導師導古典を学びたいすべての人に

国語 / 晋語七

五年,無終子嘉父使孟樂因魏莊子納虎豹之皮以和諸戎。公曰:「戎、狄無親而好得,不若伐之。」魏絳曰:「勞師於戎,而失諸華,雖有功,猶得獸而失人也,安用之?且夫戎、狄荐處,貴貨而易土。予之貨而獲其土,其利一也;邊鄙耕農不儆,其利二也;戎、狄事晉,四鄰莫不震動,其利三也。君其圖之!」公說,故使魏絳撫諸戎,於是乎遂伯。

新字:五年,無終子嘉父使孟楽因魏荘子納虎豹之皮以和諸戎。公曰:「戎、狄無親而好得,不若伐之。」魏絳曰:「労師於戎,而失諸華,雖有功,猶得獣而失人也,安用之?且夫戎、狄荐処,貴貨而易土。予之貨而獲其土,其利一也;辺鄙耕農不儆,其利二也;戎、狄事晋,四鄰莫不震動,其利三也。君其図之!」公説,故使魏絳撫諸戎,於是乎遂伯。

書き下し

五年、無終子(むしゅうし)嘉父(かほ)、孟楽(もうらく)をして魏荘子に因(よ)りて虎豹の皮を納れ、以て諸戎を和せしめんとす。公曰く、「戎・狄は親無くして得るを好む。之を伐つに若かず」と。魏絳曰く、「師を戎に労して、諸華を失わば、功有りと雖も、猶獣を得て人を失うがごときなり。安(いずく)んぞ之を用いん。且つ夫れ戎・狄は荐(せん)処(しょ)し、貨を貴びて土を易(かろ)んず。之に貨を予えて其の土を獲るは、其の利一なり。辺鄙の耕農儆(いまし)めざるは、其の利二なり。戎・狄晋に事えて、四隣震動せざる莫きは、其の利三なり。君其れ之を図れ」と。公説(よろこ)ぶ。故に魏絳をして諸戎を撫せしむ。是に於いてか遂に伯(は)たり。

現代語訳

悼公の五年、無終(北方の山戎の国)の君嘉父は、家臣の孟楽を遣わし、魏荘子(魏絳)を通じて虎や豹の皮を献上させ、戎の諸部族を晋と和睦させようとした。悼公は言った。「戎や狄は親しみの情がなく、利を得ることばかり好む。討伐したほうがよい。」魏絳は言った。「戎に軍を出して疲れ果て、そのあいだに中原の諸国の心を失えば、たとえ戦功があっても、獣を得て人を失うようなものです。そんなものが何の役に立ちましょう。それに戎や狄は草を追って移り住み、財貨を重んじて土地を軽んじます。彼らに財貨を与えて土地を得られること、これが第一の利です。辺境で田を耕す民が警戒せずにすむこと、これが第二の利です。戎や狄が晋に仕えれば、四方の隣国で恐れおののかない国はないこと、これが第三の利です。君どうかよくお考えください。」悼公は喜び、魏絳に戎の諸部族を慰撫させた。こうして晋はついに覇者となった。

解説

前569年、北方の山戎の国無終が和睦を申し入れてきたとき、討伐を望む悼公を魏絳が諫めた、いわゆる「和戎」の章である。悼公の見方は、戎狄は親しみの情がなく利をむさぼるから討つべきだ、というものだった。魏絳はこれを退け、戎に兵を向けて中原の諸国を失えば「獣を得て人を失う」だけだと言う。そのうえで和睦の利を三つ挙げる。遊牧の民は土地より財貨を重んじるから、財貨と引き換えに土地が得られる。辺境の農民が警戒から解放される。戎狄が晋に仕えれば四隣が畏れる。相手の価値観を読み、それを取引の材料に変える発想である。『春秋左氏伝』襄公四年にも同じ話がある。晋はこの和戎によって背後を固め、覇業に専念できた。力で片づけたくなる相手ほど、相手が何を欲しているかを先に見るべきだという教えとして読める。

この章句が説くこと

国語晋語和戎外交利

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る