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国語 / 晋語五

宋人弒昭公,趙宣子請師於靈公以伐宋,公曰:「非晉國之急也。」對曰:「大者天地,其次君臣,所以為明訓也。今宋人弒其君,是反天地而逆民則也,天必誅焉。晉為盟主,而不修天罰,將懼及焉。」公許之。乃發令于太廟,召軍吏而戒樂正,令三軍之鍾鼓必備。趙同曰:「國有大役,不鎮撫民而備鍾鼓,何也?」宣子曰:「大罪伐之,小罪憚之。襲侵之事,陵也。是故伐備鍾鼓,聲其罪也;戰以錞于、丁寧,儆其民也。襲侵密聲,為蹔事也。今宋人弒其君,罪莫大焉!明聲之,猶恐其不聞也。吾備鍾鼓,為君故也。」乃使旁告於諸侯,治兵振旅,鳴鍾鼓,以至于宋。

新字:宋人弒昭公,趙宣子請師於霊公以伐宋,公曰:「非晋国之急也。」対曰:「大者天地,其次君臣,所以為明訓也。今宋人弒其君,是反天地而逆民則也,天必誅焉。晋為盟主,而不修天罰,将懼及焉。」公許之。乃発令于太廟,召軍吏而戒楽正,令三軍之鍾鼓必備。趙同曰:「国有大役,不鎮撫民而備鍾鼓,何也?」宣子曰:「大罪伐之,小罪憚之。襲侵之事,陵也。是故伐備鍾鼓,声其罪也;戦以錞于、丁寧,儆其民也。襲侵密声,為蹔事也。今宋人弒其君,罪莫大焉!明声之,猶恐其不聞也。吾備鍾鼓,為君故也。」乃使旁告於諸侯,治兵振旅,鳴鍾鼓,以至于宋。

書き下し

宋人昭公を弑す。趙宣子師を霊公に請いて以て宋を伐たんとす。公曰く、「晋国の急に非ざるなり」と。対えて曰く、「大なる者は天地、其の次は君臣、明訓と為す所以なり。今宋人其の君を弑す、是れ天地に反して民の則に逆らうなり。天必ず焉(これ)を誅せん。晋は盟主為り、而も天罰を修めずんば、将に及ばんことを懼る」と。公之を許す。乃ち令を太廟に発し、軍吏を召して楽正を戒め、三軍の鍾鼓をして必ず備えしむ。趙同(ちょうどう)曰く、「国に大役有り、民を鎮撫せずして鍾鼓を備うるは、何ぞや」と。宣子曰く、「大罪は之を伐ち、小罪は之を憚(おそ)れしむ。襲侵の事は陵(しの)ぐなり。是の故に伐つには鍾鼓を備え、其の罪を声(な)らすなり。戦うには錞于(じゅんう)・丁寧(ていねい)を以てし、其の民を儆(いまし)むるなり。襲侵は声を密にす、蹔(にわか)の事を為すなり。今宋人其の君を弑す、罪焉より大なるは莫し。明らかに之を声らすも、猶お其の聞こえざるを恐る。吾鍾鼓を備うるは、君の為の故なり」と。乃ち旁(あまね)く諸侯に告げしめ、兵を治め旅を振るい、鍾鼓を鳴らして、以て宋に至る。

現代語訳

宋の人々が昭公を弑した。趙宣子は霊公に出兵を願い出て宋を討とうとした。公は言った。「晋にとって急を要することではない。」宣子は答えた。「大いなるものは天と地であり、その次が君と臣です。これが明らかな教えとされるゆえんです。いま宋の人々がその君を弑したのは、天地に背き、民の守るべき法に逆らうことです。天は必ずこれを罰するでしょう。晋は諸侯の盟主でありながら、天に代わって罰を行わなければ、その災いがこちらに及ぶことを恐れます。」公はこれを許した。そこで太廟(君の祖廟)で命令を発し、軍吏を召して、楽官の長に命じ、三軍の鐘と太鼓を必ず備えさせた。趙同(趙盾の弟)が言った。「国に大きな軍役があるときに、民をなだめ落ち着かせもせずに鐘や太鼓を備えるのは、なぜですか。」宣子は言った。「大きな罪は正面から討ち、小さな罪は恐れさせるにとどめる。不意打ちや侵攻は、大が小をしのぐやり方だ。だから正式に討つときは鐘鼓を備えて、相手の罪を鳴らして天下に知らせる。戦うときには錞于(太鼓と合わせて鳴らす銅の楽器)や丁寧(鉦)を用いて、自軍の民を戒める。不意打ちや侵攻は音を潜めて、にわかに相手の備えのない隙を突く。いま宋の人々はその君を弑した。これより大きな罪はない。はっきり鳴らしても、なお聞こえないのではと恐れるほどだ。わたしが鐘鼓を備えるのは、君というものの道を明らかにするためである。」そこで広く諸侯に告げさせ、兵を整え軍を奮い立たせ、鐘と太鼓を鳴らしながら宋に至った。

解説

魯の文公十六年(前611)、宋で公子鮑が兄の昭公を殺して即位した。晋の執政趙盾は、宋は晋の急務ではないと渋る霊公を説き、翌年、宋に兵を出した。論点は二つある。第一に、君臣の秩序は天地に次ぐ大本であり、盟主たる晋がこれを罰しなければ天の罰がかえって晋に及ぶという、覇者の責任論である。第二に、なぜ鐘鼓を鳴らすのかという問いへの答えで、趙盾は戦い方を三つに分ける。大罪は鐘鼓を備えて堂々と罪を鳴らして討ち、戦闘では錞于や鉦で自軍を戒め、不意打ちや侵攻は音を潜める。討伐の大義は、天下に知らせてこそ意味があるというのである。もっとも『春秋左氏伝』文公十七年によれば、晋と諸侯の軍は宋に至ったものの、結局は文公の即位を認めて引き揚げた。大義は、声の大きさだけでなく、その後の始末まで問われるのである。

この章句が説くこと

国語晋語大義君臣討伐

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