十七条憲法 / 第一条
一曰、以和爲貴、無忤爲宗。人皆有党、亦少達者。是以、或不順君父、乍違于隣里。然上和下睦、諧於論事、則事理自通。何事不成。
新字:一曰、以和為貴、無忤為宗。人皆有党、亦少達者。是以、或不順君父、乍違于隣里。然上和下睦、諧於論事、則事理自通。何事不成。
書き下し
一に曰わく、和(わ)を以(も)って貴(たっと)しと為(な)し、忤(さから)うこと無きを宗(むね)と為(せ)よ。人は皆(みな)党(たむら)有り、亦(また)達(さと)れる者少なし。是(ここ)を以て、或(あるい)は君父(くんぷ)に順(したが)わず、乍(あるいは)隣里(りんり)に違(たが)う。然(しか)れども、上(かみ)和(やわら)ぎ下(しも)睦(むつ)びて、事(こと)を論(あげつら)うに諧(かな)うときは、則(すなわ)ち事理(じり)自(おのずか)ら通(つう)ず。何事(なにごと)か成らざらん。
現代語訳
人と人が心を通わせて暮らすことを最も大切にし、不毛な争いを起こさぬように。 人は群れて生きる生き物である一方で、すべての者が物事の筋道をきちんと考えられるわけではない。 そのため、ときには主人や親の言うことを守らず、隣の村とも争いを起こすような者が現れる。 しかし、上に立つ者が穏やかで、下の者と気持ちが通い合っていれば、互いに膝を突き合わせて語り合う中で、自然と道理は明らかになる。 そうなれば、この世に成し遂げられないことなど何一つない。
解説
組織運営の基盤は「和」にある。だが、これは単なる表面的な同調や、いさかいを避けること(逆らわない)だけを意味しない。重要なのは「和」を実現するプロセスである。まず、リーダー(上)が部下(下)と和やかな関係を築き、信頼関係を構築すること(上が和らぎ下と睦まじく)が求められる。その上で、立場や上下関係にとらわれすぎず、リラックスした雰囲気で(戯れにおいて)、率直に物事を議論できる場(事を論じれば)を作ることが不可欠である。このように、心理的安全性が確保されたオープンな議論を経てこそ、物事の道理が明らかになり(事の道理は自ら通じる)、全員が納得する形での「建設的な和」が達成される。リーダーは、一方的に結束を強いるのではなく、部下が本音で話せる環境を整備し、率直な議論を歓迎する姿勢が求められる。
この章句が説くこと
和協調性チームワーク心理的安全性合意形成オープンな議論
関連する章句
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言志四録・南洲手抄三軍和せずば、以て戦を言ひ難し。百官和せずば、以て治を言ひ難し。書に云ふ、寅を同じうし恭を協せ和衷せよやと。唯だ一の和字、治乱を一串す。
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司馬法・嚴位譲るに和を以てすれば、人自ら洽(あまね)し。
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論語・学而篇有子曰く、「礼の用は和を貴しと為す。先王の道も斯を美と為す。小大之に由れども、行われざる所有り。和を知りて和すれども、礼を以て之を節せざれば、亦行う可からざるなり。」
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老子・第55章徳を含むことの厚きは、赤子に比す。毒虫も螫さず、猛獣も拠らず、攫鳥も搏たず。骨は弱く筋は柔らかにして而も握ること固し。未だ牝牡の合を知らずして而も全く作つは、精の至りなり。終日号びて而も嗄れざるは、和の至りなり。和を知るを常と曰い、常を知るを明と曰う。生を益すを祥と曰い、心の気を使うを強と曰う。物壮なれば則ち老ゆ、之を不道と謂う。不道は早く已む。
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孟子・梁惠王章句下齊人、燕を伐ちて、之を取る。諸侯將に謀りて燕を救わんとす。宣王曰く、「諸侯、寡人を伐たんと謀る者多し。何を以て之を待たん。」孟子對えて曰く、「臣、七十里にして政を天下に為す者を聞く。湯是れなり。未だ千里を以て人を畏るる者を聞かざるなり。書に曰く、『湯一(はじめて)めて征する、葛自り始む。』天下之を信ず。東面して征すれば、西夷怨み、南面して征すれば、北狄怨む。曰く、『奚為れぞ我を後にする。』民の之を望むこと、大旱の雲霓(ウン・ゲイ)を望むが若きなり。市に歸(おもむく)く者は止まらず、耕す者は變ぜず。其の君を誅して、其の民を弔う。時雨の降るが若し。民大いに悅ぶ。書に曰く、『我が后(「君」に同じ)を徯(まつ)つ、后來たらば其れ蘇らん。』今、燕、其の民を虐ぐ。王往きて之を征す。民以て將に己を水火の中より拯(すくう)わんとすと為す。簞食壺漿して、以て王の師を迎う。若し其の父兄を殺し、其の子弟を係累し、其の宗廟を毀ち、其の重器を遷さば、之を如何ぞ其れ可ならんや。天下固より齊の彊きを畏るるなり。今又地を倍して、仁政を行わずんば、是れ天下の兵を動かすなり。王速かに令を出だし、其の旄倪を反し、其の重器を止め、燕の衆に謀り、君を置きて而る後に之を去らば、則ち猶ほ止むるに及ぶ可きなり。」
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易経・彖伝夬(かい)は、決なり。剛の柔を決するなり。健にして説(よろこ)び、決して和す。「王庭に揚(あ)ぐ」とは、柔の五剛に乗ればなり。「孚(まこと)ありて号(さけ)ぶ、厲(あや)うきあり」とは、其の危うきこと乃ち光(おお)いなればなり。「邑(ゆう)より告ぐ、戎(じゅう)に即(つ)くに利あらず」とは、尚(たっと)ぶ所乃ち窮すればなり。「往(ゆ)く攸(ところ)あるに利あり」とは、剛長じて乃ち終わればなり。