国語 / 晋語九
晉陽之圍,張談曰:「先主為重器也,為國家之難也,盍姑無愛寶於諸侯乎?」襄子曰:「吾無使也。」張談曰:「地也可。」襄子曰:「吾不幸有疾,不夷於先子,不德而賄。夫地也求飲吾欲,是養吾疾而干吾祿也。吾不與皆斃。」襄子出,曰:「吾何走乎?」從者曰:「長子近,且城厚完。」襄子曰:「民罷力以完之,又斃死以守之,其誰與我?」從者曰:「邯鄲之倉庫實。」襄子曰:「浚民之膏澤以實之,又因而殺之,其誰與我?其晉陽乎!先主之所屬也,尹鐸之所寬也,民必和矣。」乃走晉陽,晉師圍而灌之,沈灶產鼃,民無叛意。
新字:晋陽之囲,張談曰:「先主為重器也,為国家之難也,盍姑無愛宝於諸侯乎?」襄子曰:「吾無使也。」張談曰:「地也可。」襄子曰:「吾不幸有疾,不夷於先子,不徳而賄。夫地也求飲吾欲,是養吾疾而干吾禄也。吾不与皆斃。」襄子出,曰:「吾何走乎?」従者曰:「長子近,且城厚完。」襄子曰:「民罷力以完之,又斃死以守之,其誰与我?」従者曰:「邯鄲之倉庫実。」襄子曰:「浚民之膏沢以実之,又因而殺之,其誰与我?其晋陽乎!先主之所属也,尹鐸之所寛也,民必和矣。」乃走晋陽,晋師囲而灌之,沈灶産鼃,民無叛意。
書き下し
晋陽の囲みに、張談(ちょうだん)曰く、「先主の重器を為るや、国家の難の為なり。盍(なん)ぞ姑(しばら)く宝を諸侯に愛(お)しむこと無からざる」と。襄子曰く、「吾使(つかい)無きなり」と。張談曰く、「地(ち)や可なり」と。襄子曰く、「吾不幸にして疾有り、先子に夷(たい)らかならず。不徳にして賄せんや。夫れ地や吾が欲に飲ましむるを求む。是れ吾が疾を養いて吾が禄を干(もと)むるなり。吾与(とも)に皆斃れざらん」と。襄子出でて曰く、「吾何くにか走らん」と。従者曰く、「長子(ちょうし)近く、且つ城厚く完し」と。襄子曰く、「民力を罷(つか)らして以て之を完くし、又斃死して以て之を守らしむ。其れ誰か我に与(くみ)せん」と。従者曰く、「邯鄲(かんたん)の倉庫実(み)てり」と。襄子曰く、「民の膏沢(こうたく)を浚(しぼ)りて以て之を実たし、又因りて之を殺さば、其れ誰か我に与せん。其れ晋陽か。先主の属(しょく)する所なり、尹鐸の寛くする所なり。民必ず和せん」と。乃ち晋陽に走る。晋の師囲みて之に灌(そそ)ぐ。沈竈(ちんそう)鼃(あ)を産すれども、民叛く意無し。
現代語訳
晋陽が包囲されたときのことである。家宰の張談(張孟談)が言った。「先代の殿(簡子)が宝器を造られたのは、国家の難に備えるためでした。ここはしばらく宝を惜しまず、諸侯に贈って助けを求めてはいかがでしょう。」襄子は言った。「使いに立てる者がいない。」張談が「地(襄子の家臣)なら務まります」と言うと、襄子は言った。「私は不幸にも欠けたところがあり、先代に及ばない。徳もないのに賄賂で助けを求められようか。それに地は、私の欲を満たしてご機嫌を取ることばかり求める男だ。それは私の欠点を育て、自分の禄を求めるものだ。そんな者と一緒に倒れるわけにはいかない。」襄子は都を出て言った。「どこへ逃れようか。」従者が言った。「長子(晋の別の邑)が近く、しかも城壁は厚く完全です。」襄子は言った。「民の力を疲れさせて城壁を完全にし、そのうえ命を捨てて守らせるのでは、誰が私に味方してくれよう。」従者が言った。「邯鄲は倉庫が満ちております。」襄子は言った。「民の膏血を搾り取って倉庫を満たし、そのうえ戦いで死なせるのでは、誰が私に味方してくれよう。やはり晋陽だろう。先代が私に託された地であり、尹鐸が民をゆったりと治めた地だ。民は必ず心を合わせてくれる。」そこで晋陽へ逃れた。智氏らの晋の軍は晋陽を囲み、川の水を引き入れて城を水浸しにした。かまどは水に沈み、そこに蛙がわくほどになったが、民には背こうとする気持ちがなかった。
解説
この章句が説くこと
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『都鄙問答』卷之一・武士ノ道ヲ問ノ段露塵ほども我が身を顧みざるは、臣の道なり。常に手足が口に使はるると、我が身の君に事ふると、違ふことあらば、此は不忠なりと知るべし。此を法とせば、何国にて仕ふるとも、臣の道を離るることあるべからず。扨て臣は政に従ふものなり。下を使ふは、君の道を以て治むべし。古聖人の御代には、君としては万民を子の如く思し召し、民の心を以て、御心となし玉ふ。伝に云ふ、民の好む所は之を好み、民の悪む所は之を悪む、此を之れ民の父母と謂ふ。此のゆへに、聖人は世を没し玉へども、民思ひ慕ひてわすれずと云へり。此の味を知るべし。忠義の臣は名を後世に残し、天下の人これを愛す。礼に曰く、士四十にして志強く立ち、利害に奪はれず、禍福に怵れずんば、以て出で仕ふべし、と見えたり。士の道は、先づ心を知りて志を定むべし。孟子曰く、志を尚くす。
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『呻吟語』外篇・治道・皆な吾が民なり天下の民は皆な朝廷の民なり、皆な天地の民なり、皆な吾が民なり。
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