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国語 / 晋語二

葵丘之會,獻公將如會,遇宰周公,曰:「君可無會也。夫齊侯好示,務施與力而不務德,故輕致諸侯而重遣之,使至者勸而叛者慕。懷之以典言,薄其要結而厚德之,以示之信。三屬諸侯,存亡國三,以示之施。是以北伐山戎,南伐楚,西為此會也。譬之如室,既鎮其甍矣,又何加焉?吾聞之,惠難遍也,施難報也。不遍不報,卒於怨讎。夫齊侯將施惠如出責,是之不果奉,而暇晉是皇,雖後之會,將在東矣。君無懼矣,其有勤也!」公乃還。

新字:葵丘之会,献公将如会,遇宰周公,曰:「君可無会也。夫斉侯好示,務施与力而不務徳,故軽致諸侯而重遣之,使至者勧而叛者慕。懐之以典言,薄其要結而厚徳之,以示之信。三属諸侯,存亡国三,以示之施。是以北伐山戎,南伐楚,西為此会也。譬之如室,既鎮其甍矣,又何加焉?吾聞之,恵難遍也,施難報也。不遍不報,卒於怨讎。夫斉侯将施恵如出責,是之不果奉,而暇晋是皇,雖後之会,将在東矣。君無懼矣,其有勤也!」公乃還。

書き下し

葵丘(ききゅう)の会、献公将に会に如(ゆ)かんとし、宰周公(さいしゅうこう)に遇う。曰く、「君会すること無かるべし。夫れ斉侯は示すことを好み、施与と力とを務めて徳を務めず。故に諸侯を致すことを軽くして之を遣ることを重くし、至る者をして勧(すす)ましめ、叛く者をして慕わしむ。之を懐(やす)んずるに典言を以てし、其の要結を薄くして之を厚く徳し、以て之に信を示す。三たび諸侯を属(あつ)め、亡国を存すること三、以て之に施を示す。是を以て北のかた山戎を伐ち、南のかた楚を伐ち、西のかた此の会を為すなり。之を譬うれば室の如し、既に其の甍(いらか)を鎮(お)さえたり、又何をか加えん。吾之を聞く、恵は遍(あまね)くし難く、施は報い難し。遍からず報いられずんば、怨讎に卒(お)わる。夫れ斉侯将に恵を施すこと責(せめ)を出だすが如くせんとす。是れ之を果たし奉ぜず、晋を是れ皇(はか)るに暇あらんや。後の会と雖も、将に東に在らんとす。君懼るること無かれ、其れ勤むること有らんのみ」と。公乃ち還る。

現代語訳

葵丘の会盟のとき、献公はその会に出かけようとして、途中で宰周公(周王の卿士、宰孔)に出会った。宰周公は言った。「殿は会にお出にならなくてよいでしょう。そもそも斉侯(桓公)は自分の功を見せびらかすのが好きで、恩恵と力を施すことに励んでも、徳を修めることには励んでいません。だから諸侯を招くときは手ぶらで来させ、帰すときには荷を満載して帰らせ、来た者は喜んで励み、背いた者はうらやましがるようにしているのです。法にかなった言葉で諸侯を安んじ、盟約のしるしは簡素にしながら手厚く恩を施し、それによって信義を示しています。三度諸侯を会合させ、滅びかけた国を三つ立て直して、恩恵を示しました。それで北は山戎を討ち、南は楚を討ち、西ではこの会を開いたのです。家にたとえれば、もう棟木まで据えて屋根を押さえてしまったようなもので、これ以上何を加えるというのでしょう。私はこう聞いています。恩恵は隅々まで行き渡らせるのが難しく、施しには報いが返りにくい。行き渡らず報いられなければ、最後は怨みと仇になるものだと。斉侯はまるで貸した金を取り立てるように、見返りを当てにして恩恵を施そうとしています。それでは自分の約束を果たすことさえできないでしょうに、晋のことまで気にかける暇などありましょうか。この後に会を開くにしても、それは東の方になるでしょう。殿は出席しないことを恐れる必要はありません。行ってもただ骨折りになるだけです」。献公はそこで引き返した。

解説

斉の桓公が諸侯を集めた葵丘の会盟に向かう晋の献公を、周の卿士宰孔が途中で引き止めた話である。宰孔の見立てでは、桓公は手ぶらで来させて荷を満載して帰すような気前のよさで諸侯を集め、滅びかけた魯・衛・邢を立て直して恩を示したが、それは徳ではなく見せるための施しだった。恩恵は行き渡らず、施しには報いが返りにくいから、やがて怨みに変わる。しかも見返りを当てにした施しは、借金の取り立てと同じだと言う。『春秋左氏伝』僖公九年にも、宰孔が献公に会に行かなくてよいと告げ、献公が引き返したことが記される。覇者の絶頂を棟木を据え終えた家と見た読みが鋭い。見返りを期待した親切や施しは、相手の心に負い目や不満として残りやすいという指摘は、人を率いる者に今も響く。

この章句が説くこと

国語晋語覇者徳施し

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