える。どういうわけだ」。范蠡は答えた。「王よ、しばらくお怪しみにならないでください。人の事は、必ず天の時と地の利とに参じ合って、はじめて功を成し遂げることができるのです。いま呉は禍いにあったばかりで、民は恐れています。君臣上下はみな、自分たちの蓄えでは長く持ちこたえられないことを知っています。だからこそ彼らは力を合わせ、死にもの狂いで戦うでしょう。いま攻めても、なお危ういのです。王はしばらく馬を走らせ、鳥を射る狩りを楽しまれても、狩りにおぼれるところまではいかないようになさいませ。宮中の楽しみも、酒におぼれるところまではいかないように。大夫たちと気ままに酒を酌み交わされても、国の常の法は忘れないように。そうして越が呉のことなど気にかけていないように見せておけば、呉の上に立つ者はますます徳を薄くし、民はますます力を使い尽くし、そのうえ望んでも食べ物が得られなくなります。そうなってはじめて、天地の誅罰を呉にもたらすことができるのです。王よ、いましばらくお待ちください」
解説
この章句が説くこと
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