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国語 / 晋語四

二年春,公以二軍下,次於陽樊。右師取昭叔于溫,殺之于隰城。左師迎王于鄭。王入于成周,遂定之于郟。王饗醴,命公胙侑。公請隧,弗許。曰:「王章也,不可以二王,無若政何。」賜公南陽陽樊、溫、原、州、陘、絺、組、攢茅之田。陽人不服,公圍之,將殘其民,倉葛呼曰:「君補王闕,以順禮也。陽人未狎君德,而未敢承命。君將殘之,無乃非禮乎!陽人有夏、商之嗣典,有周室之師旅,樊仲之官守焉,其非官守,則皆王之父兄甥舅也。君定王室而殘其姻族,民將焉放?敢私布於吏,唯君圖之!」公曰:「是君子之言也。」迺出陽人。

新字:二年春,公以二軍下,次於陽樊。右師取昭叔于温,殺之于隰城。左師迎王于鄭。王入于成周,遂定之于郟。王饗醴,命公胙侑。公請隧,弗許。曰:「王章也,不可以二王,無若政何。」賜公南陽陽樊、温、原、州、陘、絺、組、攢茅之田。陽人不服,公囲之,将残其民,倉葛呼曰:「君補王闕,以順礼也。陽人未狎君徳,而未敢承命。君将残之,無乃非礼乎!陽人有夏、商之嗣典,有周室之師旅,樊仲之官守焉,其非官守,則皆王之父兄甥舅也。君定王室而残其姻族,民将焉放?敢私布於吏,唯君図之!」公曰:「是君子之言也。」迺出陽人。

書き下し

二年春、公二軍を以て下り、陽樊(ようはん)に次(やど)る。右師昭叔を温に取り、之を隰城(しゅうじょう)に殺す。左師王を鄭に迎う。王成周に入り、遂に之を郟(こう)に定む。王醴(れい)を饗し、公に胙侑(そゆう)を命ず。公隧(すい)を請う、許さず。曰く、「王の章なり、以て二王あるべからず、政を若何(いかん)ともする無し」と。公に南陽の陽樊・温・原・州・陘(けい)・絺(ち)・組・攢茅(さんぼう)の田を賜う。陽人服せず、公之を囲み、将に其の民を残(そこな)わんとす。倉葛(そうかつ)呼びて曰く、「君王の闕(けつ)を補うは、以て礼に順うなり。陽人未だ君の徳に狎(な)れず、而して未だ敢えて命を承けず。君将に之を残わんとす、乃ち礼に非ざること無からんや。陽人には夏・商の嗣典有り、周室の師旅有り、樊仲(はんちゅう)の官守なり。其の官守に非ざれば、則ち皆王の父兄甥舅なり。君王室を定めて其の姻族を残わば、民将に焉にか放(よ)らん。敢えて私に吏に布(の)ぶ、唯君之を図れ」と。公曰く、「是れ君子の言なり」と。迺(すなわ)ち陽人を出だす。

現代語訳

文公二年の春、公は二軍を率いて南へ下り、陽樊に宿営した。右軍は昭叔を温で捕らえ、隰城で殺した。左軍は襄王を鄭から迎えた。王は成周に入り、そのまま王城の郟に落ち着いた。王は甘酒の宴で公をもてなし、礼服を加え、祭肉と宴後の贈り物を賜った。公は隧(王の特権とされる礼)を許してほしいと願ったが、王は許さずに言った。「それは王であることのしるしである。天下に王が二人いてはならない。そうなれば政治が成り立たぬ。」そして公に、南陽の陽樊・温・原・州・陘・絺・組・攢茅の地を与えた。ところが陽樊の人々は服さなかった。公は町を囲み、住民を痛めつけようとした。すると倉葛(陽樊の人)が大声で呼ばわった。「君が王の欠けたところを補われたのは、臣下としての礼に従われたからです。陽樊の者はまだ君の徳に慣れ親しんでいないので、すぐには命を受けられずにいるのです。それなのに君が住民を痛めつけようとなさるのは、礼に外れることではありませんか。陽樊には夏や殷から受け継いだ典籍を守る者がおり、周王室の軍に仕える者がおり、ここは樊仲(周の宣王の臣仲山甫)が官として守った土地です。官にある者でなければ、みな王の父兄や甥・舅にあたる者たちです。君が王室を安定させながら、その姻戚の者たちを痛めつけるなら、民は何を頼りにすればよいのでしょう。あえて役人の方々に私の思いを申し述べます。どうか君よ、お考えください。」公は言った。「これは君子の言葉だ。」そこで陽樊の人々を町から出してやった。

解説

文公が軍を率いて太叔帯の乱を平定し、襄王を都に戻した場面である。王は功に報いて礼服や祭肉を賜ったが、文公が「隧」を願うと、王のしるしだとして許さず、代わりに南陽の地を与えた。隧について、韋昭注は王の葬礼とする旧説を挙げたうえで、自らは『周語』に見える王畿の六隧の地だと解している。いずれにせよ、王権の象徴を求めた文公に、王は土地は与えても名分は譲らなかった。与えられた陽樊が服さないため、文公は住民を痛めつけようとしたが、倉葛は、王を助けたのは礼に従ったからなのに、王の親族が住む町を痛めつけるのは礼に背くと訴えた。文公は「君子の言だ」と認め、住民を立ち退かせるにとどめた。『春秋左氏伝』僖公二十五年にも、倉葛の言葉と住民を出した話が見える。勝者の立場に立ったときこそ、自分が掲げた大義に照らして行いを改める度量が試される。

この章句が説くこと

国語晋語礼名分王室

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