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国語 / 魯語上

長勺之役,曹劌問所以戰於莊公。公曰:「余不愛衣食於民,不愛牲玉於神。」對曰:「夫惠本而後民歸之志,民和而後神降之福。若布德于民而平均其政事,君子務治而小人務力;動不違時,財不過用;財用不匱,莫不能使共祀。是以用民無不聽,求福無不豐。今將惠以小賜,祀以獨恭。小賜不咸,獨恭不優。不咸,民不歸也;不優,神弗福也。將何以戰?夫民求不匱於財,而神求優裕於享者也,故不可以不本。」公曰:「余聽獄雖不能察,必以情斷之。」對曰:「是則可矣。知夫苟中心圖民,智雖弗及,必將至焉。」

新字:長勺之役,曹劌問所以戦於荘公。公曰:「余不愛衣食於民,不愛牲玉於神。」対曰:「夫恵本而後民帰之志,民和而後神降之福。若布徳于民而平均其政事,君子務治而小人務力;動不違時,財不過用;財用不匱,莫不能使共祀。是以用民無不聴,求福無不豊。今将恵以小賜,祀以独恭。小賜不咸,独恭不優。不咸,民不帰也;不優,神弗福也。将何以戦?夫民求不匱於財,而神求優裕於享者也,故不可以不本。」公曰:「余聴獄雖不能察,必以情断之。」対曰:「是則可矣。知夫苟中心図民,智雖弗及,必将至焉。」

書き下し

長勺(ちょうしゃく)の役に、曹劌(そうけい)戦う所以を荘公に問う。公曰く、「余は衣食を民に愛(お)しまず、牲玉を神に愛しまず」と。対えて曰く、「夫れ恵み本にして後に民之に志を帰し、民和して後に神之に福を降す。若し徳を民に布きて其の政事を平均にし、君子は治に務めて小人は力に務め、動きて時に違わず、財用を過ごさず、財用匱しからずんば、能く共に祀らしめざる莫し。是を以て民を用いて聴かざる無く、福を求めて豊かならざる無し。今将に恵むに小賜を以てし、祀るに独恭を以てせんとす。小賜は咸(あまね)からず、独恭は優(ゆた)かならず。咸からざれば、民帰せざるなり。優かならざれば、神福せざるなり。将た何を以て戦わん。夫れ民は財に匱しからざるを求め、而して神は享に優裕なるを求むる者なり。故に以て本とせざるべからず」と。公曰く、「余獄を聴くこと察する能わずと雖も、必ず情を以て之を断ず」と。対えて曰く、「是れ則ち可なり。知る、夫れ苟(まこと)に中心民を図れば、智及ばずと雖も、必ず将に至らんとするを」と。

現代語訳

長勺の戦い(魯と斉の戦い)の前に、曹劌(魯の人)は荘公(魯の君)に、何を頼みに戦うのかを尋ねた。荘公は言った。「私は民に衣服や食べ物を惜しまず与え、神に犠牲や玉を惜しまず捧げてきた。」曹劌は答えた。「恵みが根本から行き渡ってはじめて民は心を寄せ、民が和してはじめて神は福を降します。もし民に徳を施し、政事を公平にし、上に立つ者は治めることに、下の者は働くことにそれぞれ励み、事を起こすにも時節に背かず、財を使うにも度を越さず、財と用具が乏しくなければ、誰もがともに祭祀に加わるようになります。そうであれば民を用いて従わない者はなく、福を求めて豊かでないことはありません。ところがいま、あなたは小さな施しで恵み、ご自身一人のつつしみで祀ろうとしておられます。小さな施しは行き渡らず、一人のつつしみは豊かではありません。行き渡らなければ民は心を寄せず、豊かでなければ神は福を与えません。それでどうして戦えましょう。そもそも民が求めるのは財に困らないことであり、神が求めるのはゆたかに供え物を受けることです。だから根本を大切にしないわけにはいかないのです。」荘公は言った。「私は訴えを裁くのに、細かく見抜くことはできないが、必ず実情に即して判断している。」曹劌は答えた。「それならよろしいでしょう。心の底から誠実に民のことを考えていれば、知恵が行き届かないところがあっても、必ず道に至ることができるとわかります。」

解説

斉が魯に攻め込んだ長勺の戦いの前に、魯の曹劌が荘公に「何を以て戦うか」を問うた話である。荘公はまず、民に衣食を惜しまず、神に犠牲を惜しまないと答えるが、曹劌はそれを「小賜」「独恭」、つまり行き渡らない施しと君一人のつつしみにすぎないと退ける。民の心は、政事を公平にし、時節に背かず、財を度を越して使わないという根本の恵みがあってはじめて寄るという。最後に荘公が、訴えを裁くのに必ず実情に即していると言うと、曹劌は、それなら戦えると認めた。韋昭は「可」を、万全ではないが一戦はできるという意味だと注する。同じ場面は『春秋左氏伝』荘公十年にもあり、そちらでは曹劌が「忠の属なり」と答え、続く戦いの駆け引きまで描かれる。手当や催しより、評価や判断が公平で実情に即しているかが、いざというとき人を動かす。

この章句が説くこと

国語魯語民公平戦

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