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国語 / 晋語九

智宣子將以瑤為後,智果曰:「不如宵也。」宣子曰:「宵也佷。」對曰:「宵之佷在面,瑤之佷在心。心佷敗國,面佷不害。瑤之賢於人者五,其不逮者一也。美鬢長大則賢,射御足力則賢,伎藝畢給則賢,巧文辯惠則賢,彊毅果敢則賢。如是而甚不仁。以其五賢陵人,而以不仁行之,其誰能待之?若果立瑤也,智宗必滅。」弗聽。智果別族于太史為輔氏。及智氏之亡也,唯輔果在。

新字:智宣子将以瑤為後,智果曰:「不如宵也。」宣子曰:「宵也佷。」対曰:「宵之佷在面,瑤之佷在心。心佷敗国,面佷不害。瑤之賢於人者五,其不逮者一也。美鬢長大則賢,射御足力則賢,伎芸畢給則賢,巧文弁恵則賢,彊毅果敢則賢。如是而甚不仁。以其五賢陵人,而以不仁行之,其誰能待之?若果立瑤也,智宗必滅。」弗聴。智果別族于太史為輔氏。及智氏之亡也,唯輔果在。

書き下し

智宣子(ちせんし)将に瑤(よう)を以て後と為さんとす。智果(ちか)曰く、「宵(しょう)に如かざるなり」と。宣子曰く、「宵や佷(こん)なり」と。対えて曰く、「宵の佷は面に在り、瑤の佷は心に在り。心の佷は国を敗り、面の佷は害あらず。瑤の人に賢(まさ)る者は五、其の逮(およ)ばざる者は一なり。美鬢(びびん)長大なるは則ち賢り、射御足力なるは則ち賢り、伎芸畢(ことごと)く給(た)るは則ち賢り、巧文辯恵なるは則ち賢り、彊毅果敢なるは則ち賢る。是くの如くにして甚だ不仁なり。其の五賢を以て人を陵(しの)ぎ、而して不仁を以て之を行わば、其れ誰か能く之を待たん。若し果たして瑤を立てば、智宗必ず滅びん」と。聴かず。智果族を太史に別ちて輔氏(ほし)と為る。智氏の亡ぶるに及ぶや、唯だ輔果のみ在り。

現代語訳

晋の卿、智宣子(荀甲)は、子の瑤を跡継ぎにしようとした。一族の智果が言った。「宵(宣子の庶子)のほうがよろしいでしょう。」宣子は言った。「宵はひねくれ者だ。」智果は答えた。「宵のひねくれは顔に出るだけですが、瑤のひねくれは心の中にあります。心のひねくれは国を滅ぼしますが、顔のひねくれは害にはなりません。瑤が人より優れている点は五つあり、及ばない点は一つです。美しい髪をして背が高い点で優れ、弓術や馬車の扱いに長けて力も十分な点で優れ、技芸をすべて身につけている点で優れ、文辞に巧みで弁が立ち機転がきく点で優れ、強く毅然として決断力がある点で優れています。それでいて、ひどく仁に欠けています。五つの長所で人をしのぎ、それを不仁な心で振るうなら、いったい誰が彼を受け入れられましょう。もし本当に瑤を跡継ぎに立てるなら、智氏の一族は必ず滅びます。」宣子は聞き入れなかった。智果は太史(氏姓をつかさどる官)に申し出て一族から籍を分け、輔氏を名のった。のちに智氏が滅んだとき、生き残ったのは輔果だけだった。

解説

晋の有力な卿智宣子が、才気あふれる子の瑤(のちの智伯)を跡継ぎにしようとしたとき、一族の智果が反対した章で、『資治通鑑』はこの話を巻頭近くに引いている。智果は、瑤は容貌・武芸・技芸・弁舌・果断の五つで人に勝るが、ただ一つ仁を欠くと言う。才が多いほど、それを不仁で振るえば人を踏みつける刃になり、誰も耐えられない。顔に出る強情は害がないが、心の強情は国を滅ぼすという対比も鋭い。宣子は聞かず、智果は太史に願って籍を分け、輔氏となった。韋昭は太史を氏姓をつかさどる官とし、結びの一句に「その人を知るを善みす」と注する。予言どおり智氏は晋陽の戦いで滅び、輔果だけが残った(15.020・15.021)。能力の高さで後継者や幹部を選びたくなるとき、その力を何が動かすのかを見よと教える章である。

この章句が説くこと

国語晋語仁後継智伯

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