国語 / 晋語三
惠公既即位,乃背秦賂。使丕鄭聘於秦,且謝之。而殺里克,曰:「子殺二君與一大夫,為子君者,不亦難乎?」 丕鄭如秦謝緩賂,乃謂穆公曰:「君厚問以召呂甥、郤稱、冀芮而止之,以師奉公子重耳,臣之屬內作,晉君必出。」穆公使泠至報問,且召三大夫。鄭也與客將行事,冀芮曰:「鄭之使薄而報厚,其言我於秦也,必使誘我。弗殺,必作難。」是故殺丕鄭及七輿大夫:共華、賈華、叔堅、騅歂、纍虎、特宮、山祁,皆里、丕之黨也。丕豹出奔秦。 丕鄭之自秦反也,聞里克死,見共華曰:「可以入乎?」共華曰:「二三子皆在而不及,子使於秦,可哉!」丕鄭入,君殺之。共賜謂共華曰:「子行乎?其及也!」共華曰:「夫子之入,吾謀也,將待也。」賜曰:「孰知之?」共華曰:「不可。知而背之不信,謀而困人不智,困而不死無勇。任大惡三,行將安入?子其行矣,我姑待死。」 丕鄭之子曰豹,出奔秦,謂穆公曰:「晉君大失其眾,背君賂,殺里克,而忌處者,眾固不說。今又殺臣之父及七輿大夫,此其黨半國矣。君若伐之,其君必出。」穆公曰:「失眾安能殺人?且夫禍唯無斃,足者不處,處者不足,勝敗若化。以禍為違,孰能出君?爾俟我!」
新字:恵公既即位,乃背秦賂。使丕鄭聘於秦,且謝之。而殺里克,曰:「子殺二君与一大夫,為子君者,不亦難乎?」 丕鄭如秦謝緩賂,乃謂穆公曰:「君厚問以召呂甥、郤称、冀芮而止之,以師奉公子重耳,臣之属内作,晋君必出。」穆公使泠至報問,且召三大夫。鄭也与客将行事,冀芮曰:「鄭之使薄而報厚,其言我於秦也,必使誘我。弗殺,必作難。」是故殺丕鄭及七輿大夫:共華、賈華、叔堅、騅歂、纍虎、特宮、山祁,皆里、丕之党也。丕豹出奔秦。 丕鄭之自秦反也,聞里克死,見共華曰:「可以入乎?」共華曰:「二三子皆在而不及,子使於秦,可哉!」丕鄭入,君殺之。共賜謂共華曰:「子行乎?其及也!」共華曰:「夫子之入,吾謀也,将待也。」賜曰:「孰知之?」共華曰:「不可。知而背之不信,謀而困人不智,困而不死無勇。任大悪三,行将安入?子其行矣,我姑待死。」 丕鄭之子曰豹,出奔秦,謂穆公曰:「晋君大失其衆,背君賂,殺里克,而忌処者,衆固不説。今又殺臣之父及七輿大夫,此其党半国矣。君若伐之,其君必出。」穆公曰:「失衆安能殺人?且夫禍唯無斃,足者不処,処者不足,勝敗若化。以禍為違,孰能出君?爾俟我!」
書き下し
恵公既に位に即き、乃ち秦の賂に背く。丕鄭をして秦に聘せしめ、且つ之を謝せしむ。而して里克を殺して曰く、「子二君と一大夫とを殺す。子の君為る者は、亦難からずや」と。 丕鄭秦に如きて賂を緩くするを謝し、乃ち穆公に謂いて曰く、「君厚く問いて以て呂甥・郤称・冀芮を召して之を止め、師を以て公子重耳を奉ぜよ。臣の属内に作(おこ)らば、晋君必ず出でん」と。穆公泠至(れいし)をして報問せしめ、且つ三大夫を召す。鄭や客と将に事を行わんとす。冀芮曰く、「鄭の使いは薄くして報いは厚し。其の我を秦に言うや、必ず我を誘わしめん。殺さずんば、必ず難を作さん」と。是の故に丕鄭及び七輿大夫、共華(きょうか)・賈華・叔堅(しゅくけん)・騅歂(すいせん)・纍虎(るいこ)・特宮(とくきゅう)・山祁(さんき)を殺す。皆里・丕の党なり。丕豹(ひひょう)秦に出奔す。 丕鄭の秦より反るや、里克の死を聞き、共華に見えて曰く、「以て入るべきか」と。共華曰く、「二三子皆在りて及ばず。子は秦に使いす、可なり」と。丕鄭入り、君之を殺す。共賜(きょうし)共華に謂いて曰く、「子行かんか。其れ及ばん」と。共華曰く、「夫子の入るは、吾が謀なり。将に待たんとす」と。賜曰く、「孰か之を知らん」と。共華曰く、「不可なり。知りて之に背くは不信なり。謀りて人を困しむるは不智なり。困しみて死せざるは無勇なり。大悪三を任(にな)いて、行くとも将に安(いず)くにか入らん。子其れ行け、我は姑(しばら)く死を待たん」と。 丕鄭の子を豹と曰う。秦に出奔し、穆公に謂いて曰く、「晋君大いに其の衆を失う。君の賂に背き、里克を殺して、処る者を忌む。衆固より説(よろこ)ばず。今又臣の父及び七輿大夫を殺す。此れ其の党国に半ばす。君若し之を伐たば、其の君必ず出でん」と。穆公曰く、「衆を失わば安んぞ能く人を殺さん。且つ夫れ禍は唯だ斃(たお)るること無くんば、足る者は処らず、処る者は足らず、勝敗化するが若し。禍を以て違(さ)るも、孰か能く君を出ださん。爾(なんじ)我を俟て」と。
現代語訳
恵公は即位すると、秦に約束した贈り物を反故にした。そこで丕鄭を秦へ使いに出し、約束の遅れを詫びさせた。そして里克を殺すにあたって言った。「そなたは二人の君(奚斉と卓子)と一人の大夫(荀息)を殺した。そなたの君となる者は、なんとも難儀ではないか」。 丕鄭は秦に行って贈り物の遅れを詫びると、穆公にこう言った。「殿が手厚い贈り物をして呂甥・郤称・冀芮を招き、秦に引き留めてください。そして軍を出して公子重耳を奉じてください。私の仲間が国内で立ち上がれば、晋君は必ず国外へ逃げ出すでしょう」。穆公は泠至(秦の大夫)を返礼の使者として晋に遣わし、あわせて三人の大夫を招いた。丕鄭は客の泠至とともに使者の務めを果たそうとしていた。冀芮が言った。「丕鄭の持って行った礼物は乏しいのに、秦の返礼は手厚い。丕鄭が秦で私たちのことを言いつけ、きっと秦に私たちをおびき出させようとしているのです。丕鄭を殺さなければ、必ず乱を起こすでしょう」。こうして恵公は、丕鄭と七輿大夫の共華・賈華・叔堅・騅歂・纍虎・特宮・山祁を殺した。みな里克と丕鄭の一党であった。丕鄭の子の丕豹は秦へ逃れた。 丕鄭が秦から戻ったとき、里克が殺されたと聞いて、共華に会って尋ねた。「国に入っても大丈夫だろうか」。共華は言った。「われら七輿大夫はみな無事で、罪は及んでいません。あなたは秦に使いしていたのですから、大丈夫でしょう」。丕鄭は国に入り、恵公は彼を殺した。共賜(共華の一族の大夫)が共華に言った。「あなたも逃げてはどうですか。やがて罪が及びますよ」。共華は言った。「丕鄭どのが国に入ったのは私の考えによるものだ。私はここで報いを待つ」。共賜は言った。「誰がそれを知っていましょう」。共華は言った。「それはできない。自分が知っていながらそれに背くのは不信だ。謀って人を窮地に陥れたのは不智だ。窮地に陥れておきながら死なないのは無勇だ。三つの大きな悪を背負って、逃げたとしてもどこに身を置けよう。あなたは行きなさい。私はここで死を待つ」。 丕鄭の子は名を豹といった。秦に逃れて、穆公に言った。「晋君はすっかり民心を失っています。殿への贈り物を反故にし、里克を殺し、国内に残る大夫たちを疎んじているので、人々はもとより快く思っていません。いまさらに私の父と七輿大夫を殺しました。その一党は国の半ばに及びます。殿がもし晋を討てば、晋君は必ず国外に逃げ出すでしょう」。穆公は言った。「民心を失っていたら、どうしてあれだけの人を殺せよう。それに、禍いというものは、死に値する罪がなければ乱は起こらない。死に値する罪のある者は国にとどまらず、国にとどまる者は死に値しない。勝ち負けは移り変わって定まらない。そなたは禍いのために国を去っただけで、誰が晋君を追い出せよう。私に考えがあるから待っておれ」。
解説
この章句が説くこと
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『十善法語』巻第四・不妄語戒又春秋ノ時。晋ノ荀吳鼓ヲ囲ム。鼓城ノ一人城ヲヒキヰ降ント請フ。穆子コレヲ許サス。左右ノ者ミナ云。兵ヲ労セズシテ城ヲ獲ル。何故許ササル。穆子曰。若是ヲ受テ賞ヲ行ハハ不忠不義ヲ賞スルニナラン。若コレヲ受テ賞セネハ信ヲ失フ。二途倶ニ道ニソムクト。使ヲツカハシテ叛人ノ名ヲ鼓城ニ告テ刑セシム。後三月鼓人降ント請。穆子曰。姑ク汝カ城ヲ守レ。猶食色有ト。軍吏曰。今日不義ナラス。民ヲ労セスシテ城ヲ獲ルニ。何故許ササルト穆子曰。彼未タ力尽ズシテ降ルハ怠ナリ。怠ヲ買ハ道全カラスト其後鼓人力竭食尽ルト告ク。鼓ニ克チ軍ヲ全シテ。一人ヲモ戮セスト。此等モ面白キ事実シヤ。
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