国語 / 晋語四
晉饑,公問於箕鄭曰:「救饑何以?」對曰:「信。」公曰:「安信?」對曰:「信於君心,信於名,信於令,信於事。」公曰:「然則若何?」對曰:「信於君心,則美惡不踰。信於名,則上下不干。信於令,則時無廢功。信於事,則民從事有業。於是乎民知君心,貧而不懼,藏出如入,何匱之有?」公使為箕。及清原之蒐,使佐新上軍。
新字:晋饑,公問於箕鄭曰:「救饑何以?」対曰:「信。」公曰:「安信?」対曰:「信於君心,信於名,信於令,信於事。」公曰:「然則若何?」対曰:「信於君心,則美悪不踰。信於名,則上下不干。信於令,則時無廃功。信於事,則民従事有業。於是乎民知君心,貧而不懼,蔵出如入,何匱之有?」公使為箕。及清原之蒐,使佐新上軍。
書き下し
晋饑(う)う。公箕鄭(きてい)に問いて曰く、「饑を救うこと何を以てせん」と。対えて曰く、「信なり」と。公曰く、「安(いずく)にか信あらん」と。対えて曰く、「君心に信あり、名に信あり、令に信あり、事に信あり」と。公曰く、「然らば則ち若何(いかん)」と。対えて曰く、「君心に信あれば、則ち美悪踰(こ)えず。名に信あれば、則ち上下干(おか)さず。令に信あれば、則ち時に廃功無し。事に信あれば、則ち民事に従いて業有り。是に於てか民君の心を知り、貧しけれども懼れず、蔵出づること入るが如し、何の匱(とぼ)しきことか之有らん」と。公箕を為(おさ)めしむ。清原の蒐(しゅう)に及び、新上軍に佐たらしむ。
現代語訳
晋が飢饉に見舞われた。公は箕鄭(晋の大夫)に尋ねた。「飢饉を救うには、どうすればよいか。」箕鄭は答えた。「信です。」公は言った。「どこに信を置くのか。」箕鄭は答えた。「君の心に信を置き、名分に信を置き、命令に信を置き、事業に信を置くのです。」公は言った。「そうすれば、どうなるのか。」箕鄭は答えた。「君の心に信があれば、善いことと悪いことが入り乱れることはありません。名分に信があれば、上の者と下の者が互いの領分を侵すことはありません。命令に信があれば、農事の時を奪われることがなく、仕事がむだになりません。事業に信があれば、民はそれぞれの仕事に従って順序よく励みます。こうなれば、民は君の心を知り、貧しくても恐れることはありません。国の蔵から財を出して救うのも、自分の家にしまうのと同じように安心して受け入れます。どうして乏しくなることがありましょう。」公は箕鄭を箕の邑の大夫とした。清原での大閲兵のときには、新上軍の副将に任じた。
解説
この章句が説くこと
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『呻吟語』内篇・問學・第一に信を體するを要す我は我を信じ得過ぐるも、人は未だ必ずしも我を信じ得過ぎず。故に君子は嫌を避く。若し正大光明の心を以てすること青天白日の如く、又た至誠惻怛の意を以てすること火の熱く水の寒きが如くんば、何の嫌か避く可けん。故に君子の學問は第一に信を體するを要す。只だ信じ了はらば、天下に些子の事無し。
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『学問のすゝめ』十五編・事物を疑いて取捨を断ずること・信の世界に偽詐多く疑いの世界に真理多し信の世界に偽詐多く、疑いの世界に真理多し。試みに見よ、世間の愚民、人の言を信じ、人の書を信じ、小説を信じ、風聞を信じ、神仏を信じ、卜筮を信じ、父母の大病に按摩の説を信じて草根木皮を用い、娘の縁談に家相見の指図を信じて良夫を失い、熱病に医師を招かずして念仏を申すは阿弥陀如来を信ずるがためなり。三七日の断食に落命するは不動明王を信ずるがゆえなり。この人民の仲間に行なわるる真理の多寡を問わば、これに答えて多しと言うべからず。真理少なければ偽詐多からざるを得ず。けだしこの人民は事物を信ずといえども、その信は偽を信ずる者なり。ゆえにいわく、「信の世界に偽詐多し」と。
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