国語 / 鄭語
公曰:「謝西之九州,何如?」對曰:「其民沓貪而忍,不可因也。唯謝、郟之間,其冢君侈驕,其民怠沓其君,而未及周德;若更君而周訓之,是易取也,且可長用也。」 公曰:「周其弊乎?」對曰:「殆於必弊者也。泰誓曰:『民之所欲,天必從之。』今王棄高明昭顯,而好讒慝暗昧;惡角犀豐盈,而近頑童窮固。去和而取同。夫和實生物,同則不繼。以他平他謂之和,故能豐長而物歸之;若以同裨同,盡乃棄矣。故先王以土與金木水火雜,以成百物。是以和五味以調口,剛四支以衛體,和六律以聰耳,正七體以役心,平八索以成人,建九紀以立純德,合十數以訓百體。出千品,具萬方,計億事,材兆物,收經入,行姟極。故王者居九畡之田,收經入以食兆民,周訓而能用之,和樂如一。夫如是,和之至也。於是乎先王聘后於異姓,求財於有方,擇臣取諫工而講以多物,務和同也。聲一無聽,物一無文,味一無果,物一不講。王將棄是類也而與剸同。天奪之明,欲無弊,得乎?
新字:公曰:「謝西之九州,何如?」対曰:「其民沓貪而忍,不可因也。唯謝、郟之間,其冢君侈驕,其民怠沓其君,而未及周徳;若更君而周訓之,是易取也,且可長用也。」 公曰:「周其弊乎?」対曰:「殆於必弊者也。泰誓曰:『民之所欲,天必従之。』今王棄高明昭顕,而好讒慝暗昧;悪角犀豊盈,而近頑童窮固。去和而取同。夫和実生物,同則不継。以他平他謂之和,故能豊長而物帰之;若以同裨同,尽乃棄矣。故先王以土与金木水火雑,以成百物。是以和五味以調口,剛四支以衛体,和六律以聰耳,正七体以役心,平八索以成人,建九紀以立純徳,合十数以訓百体。出千品,具万方,計億事,材兆物,収経入,行姟極。故王者居九畡之田,収経入以食兆民,周訓而能用之,和楽如一。夫如是,和之至也。於是乎先王聘后於異姓,求財於有方,択臣取諫工而講以多物,務和同也。声一無聴,物一無文,味一無果,物一不講。王将棄是類也而与剸同。天奪之明,欲無弊,得乎?
書き下し
公曰く、「謝の西の九州は、何如」と。対えて曰く、「其の民は沓貪(とうどん)にして忍なり、因るべからざるなり。唯だ謝・郟(こう)の間は、其の冢君(ちょうくん)侈驕にして、其の民其の君に怠沓し、未だ周の徳に及ばず。若し君を更(か)えて周く之を訓うれば、是れ取り易きなり、且つ長く用うべきなり」と。 公曰く、「周其れ弊れんか」と。対えて曰く、「殆ど必ず弊るる者なり。泰誓に曰く、『民の欲する所は、天必ず之に従う』と。今王は高明昭顕を棄てて、讒慝(ざんとく)暗昧を好み、角犀豊盈を悪んで、頑童窮固に近づく。和を去りて同を取る。夫れ和は実に物を生じ、同は則ち継がず。他を以て他を平らかにする、之を和と謂う。故に能く豊長して物之に帰す。若し同を以て同を裨(おぎな)わば、尽きて乃ち棄てられん。故に先王は土を以て金・木・水・火と雑えて、以て百物を成す。是を以て五味を和して以て口を調え、四支を剛(つよ)くして以て体を衛り、六律を和して以て耳を聡くし、七体を正して以て心を役し、八索を平らかにして以て人を成し、九紀を建てて以て純徳を立て、十数を合わせて以て百体を訓う。千品を出だし、万方を具え、億事を計り、兆物を材(さい)し、経入を収め、姟極(がいきょく)を行う。故に王者は九畡(きゅうがい)の田に居り、経入を収めて以て兆民を食(やしな)い、周く訓えて能く之を用い、和楽すること一の如し。夫れ是くの如きは、和の至りなり。是に於て先王は后を異姓に聘し、財を有方に求め、臣を択び諫工を取りて講ずるに多物を以てす。和同を務むるなり。声一なれば聴く無く、物一なれば文無く、味一なれば果無く、物一なれば講ぜず。王将に是の類を棄てて剸同(せんどう)に与せんとす。天之が明を奪う、弊るる無からんと欲するも、得んや。
現代語訳
桓公が言った。「謝の西にある九州の地はどうか。」史伯は答えた。「そこの民は貪欲で残忍ですから、頼りにできません。ただ謝と郟の間の地は、その国の君が奢って驕り、民は君をないがしろにしており、まだ周の徳にも浴していません。君を取り替えて周の教えを行き渡らせれば、たやすく手に入り、しかも長く用いることができます。」 桓公が言った。「周はもう衰え果てるのか。」史伯は答えた。「ほとんど必ず衰え果てるでしょう。『泰誓』に『民の望むところには、天が必ず従う』とあります。いま王は、高く明らかで光り輝く徳を持つ人を棄てて、讒言する邪な者や物の道理に暗い者を好み、角のように才気がはっきりして豊かな者を憎んで、頑なで愚かで見識の狭い者を近づけています。和を捨てて同を取っているのです。そもそも和こそが物を生み出し、同では後が続きません。異なるものどうしで互いに釣り合わせることを和と言い、だからこそ豊かに育ち、物がそこに集まってきます。もし同じものに同じものを足していけば、尽きてしまえば棄てられるばかりです。だから先王は土を金・木・水・火と混ぜ合わせて万物を作りました。こうして五つの味を和して口を調え、四肢を強くして体を守り、六つの音律を和して耳を聡くし、七つの穴(目・耳・鼻・口)を正して心の働きを助け、八つの体の部分を整えて人を成り立たせ、九つの臓腑を定めて純一な徳を立て、十の位の人々を合わせて百官を導きました。千の品を生み出し、万の方策を備え、億の事を計り、兆の物を用い分け、定まった収入を収め、限りない数の事業を行いました。だから王者は九畡の田地を持ち、定まった収入によって兆の民を養い、あまねく教えてよく用い、和らぎ楽しんで一つのようにまとまるのです。このようであることが和の極みです。それで先王は后を異姓の家から迎え、財を四方から求め、臣を選ぶにも諫める者を取り、多くの異なる物事を議論させました。和を求め、同を避けようとしたのです。音が一つだけでは聴くに値せず、色が一つだけでは模様にならず、味が一つだけでは美味にならず、物が一つだけでは比べて論じることができません。ところが王は、こうしたものをすべて棄てて、同じものばかりを集めようとしています。天がその明を奪ったのです。衰えずにいようとしても、どうしてできましょうか。
解説
この章句が説くこと
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言志四録・言志晩録 第七十二条 和悦にして諍む聖人の心は、辞気容貌に見はる。其の地と人とに於て各々異なり。未だ知らず、孔子委吏・乗田たりし時、長官に於て果して何如なりしかを。郷党載せず。学者宜しく推勘すべし。或ひと曰く「和悦にして諍む」と。
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『慎思録』巻之四唐の太宗、自ら神采の臣下の畏るる所と為るを知り、常に顔を温めて群臣に接し、人を導きて諫めしめ、且つ諫むる者を賞して以て之を来たす。篤信案ずるに、醍醐帝群臣に対して、常に顔色を和らげて以て之を待ち、事の奏し易からんことを欲す。是れ倭漢同日の談なり。
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国語・周語下王聴かず、之を伶州鳩(れいしゅうきゅう)に問う。対えて曰く、「臣の守官は及ばざるなり。臣之を聞く、琴瑟は宮を尚び、鍾は羽を尚び、石は角を尚び、匏竹(ほうちく)は制を利とす。大は宮を踰えず、細は羽を過ぎず。夫れ宮は音の主なり。第して以て羽に及ぶ。聖人は楽を保ちて財を愛し、財は以て器を備え、楽は以て財を殖やす。故に楽器の重き者は細に従い、軽き者は大に従う。是を以て金は羽を尚び、石は角を尚び、瓦絲は宮を尚び、匏竹は議を尚び、革木は一声なり。 「夫れ政は楽に象(かたど)り、楽は和に従い、和は平に従う。声は以て楽を和し、律は以て声を平らかにす。金石以て之を動かし、絲竹以て之を行い、詩以て之を道い、歌以て之を詠じ、匏以て之を宣べ、瓦以て之を賛(たす)け、革木以て之を節す。物其の常を得るを楽極と曰い、極の集まる所を声と曰い、声応じて相保つを和と曰い、細大踰えざるを平と曰う。是くの如くにして、之を金に鋳、之を石に磨き、之を絲木に繋け、之を匏竹に越(うが)ち、之を鼓に節して之を行い、以て八風を遂ぐ。是に於いてか気に滞陰無く、亦散陽無く、陰陽序次し、風雨時に至り、嘉生繁祉し、人民龢利し、物備わりて楽成り、上下罷(つか)れず。故に楽正と曰う。今細其の主を過ぎて正を妨げ、物を用いること度を過ぎて財を妨げ、正害われ財匱しくして楽を妨ぐ。細抑えられ大陵ぎ、耳に容れられず、和に非ざるなり。声を聴くこと越遠なり、平に非ざるなり。正を妨げ財を匱しくし、声和平ならず、宗官の司る所に非ざるなり。 「夫れ和平の声有れば、則ち蕃殖の財有り。是に於いてか之を道くに中徳を以てし、之を詠ずるに中音を以てす。徳音愆(あやま)たず、以て神人を合す。神是を以て寧く、民是を以て聴く。若し夫れ財用を匱しくし、民力を罷らし、以て淫心を逞しくし、之を聴けども和せず、之を比ぶれども度あらず、教えに益無くして、民を離し神を怒らすは、臣の聞く所に非ざるなり」と。 王聴かず、卒に大鍾を鋳る。二十四年、鍾成り、伶人和を告ぐ。王伶州鳩に謂いて曰く、「鍾果たして和せり」と。対えて曰く、「未だ知るべからざるなり」と。王曰く、「何の故ぞ」と。対えて曰く、「上器を作り、民備(つぶさ)に之を楽しむ、則ち和と為す。今財亡び民罷れ、怨恨せざるは莫し。臣其の和を知らざるなり。且つ民の曹(とも)に好む所は、其の済らざること鮮し。其の曹に悪む所は、其の廃れざること鮮し。故に諺に曰く、『衆心城を成し、衆口金を鑠(と)かす』と。三年の中にして、害金再び興る。懼らくは一の廃れんことを」と。王曰く、「爾老耄せり。何をか知らん」と。二十五年、王崩じ、鍾和せず。
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