導師導古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

古事記 / 下巻・意富祁命の諫言

天皇詔之。欲報父王之仇。必悉破壞其陵。何少掘乎。答曰。所以爲然者。父王之怨。欲報其靈。是誠理也。然其大長谷天皇者。雖爲父之怨。還爲我從父。亦治天下之天皇。是今單取父仇之志。悉破治天下之天皇陵者。後人必誹謗。唯父王之仇。不可非報。故少掘其陵邊。既以是恥。足示後世。如此奏者。天皇答詔之是亦大理。如命可也。故天皇崩。即意富祁命知天津日繼。天皇。御年參拾捌歲。治天下八歲。御陵在片岡之石坏岡上也。

新字:天皇詔之。欲報父王之仇。必悉破壊其陵。何少掘乎。答曰。所以為然者。父王之怨。欲報其霊。是誠理也。然其大長谷天皇者。雖為父之怨。還為我従父。亦治天下之天皇。是今単取父仇之志。悉破治天下之天皇陵者。後人必誹謗。唯父王之仇。不可非報。故少掘其陵辺。既以是恥。足示後世。如此奏者。天皇答詔之是亦大理。如命可也。故天皇崩。即意富祁命知天津日継。天皇。御年参拾捌歳。治天下八歳。御陵在片岡之石坏岡上也。

書き下し

天皇詔りたまはく、「父王の仇に報いむと欲ふ。必ず悉に其の陵を破壊らむ。何ぞ少しく掘れるや」とのりたまひき。答へて曰さく、「然せし所以は、父王の怨みを、その霊に報いむと欲ふこと、これ誠に理なり。然れども、その大長谷天皇は、父の怨みなりと雖も、還りては我が従父にして、亦天下を治めし天皇なり。今、単に父の仇といふ志のみを取りて、悉に天下を治めし天皇の陵を破らば、後の人必ず誹謗らむ。ただ父王の仇は、報いずあるべからず。故、少しくその陵の辺を掘れり。既にこれを以ちて恥とす。後の世に示すに足れり」とまをす。かく奏しかば、天皇答へて詔りたまはく、「これ亦大きなる理なり。命のごとくして可し」とのりたまひき。故、天皇崩りまして、即ち意富祁命、天津日継を知らしめしき。天皇、御年参拾捌歳。天下を治めたまふこと八歳。御陵は片岡の石坏岡の上にあり。

現代語訳

天皇がおっしゃいました。「私は父王の仇に報いようと思う。必ず御陵をすべて壊すつもりだった。なぜ少ししか掘らなかったのか」。答えて申しました。「そうしたわけは、父王の怨みを、その霊に報いようとなさるお気持ちは、まことに道理にかなっています。しかし、その大長谷天皇は、父の仇であるとはいえ、一方では私たちの叔父にあたり、しかも天下を治められた天皇です。いま、ただ父の仇だという思いだけで、天下を治めた天皇の御陵をすべて壊すならば、後の人は必ず非難するでしょう。ただし、父王の仇は報いずにおくわけにはいきません。それゆえ、御陵のそばを少し掘りました。これだけでも十分に恥となり、後の世に示すに足りるでしょう」。こう申し上げると、天皇は答えておっしゃいました。「それもまた大きな道理である。おっしゃるとおりでよい」。やがて天皇がお亡くなりになり、意富祁命が皇位を継がれました。天皇(顕宗)は御年三十八歳で、天下を治められたのは八年でした。御陵は片岡の石坏岡の上にあります。

解説

意富祁命は、父の仇に報いるのは道理としつつ、雄略は叔父であり天下を治めた天皇であると述べ、全面破壊は後世の非難を招くと諫めます。少し掘るだけで恥を示せば足りるという加減は、感情を満たすより名分と将来の評判を重んじる判断です。天皇もこれを大きな道理と認めました。怒りの正当性があっても、組織の長は影響の大きさと長期の評価を考えなければなりません。正面から反対せず筋を通す諫め方も学べます。

この章句が説くこと

意富祁命諫言雄略天皇名分節度仁賢天皇

関連する章句

『人生の方程式』の表紙

人生を、一行の式にしてみた。

志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。

本の中身を見る
本2冊(人生の方程式・人生の教科書)+師導1か月=700円本を見る