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国語 / 晋語一

獻公伐驪戎,克之,滅驪子,獲驪姬以歸,立以為夫人,生奚齊。其娣生卓子。驪姬請使申生主曲沃以速懸,重耳處蒲城,夷吾處屈,奚齊處絳,以儆無辱之故。公許之。 史蘇朝,告大夫曰:「二三大夫其戒之乎,亂本生矣!日,君以驪姬為夫人,民之疾心固皆至矣。昔者之伐也,興百姓以為百姓也,是以民能欣之,故莫不盡忠極勞以致死也。今君起百姓以自封也,民外不得其利,而內惡其貪,則上下既有判矣;然而又生男,其天道也?天彊其毒,民疾其態,其亂生哉!吾聞君之好好而惡惡,樂樂而安安,是以能有常。伐木不自其本,必復生;塞水不自其源,必復流;滅禍不自其基,必復亂。今君滅其父而畜其子,禍之基也。畜其子,又從其欲,子思報父之恥而信其欲,雖好色,必惡心,不可謂好。好其色,必授之情。彼得其情以厚其欲,從其惡心,必敗國且深亂。亂必自女戎,三代皆然。」驪姬果作難,殺太子而逐二公子。君子曰:「知難本矣。」

新字:献公伐驪戎,克之,滅驪子,獲驪姫以帰,立以為夫人,生奚斉。其娣生卓子。驪姫請使申生主曲沃以速懸,重耳処蒲城,夷吾処屈,奚斉処絳,以儆無辱之故。公許之。 史蘇朝,告大夫曰:「二三大夫其戒之乎,乱本生矣!日,君以驪姫為夫人,民之疾心固皆至矣。昔者之伐也,興百姓以為百姓也,是以民能欣之,故莫不尽忠極労以致死也。今君起百姓以自封也,民外不得其利,而内悪其貪,則上下既有判矣;然而又生男,其天道也?天彊其毒,民疾其態,其乱生哉!吾聞君之好好而悪悪,楽楽而安安,是以能有常。伐木不自其本,必復生;塞水不自其源,必復流;滅禍不自其基,必復乱。今君滅其父而畜其子,禍之基也。畜其子,又従其欲,子思報父之恥而信其欲,雖好色,必悪心,不可謂好。好其色,必授之情。彼得其情以厚其欲,従其悪心,必敗国且深乱。乱必自女戎,三代皆然。」驪姫果作難,殺太子而逐二公子。君子曰:「知難本矣。」

書き下し

献公驪戎を伐ちて之に克ち、驪子を滅ぼし、驪姫を獲て以て帰り、立てて以て夫人と為し、奚斉(けいせい)を生む。其の娣(てい)卓子を生む。驪姫、申生をして曲沃を主(つかさど)りて以て懸(けん)を速やかにせしめ、重耳(ちょうじ)をして蒲城に処らしめ、夷吾をして屈に処らしめ、奚斉をして絳(こう)に処らしめ、以て辱め無きの故を儆(いまし)めんことを請う。公之を許す。 史蘇朝し、大夫に告げて曰く、「二三大夫其れ之を戒めよ。乱本生ぜり。日(さき)に、君驪姫を以て夫人と為す。民の疾心固より皆至る。昔の伐つや、百姓を興すに百姓の為にするを以てす。是を以て民能く之を欣び、故に忠を尽くし労を極めて以て死を致さざる莫きなり。今君百姓を起こして以て自ら封ず。民外には其の利を得ずして、内には其の貪を悪む。則ち上下既に判(わか)るる有り。然り而して又男を生む。其れ天道なるか。天其の毒を彊くし、民其の態を疾む。其れ乱生ぜんかな。吾聞く、君の好を好みて悪を悪み、楽を楽しみて安を安んず、是を以て能く常有りと。木を伐りて其の本よりせずんば、必ず復た生ず。水を塞ぎて其の源よりせずんば、必ず復た流る。禍を滅ぼして其の基よりせずんば、必ず復た乱る。今君其の父を滅ぼして其の子を畜(やしな)う。禍の基なり。其の子を畜い、又其の欲に従う。子は父の恥に報いんことを思いて其の欲を信(の)ぶ。色を好むと雖も、必ず心を悪む。好むと謂うべからず。其の色を好めば、必ず之に情を授く。彼其の情を得て以て其の欲を厚くし、其の悪心に従わば、必ず国を敗りて且つ深く乱れん。乱は必ず女戎よりす。三代皆然り」と。驪姫果たして難を作し、太子を殺して二公子を逐う。君子曰く、「難の本を知れり」と。

現代語訳

晋の献公は驪戎を討って勝ち、驪の君を滅ぼし、驪姫を手に入れて連れ帰り、夫人に立てた。驪姫は奚斉を生み、その妹も卓子を生んだ。驪姫は、太子の申生に宗廟のある曲沃を治めさせて、その縊死を早めさせようとし、公子の重耳を蒲城に、公子の夷吾を屈に住まわせ、奚斉を都の絳に置くことを願い出た。表向きは、公子たちを辺境の守りとして外敵の侮りを受けないよう備えるためという理由であった。公はこれを許した。 史蘇は朝廷に出て、大夫たちに告げた。「皆さん、これを戒めなさい。乱のもとが生まれたのだ。先ごろ、君は驪姫を夫人とされた。民の憎しみはもとよりすっかりそこに向かっている。昔、先君たちが戦をしたときは、民を動員するのは民のためであった。だから民はそれを喜び、忠を尽くし骨身を惜しまず、命を捧げない者はなかった。ところがいま君は民を動員して、自分の富と寵のために用いた。民は外ではその利益を受けられず、内ではその貪りを憎んでいる。上と下はすでに心が分かれているのだ。そのうえ、驪姫は男子まで生んだ。これも天の道なのだろうか。天がその毒を強め、民がそのありさまを憎む。乱が生まれずにいようか。私はこう聞いている。君主は好むべきものを好み、憎むべきものを憎み、楽しむべきものを楽しみ、安んずべきものを安んずる、だから常の道を保てるのだと。木を伐るのに根から伐らなければ、必ずまた生えてくる。水をせき止めるのに源からふさがなければ、必ずまた流れ出す。禍を滅ぼすのにその基から絶たなければ、必ずまた乱れる。いま君はその父(驪の君)を滅ぼしておきながら、その子(驪姫)を養っている。これこそ禍の基である。その子を養い、しかもその望みに従っている。子は父の受けた恥に報いようと思って、その望みを押し広げるだろう。君は驪姫の色を好んでも、驪姫は必ず心の中で君を憎んでいる。これを好み合っているとは言えない。君がその色を好めば、必ず心を許す。驪姫はその心をつかんで望みを大きくし、その悪い心のままに動けば、必ず国を損ない、深く乱すだろう。乱は必ず女の戦から起こる。夏・殷・周の三代はみなそうであった。」はたして驪姫は難を起こし、太子を殺し、二人の公子を追い出した。君子は言った。「史蘇は難の根本を知っていた。」

解説

驪姫が夫人となって子を生み、太子申生を遠ざける布石を打った場面と、それを見た史蘇の二度目の警告である。驪姫は、申生を宗廟のある曲沃に、重耳を蒲に、夷吾を屈に置き、自分の子奚斉を都の絳に残すよう願った。韋昭の注は「以て懸を速やかにす」について、虞御史の説を引いて「懸」を首をくくることと解し、申生の死を早めるたくらみと読む。史蘇の論は二つの軸からなる。一つは民心で、昔の戦は民のためだったので民は命を捧げたが、今回は君の寵のための戦だったので上下が分かれたという。もう一つは禍の根で、木は根から、水は源から絶たなければまた生じるように、父を滅ぼしてその娘を寵するのは禍の基を養うことだという。はたして驪姫は太子を死なせ、重耳と夷吾を国外に追いやり、君子は史蘇が「難の本を知れり」と評した。問題の表面を刈るだけでは同じことが繰り返される。根にあるものを見定める目が、組織の長には欠かせない。

この章句が説くこと

国語晋語史蘇驪姫禍根

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