国語 / 晋語八
平公說新聲,師曠曰:「公室其將卑乎!君之明兆於衰矣。夫樂以開山川之風也,以耀德於廣遠也。風德以廣之,風山川以遠之,風物以聽之,修詩以詠之,修禮以節之。夫德廣遠而有時節,是以遠服而邇不遷。」
新字:平公説新声,師曠曰:「公室其将卑乎!君之明兆於衰矣。夫楽以開山川之風也,以耀徳於広遠也。風徳以広之,風山川以遠之,風物以聴之,修詩以詠之,修礼以節之。夫徳広遠而有時節,是以遠服而邇不遷。」
書き下し
平公新声(しんせい)を説(よろこ)ぶ。師曠(しこう)曰く、「公室其れ将に卑(ひく)からんとするか。君の明、衰うるに兆せり。夫れ楽は以て山川の風を開くなり、以て徳を広遠に耀かすなり。徳を風して以て之を広め、山川を風して以て之を遠くし、物を風して以て之を聴き、詩を修めて以て之を詠い、礼を修めて以て之を節す。夫れ徳広遠にして時節有り、是を以て遠きは服して邇(ちか)きは遷らず」と。
現代語訳
平公は新しい音楽を好んだ。楽師の師曠は言った。「公室はこれから衰えていくのではないでしょうか。君の明らかさに、衰えの兆しが見えます。そもそも音楽とは、山や川の気を開き通わせるものであり、徳を広く遠くにまで輝かせるものです。徳を音楽に乗せて広め、山川の気を乗せて遠くに届け、万物の気を乗せて民の声を聴き、詩を整えて歌い上げ、礼を整えて節度を与えるのです。徳が広く遠くに及び、しかも時と節度があるので、遠くの者は服従し、近くの者は離れていかないのです。」
解説
晋の平公が新しい音楽を好んだとき、盲目の楽師として名高い師曠が、公室の衰えを予言した章である。ここでいう新声は、礼に基づく古来の雅楽に対して、当時流行した耳に快い新しい調べを指す。師曠は、楽とは山川の気を開き、徳を遠くまで輝かせるものだと定義する。つまり音楽は政治そのものの表現であり、君の好む音が変われば、徳の届き方も変わるという考えである。音楽の好みにすぎないように見えることを、師曠は君の明の衰えの兆しと読んだ。平公の代の晋は、表向きは盟主の地位を保ちながら、卿の諸家が力を伸ばし公室が衰えていった時期にあたる。上に立つ者の好みは、口にしなくても組織の空気と方向を変える。師曠はその兆しを見逃さなかったのである。
この章句が説くこと
国語晋語楽徳師曠
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