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国語 / 晋語六

長魚矯既殺三郤,乃脅欒、中行而言於公曰:「不殺此二子者,憂必及君。」公曰:「一旦而尸三卿,不可益也。」對曰:「臣聞之,亂在內為宄,在外為姦,御宄以德,禦姦以刑。今治政而內亂,不可謂德。除鯁而避彊,不可謂刑。德刑不立,姦宄並至,臣脆弱,不能忍俟也。」乃奔狄。三月,厲公弒。

新字:長魚矯既殺三郤,乃脅欒、中行而言於公曰:「不殺此二子者,憂必及君。」公曰:「一旦而尸三卿,不可益也。」対曰:「臣聞之,乱在内為宄,在外為姦,御宄以徳,禦姦以刑。今治政而内乱,不可謂徳。除鯁而避彊,不可謂刑。徳刑不立,姦宄並至,臣脆弱,不能忍俟也。」乃奔狄。三月,厲公弒。

書き下し

長魚矯(ちょうぎょきょう)既に三郤を殺し、乃ち欒・中行を脅かして、公に言いて曰く、「此の二子を殺さずんば、憂い必ず君に及ばん」と。公曰く、「一旦にして三卿を尸(さら)す、益す可からず」と。対えて曰く、「臣之を聞く、乱の内に在るを宄(き)と為し、外に在るを姦と為す。宄を御するに徳を以てし、姦を禦ぐに刑を以てす。今政を治めて内乱る、徳と謂う可からず。鯁(こう)を除きて彊(きょう)を避く、刑と謂う可からず。徳刑立たずんば、姦宄並び至らん。臣は脆弱にして、忍びて俟つ能わざるなり」と。乃ち狄に奔る。三月にして、厲公弑せらる。

現代語訳

長魚矯(厲公の寵臣)は三郤を殺したのち、そのまま欒書と中行偃を兵で脅して捕らえ、厲公に言った。「この二人を殺さなければ、憂いは必ず君に及びます。」公は言った。「一朝にして三人の卿の屍をさらしたのだ。これ以上増やすことはできない。」長魚矯は答えた。「わたくしはこう聞いています。乱が内から起こるのを宄といい、外から起こるのを姦という。宄は徳で抑え、姦は刑で防ぐ、と。いま国政を執りながら内が乱れているのは、徳とは言えません。害をなす者を除きながら強い者を避けるのは、刑とは言えません。徳も刑も立たなければ、姦も宄もそろって押し寄せるでしょう。わたくしは弱い身ですから、じっと災いを待つことに耐えられません。」そして狄に逃れた。三か月後、厲公は弑された。

解説

三郤を殺した直後、厲公の寵臣長魚矯が、残る実力者の欒書と中行偃をも殺すよう迫った場面である。厲公は、一度に三人の卿を殺したのだからこれ以上は増やせないと、二人を赦して位に戻した。長魚矯の論は冷徹である。内から起こる乱は徳で抑え、外からの乱は刑で防ぐ。君が内を乱した以上もはや徳ではなく、害をなす者を除きながら最も強い二人を見逃すのは刑とも言えない。どちらも立たない以上、災いは必ず来る、と。そして自分は待っていられないと狄へ逃げた。韋昭注によれば、魯の成公十七年十二月に長魚矯が奔り、閏月に欒・中行が胥童を殺し、翌年正月に厲公は弑された。『春秋左氏伝』成公十七年にも同じ問答がある。中途半端な粛清は、残った者に恐怖と動機だけを与える。厳しい決断をするなら筋を通せという教訓として読める。

この章句が説くこと

国語晋語徳刑決断

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