国語 / 晋語七
悼公使張老為卿,辭曰:「臣不如魏絳。夫絳之智能治大官,其仁可以利公室不忘,其勇不疚於刑,其學不廢其先人之職。若在卿位,外內必平。且雞丘之會,其官不犯而辭順,不可不賞也。」公五命之,固辭,乃使為司馬。使魏絳佐新軍。
新字:悼公使張老為卿,辞曰:「臣不如魏絳。夫絳之智能治大官,其仁可以利公室不忘,其勇不疚於刑,其学不廃其先人之職。若在卿位,外内必平。且鶏丘之会,其官不犯而辞順,不可不賞也。」公五命之,固辞,乃使為司馬。使魏絳佐新軍。
書き下し
悼公張老をして卿たらしめんとす。辞して曰く、「臣は魏絳に如かず。夫れ絳の智は能く大官を治め、其の仁は以て公室を利して忘れざるべく、其の勇は刑に疚(や)ましからず、其の学は其の先人の職を廃せず。若し卿位に在らば、外内必ず平らかならん。且つ雞丘の会に、其の官犯さずして辞順(したが)えり。賞せざるべからざるなり」と。公之に五たび命ず。固く辞す。乃ち司馬たらしむ。魏絳をして新軍に佐たらしむ。
現代語訳
悼公は張老(晋の大夫)を卿に任じようとした。張老は辞退して言った。「わたしは魏絳に及びません。魏絳の知恵は大きな官職を治めることができ、その仁は公室の利益を図って忘れることがなく、その勇は刑罰を執り行って後ろめたいところがなく、その学問は先祖代々の職分をすたれさせません。もし卿の位にあれば、国の内外は必ず治まるでしょう。そのうえ雞丘の会では、職務において軍令を犯さず、申し開きの言葉も道理にかなっていました。賞さないわけにはいきません。」悼公は五度にわたって命じたが、張老は固く辞退した。そこで悼公は張老を司馬とし、魏絳を新軍の副将とした。
解説
悼公が張老を卿に任じようとしたところ、張老が固辞して魏絳を推した章である。張老が挙げた魏絳の美点は四つで、智は大官を治め、仁は公室の利を忘れず、勇は刑を執って後ろめたさがなく、学は先祖の職をすたれさせない。とりわけ雞丘の会で、悼公の弟揚干の御者を斬りながら、軍令を犯さず申し開きも筋が通っていたことを、賞すべき理由として挙げている。悼公は五たび命じても張老が辞したので、張老を司馬に、魏絳を新軍の佐に就けた。『春秋左氏伝』襄公三年にも、魏絳を新軍の佐とし、張老を中軍司馬としたことが見える。自分に回ってきた昇進を、よりふさわしい同僚に譲れる人がいる組織は強い。そして譲った本人も、しかるべき職で報われている点を見落とすべきではない。
この章句が説くこと
国語晋語推挙譲魏絳
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