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国語 / 晋語七

二月乙酉,公即位。使呂宣子將下軍,曰:「邲之役,呂錡佐智莊子於上軍,獲楚公子穀臣與連尹襄老,以免子羽。鄢之役,親射楚王而敗楚師,以定晉國而無後,其子孫不可不崇也。」使彘恭子將新軍,曰:「武子之季、文子之母弟也。武子宣法以定晉國,至於今是用。文子勤身以定諸侯,至於今是賴。夫二子之德,其可忘乎!」故以彘季屏其宗。使令狐文子佐之,曰:「昔克潞之役,秦來圖敗晉功,魏顆以其身卻退秦師于輔氏,親止杜回,其勳銘於景鍾。至于今不育,其子不可不興也。」 君知士貞子之帥志博聞而宣惠於教也,使為太傅。知右行辛之能以數宣物定功也,使為元司空。知欒糾之能御以和于政也,使為戎御。知荀賓之有力而不暴也,使為戎右。 欒伯請公族大夫,公曰:「荀家惇惠,荀會文敏,黶也果敢,無忌鎮靜,使茲四人者為之。夫膏粱之性難正也,故使惇惠者教之,使文敏者導之,使果敢者諗之,使鎮靜者修之。惇惠者教之,則遍而不倦;文敏者導之,則婉而入;果敢者諗之,則過不隱;鎮靜者修之,則壹。使茲四人者為公族大夫。 公知祁奚之果而不淫也,使為元尉。知羊舌職之聰敏肅給也,使佐之。知魏絳之勇而不亂也,使為元司馬。知張老之智而不詐也,使為元候。知鐸遏寇之恭敬而信彊也,使為輿尉。知籍偃之惇帥舊職而恭給也,使為輿司馬。知程鄭端而不淫,且好諫而不隱也,使為贊僕。

新字:二月乙酉,公即位。使呂宣子将下軍,曰:「邲之役,呂錡佐智荘子於上軍,獲楚公子穀臣与連尹襄老,以免子羽。鄢之役,親射楚王而敗楚師,以定晋国而無後,其子孫不可不崇也。」使彘恭子将新軍,曰:「武子之季、文子之母弟也。武子宣法以定晋国,至於今是用。文子勤身以定諸侯,至於今是頼。夫二子之徳,其可忘乎!」故以彘季屏其宗。使令狐文子佐之,曰:「昔克潞之役,秦来図敗晋功,魏顆以其身却退秦師于輔氏,親止杜回,其勲銘於景鍾。至于今不育,其子不可不興也。」 君知士貞子之帥志博聞而宣恵於教也,使為太傅。知右行辛之能以数宣物定功也,使為元司空。知欒糾之能御以和于政也,使為戎御。知荀賓之有力而不暴也,使為戎右。 欒伯請公族大夫,公曰:「荀家惇恵,荀会文敏,黶也果敢,無忌鎮静,使茲四人者為之。夫膏粱之性難正也,故使惇恵者教之,使文敏者導之,使果敢者諗之,使鎮静者修之。惇恵者教之,則遍而不倦;文敏者導之,則婉而入;果敢者諗之,則過不隠;鎮静者修之,則壱。使茲四人者為公族大夫。 公知祁奚之果而不淫也,使為元尉。知羊舌職之聰敏粛給也,使佐之。知魏絳之勇而不乱也,使為元司馬。知張老之智而不詐也,使為元候。知鐸遏寇之恭敬而信彊也,使為輿尉。知籍偃之惇帥旧職而恭給也,使為輿司馬。知程鄭端而不淫,且好諫而不隠也,使為賛僕。

書き下し

二月乙酉(いつゆう)、公即位す。呂宣子(りょせんし)をして下軍に将たらしめて、曰く、「邲(ひつ)の役に、呂錡(りょき)智荘子(ちそうし)を上軍に佐(たす)け、楚の公子穀臣(こくしん)と連尹(れんいん)襄老(じょうろう)とを獲て、以て子羽(しう)を免れしむ。鄢(えん)の役に、親(みずか)ら楚王を射て楚の師を敗り、以て晋国を定めて後無し。其の子孫崇(たっと)ばざるべからざるなり」と。彘恭子をして新軍に将たらしめて、曰く、「武子の季、文子の母弟なり。武子法を宣べて以て晋国を定め、今に至るまで是れ用う。文子身を勤めて以て諸侯を定め、今に至るまで是れ頼る。夫れ二子の徳、其れ忘るべけんや」と。故に彘季(ていき)を以て其の宗を屏(まも)らしむ。令狐文子(れいこぶんし)をして之を佐けしめて、曰く、「昔潞(ろ)に克つの役に、秦来たりて晋の功を敗らんことを図る。魏顆(ぎか)其の身を以て秦の師を輔氏(ほし)に卻(しりぞ)け退け、親ら杜回(とかい)を止む。其の勲景鍾(けいしょう)に銘せらる。今に至るまで育(そだ)たず、其の子興さざるべからざるなり」と。 君士貞子(していし)の志を帥(したが)え聞を博くして教えに宣恵なるを知るや、太傅たらしむ。右行辛(うこうしん)の能く数を以て物を宣べ功を定むるを知るや、元司空たらしむ。欒糾(らんきゅう)の能く御して以て政に和するを知るや、戎御(じゅうぎょ)たらしむ。荀賓(じゅんひん)の力有りて暴ならざるを知るや、戎右(じゅうゆう)たらしむ。 欒伯(らんぱく)公族大夫を請う。公曰く、「荀家(じゅんか)は惇恵(とんけい)、荀会(じゅんかい)は文敏、黶(えん)や果敢、無忌(むき)は鎮静なり。茲(こ)の四人の者をして之を為さしめん。夫れ膏粱(こうりょう)の性は正し難し。故に惇恵なる者をして之を教えしめ、文敏なる者をして之を導かしめ、果敢なる者をして之を諗(いさ)めしめ、鎮静なる者をして之を修めしむ。惇恵なる者之を教うれば、則ち遍くして倦まず。文敏なる者之を導けば、則ち婉にして入る。果敢なる者之を諗むれば、則ち過ち隠れず。鎮静なる者之を修むれば、則ち壹(いつ)なり」と。茲の四人の者をして公族大夫たらしむ。 公祁奚(きけい)の果にして淫せざるを知るや、元尉たらしむ。羊舌職(ようぜつしょく)の聡敏にして粛給なるを知るや、之を佐けしむ。魏絳(ぎこう)の勇にして乱れざるを知るや、元司馬たらしむ。張老(ちょうろう)の智にして詐らざるを知るや、元候たらしむ。鐸遏寇(たくあつこう)の恭敬にして信彊なるを知るや、輿尉(よい)たらしむ。籍偃(せきえん)の惇にして旧職に帥(したが)い恭給なるを知るや、輿司馬たらしむ。程鄭(ていてい)の端にして淫せず、且つ諫を好みて隠さざるを知るや、賛僕(さんぼく)たらしむ。

現代語訳

二月乙酉の日、悼公は即位した。呂宣子(呂相、呂錡の子)を下軍の将に任じて言った。「邲の戦い(前597年、晋が楚に敗れた戦)で、呂錡は上軍の智荘子(荀首)を補佐し、楚の公子穀臣と連尹(楚の官名)の襄老を捕らえて、それによって子羽(荀首の子の智罃)を取り戻させた。鄢陵の戦い(前575年)では、みずから楚王を射て楚軍を打ち破り、晋の国を安定させたが、そのまま戦死して後を立てなかった。その子孫は重んじないわけにはいかない。」 続いて彘恭子(士魴)を新軍の将に任じて言った。「彼は武子(士会)の末子であり、文子(士燮)の同母の弟である。武子は法を明らかにして晋の国を定め、今に至るまでそれが用いられている。文子は身を労して諸侯をまとめ、今に至るまでそれを頼りにしている。この二人の徳を忘れてよいものか。」こうして彘季(士魴)にその一族を守らせた。令狐文子(魏頡、魏顆の子)をその補佐に任じて言った。「昔、潞(赤狄の国)に勝った戦いのとき、秦が攻めてきて晋の戦功をくつがえそうとした。魏顆は身をもって秦軍を輔氏で退け、みずから秦の勇士杜回を捕らえた。その勲功は景公の鐘に銘として刻まれている。それなのに今に至るまで一族は取り立てられていない。その子を興さないわけにはいかない。」 悼公は、士貞子(士渥濁)が志を正しく保ち、見聞が広く、教えをよく行き渡らせることを知って、太傅(君の師傅)とした。右行辛が計数によって物資を明らかにし功績を定めることができると知って、元司空(土木をつかさどる長官)とした。欒糾が馬車をうまく御し、政事とも調和できると知って、君の戦車の御者とした。荀賓が力がありながら乱暴でないと知って、君の戦車の右(護衛の勇士)とした。 欒伯(欒武子)が公族大夫(公族と卿の子弟を教え導く官)の人選を願い出ると、悼公は言った。「荀家は手厚く恵み深く、荀会は教養があって敏く、黶(欒黶)は果断で勇敢、無忌(韓無忌)は落ち着いている。この四人に任せよう。そもそも贅沢に育った者の性質は正しにくい。だから手厚く恵み深い者に教えさせ、教養があって敏い者に導かせ、果断な者に諫めさせ、落ち着いた者に身を修めさせる。恵み深い者が教えれば、行き届いて飽きさせない。敏い者が導けば、柔らかに心に入る。果断な者が諫めれば、過ちが隠されない。落ち着いた者が修めさせれば、心が一つにまとまる。」こうしてこの四人を公族大夫とした。 悼公は、祁奚が果断でありながら度を越さないと知って、元尉(中軍の尉)とした。羊舌職が聡明で敏く、つつしんで事に応じられると知って、その補佐とした。魏絳が勇敢でありながら乱れないと知って、元司馬(軍法をつかさどる長)とした。張老が知恵がありながら人を欺かないと知って、元候(斥候の長)とした。鐸遏寇がつつしみ深く、誠実で力強いと知って、輿尉(上軍の尉)とした。籍偃が篤実で旧来の職分を守り、つつしんで事に応じると知って、輿司馬(上軍の司馬)とした。程鄭が端正で度を越さず、しかも諫言を好んで隠し立てしないと知って、賛僕(君の車を助ける側近の官)とした。

解説

即位した悼公が、晋の軍と宮廷の要職を一気に定めた人事の章である。まず目を引くのは、功臣の子孫を取り立てる理由をいちいち言葉にしていることだ。呂錡は邲の戦いで捕虜を得て味方の子を取り戻し、鄢陵の戦いで楚王を射たが後継ぎがない。魏顆は輔氏で秦の勇士杜回を捕らえ、その勲は景公の鐘に刻まれたのに一族が埋もれている。功を忘れないという宣言である。次に、人を役に当てる言い方がすべて「何々だが何々ではない」という形をとる。勇にして乱れず、智にして詐らず、果にして淫せず。長所だけでなく、その長所が行き過ぎない歯止めを見て任じたのである。公族大夫四人の組み合わせも、恵み深さ・敏さ・果断・落ち着きを役割として分けている。人を選ぶとき、その人の長所がどこで暴走しうるかまで見ているかを問う章である。

この章句が説くこと

国語晋語人事任用賢

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