論語 / 憲問篇
南宮适問於孔子曰:「羿善射,奡盪舟,俱不得其死然。禹稷躬稼而有天下。」夫子不答。南宮适出,子曰:「君子哉若人!尙德哉若人!」
新字:南宮适問於孔子曰:「羿善射,奡盪舟,倶不得其死然。禹稷躬稼而有天下。」夫子不答。南宮适出,子曰:「君子哉若人!尚徳哉若人!」
書き下し
南宮适、孔子に問いて曰く、「羿は射を善くし、奡は舟を盪かす。倶に其の死を得ざりき。禹・稷は躬ら稼して天下を有てり。」夫子答えず。南宮适出づ。子曰く、「君子なるかな若き人。徳を尚ぶかな若き人。」
現代語訳
南宮适が孔子に尋ねて言った。「羿は弓の名手であり、奡は舟を陸で押すほどの力持ちでしたが、二人とも尋常な死に方をしませんでした。禹と稷は自ら田を耕して、天下を保ちました。」先生は答えられなかった。南宮适が退出すると、先生はおっしゃった。「君子だな、あの人は。徳を尊ぶな、あの人は。」
解説
南宮适は歴史上の四人を並べて、力で名を成した者は非業の死を遂げ、地道に働いた者が天下を得たと述べた。答えではなく、確認を求めるような問いである。孔子はその場では答えず、退出後に褒めた。目の前で褒めなかったのは、答えが明白すぎて肯定すれば軽くなるからだろう。褒め方のタイミングとして興味深い。もう一つの読みどころは、南宮适の論法である。抽象的に力と徳を比べるのではなく、四人の具体的な結末を並べた。結論は述べず、事実の配置だけで示している。人を説得するとき、結論を言わずに事例を並べるほうが強いことがある。聞いた側が自分で結論に至るからだ。孔子が答えなかったのは、答える必要が無かったということでもある。
この章句が説くこと
学び徳力謙虚さ南宮适自己認識
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