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十善法語 / 巻第十一・不邪見戒之中

總シテ心ノアル處ハ形ノアル處。形ノ生スル處ニ其心生スルシヤ。此女人自ノ眉目鼻口ノソナヘニ自執着セシ故。一息截斷ノ時。其着セル心還テ己カ面上ニ生シ。蟲ト爲テ暫モ離レ得ヌシヤ。摩訶羅ト云ハ梵語デ。此ニハ老ナリ愚ナリト翻スル。愚人ノ年ヲ重ネタル者ノ名シヤ。看ヨ。正法ハ智愚ヲ擇ハヌ。唯信アル處ニ此緣起實相ハ顯ルルシヤ。今日ノ者モ純一ニ心ヲ寄セハ。假令摩訶羅ナリトモ。甚深ノ法ニ通達スヘキシヤ。

新字:総シテ心ノアル処ハ形ノアル処。形ノ生スル処ニ其心生スルシヤ。此女人自ノ眉目鼻口ノソナヘニ自執着セシ故。一息截断ノ時。其着セル心還テ己カ面上ニ生シ。虫ト為テ暫モ離レ得ヌシヤ。摩訶羅ト云ハ梵語デ。此ニハ老ナリ愚ナリト翻スル。愚人ノ年ヲ重ネタル者ノ名シヤ。看ヨ。正法ハ智愚ヲ択ハヌ。唯信アル処ニ此縁起実相ハ顕ルルシヤ。今日ノ者モ純一ニ心ヲ寄セハ。仮令摩訶羅ナリトモ。甚深ノ法ニ通達スヘキシヤ。

書き下し

総シテ心ノアル処ハ形ノアル処。形ノ生スル処ニ其心生スルシヤ。此女人自ノ眉目鼻口ノソナヘニ自執着セシ故。一息截断ノ時。其着セル心還テ己カ面上ニ生シ。虫ト為テ暫モ離レ得ヌシヤ。摩訶羅ト云ハ梵語デ。此ニハ老ナリ愚ナリト翻スル。愚人ノ年ヲ重ネタル者ノ名シヤ。看ヨ。正法ハ智愚ヲ択ハヌ。唯信アル処ニ此縁起実相ハ顕ルルシヤ。今日ノ者モ純一ニ心ヲ寄セハ。仮令摩訶羅ナリトモ。甚深ノ法ニ通達スヘキシヤ。

現代語訳

総じて、心のある所が形のある所であり、形の生じる所にその心が生じるのである。この女は自分の眉目や鼻や口の整いにみずから執着したので、息が絶えた時、その執着した心がかえって自分の顔の上に生じ、虫となって、しばらくも離れることができないのである。摩訶羅というのは梵語で、ここでは老とも愚とも訳す。愚かな人で年を重ねた者の名である。見なさい。正法は智者と愚者を選ばない。ただ信のある所に、この縁起の実相は現れるのである。今日の者も、ひたすらに心を寄せれば、たとえ摩訶羅であっても、甚だ深い法に通達するはずである。

解説

前段の説話の意味を尊者が解き明かす段である。心の向かう所に形が生じ、形の生じる所に心が生じるから、自分の顔に執着した女はその顔に虫として生まれ、離れられないのだという。一方、摩訶羅という名は梵語で老いた愚か者を意味するが、その彼が悟りに至ったことから、尊者は正法は賢愚を選ばず、ただ信のある所に真実が現れると説く。能力の高低より、一つのことにひたすら心を寄せられるかどうかが道を分けるという教えは、学びや仕事に自信を持てない人への励ましとして読める。

この章句が説くこと

執着縁起正法一心

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