晏子春秋 / 諫下・景公嬖妾死守之三日不斂晏子諫
今君薄于賢人之禮,而厚嬖妾之哀。且古聖王,畜私不傷行,斂死不失愛,送死不失哀。行傷則溺己,愛失則傷生,哀失則害性。是故聖王節之也。死即畢斂,不以留生事;棺槨衣衾,不以害生養。哭泣處哀、不以害生道。今朽屍以留生,廣愛以傷行,循哀以害性,君之失矣。故諸侯之賓客,慚入吾國;本朝之臣,慚守其職。崇君之行,不可以導民;從君之欲,不可以持國。且嬰聞之,朽而不斂,謂之僇屍,臭而不收,謂之陳胔,反明王之性,行百姓之誹,而內嬖委於僇胔,此之為不可。」公曰:「寡人不識,請因夫子而為之。」晏子復曰:「國之士大夫,諸侯四鄰賓客皆在外,君其哭而節之。」仲尼聞之曰:「星之昭昭,不如月之曀曀。小事之成,不若大事之廢。君子之非,賢於小人之是也,其晏子之謂歟。」
新字:今君薄于賢人之礼,而厚嬖妾之哀。且古聖王,畜私不傷行,斂死不失愛,送死不失哀。行傷則溺己,愛失則傷生,哀失則害性。是故聖王節之也。死即畢斂,不以留生事;棺槨衣衾,不以害生養。哭泣処哀、不以害生道。今朽屍以留生,広愛以傷行,循哀以害性,君之失矣。故諸侯之賓客,慚入吾国;本朝之臣,慚守其職。崇君之行,不可以導民;従君之欲,不可以持国。且嬰聞之,朽而不斂,謂之僇屍,臭而不収,謂之陳胔,反明王之性,行百姓之誹,而内嬖委於僇胔,此之為不可。」公曰:「寡人不識,請因夫子而為之。」晏子復曰:「国之士大夫,諸侯四鄰賓客皆在外,君其哭而節之。」仲尼聞之曰:「星之昭昭,不如月之曀曀。小事之成,不若大事之廃。君子之非,賢於小人之是也,其晏子之謂歟。」
書き下し
今君賢人の礼に薄くして、嬖妾の哀に厚し。且つ古の聖王は、私を畜うも行いを傷つけず、死を斂むるも愛を失わず、死を送るも哀を失わず。行い傷つけば則ち己に溺れ、愛失えば則ち生を傷つけ、哀失えば則ち性を害す。是の故に聖王之を節するなり。死すれば即ち斂を畢え、生事を留むるを以てせず。棺槨衣衾は、生養を害するを以てせず。哭泣して哀に処るも、生道を害するを以てせず。今朽屍を以て生を留め、広愛を以て行いを傷つけ、哀に循いて以て性を害す、君の失なり。故に諸侯の賓客は、吾が国に入るを慚じ、本朝の臣は、其の職を守るを慚ず。君の行いを崇ぶは、以て民を導く可からず。君の欲に従うは、以て国を持す可からず。且つ嬰之を聞く、朽ちて斂めざる、之を僇屍と謂い、臭いて収めざる、之を陳胔と謂う。明王の性に反し、百姓の誹りを行い、而して内嬖僇胔に委ぬ、此れを之れ不可と為す」と。公曰く、「寡人識らず、請う夫子に因りて之を為さん」と。晏子復して曰く、「国の士大夫、諸侯四鄰の賓客皆外に在り、君其れ哭して之を節せよ」と。仲尼之を聞きて曰く、「星の昭昭たるは、月の曀曀たるに如かず。小事の成るは、大事の廃るるに若かず。君子の非は、小人の是に賢れり、其れ晏子の謂いか」と。
現代語訳
今、殿は賢者への礼に薄く、愛妾への悲しみに厚くなっています。古の聖王は、私的な愛を養っても行いを傷つけず、死者を納めても愛を失わず、死者を送っても悲しみを失いませんでした。行いが傷つけば自分に溺れ、愛を失えば生を傷つけ、悲しみを失えば本性を害します。ですから聖王はこれらを節度あるものにしたのです。死ねばすぐに納棺を終え、生きている者の務めを遅らせません。棺や衣衾で、生きる者の養いを害しません。泣いて悲しみに浸っても、生きる道を害しません。今、朽ちる遺体を理由に生を引き留め、広い愛で行いを傷つけ、悲しみに従って本性を損なっているのは、殿の過ちです。そのため諸侯の賓客は我が国に入るのを恥じ、朝廷の臣は職を守るのを恥じています。殿の行いを尊ぶのでは、民を導けません。殿の欲に従うのでは、国を保てません。また私は、朽ちても納めないのを僇屍といい、臭っても収めないのを陳胔というと聞いています。明王の本性に背き、民の非難を受け、しかも内には寵姫の遺体を放置する。これはよくありません。」公は言いました。「私は知らなかった。先生にしたがって、取り計らおう。」晏子はまた報告しました。「国の士大夫や、諸侯、近隣の賓客がみな外にいます。殿は泣いて節度ある形で送ってください。」仲尼はこれを聞いて言いました。「星が明るく輝くのは、月が穏やかに照らすにおよばない。小さなことの成功は、大きなことの失敗にしかず。君子の誤りは、小人の正しさにまさる。晏子のことを言うのだろうか。」
解説
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『晏子春秋』諫下・景公為鄒之長塗晏子諫景公、路寝の台を築き、三年未だ息まず。又長庲の役を為し、二年未だ息まず。又鄒の長塗を為る。晏子諫めて曰く、「百姓の力勤れたり、公息めざるか」と。公曰く、「塗将に成らんとす、請う成りて之を息めん」と。対えて曰く、「君民の財を屈くす者は其の利を得ず、民力を窮むる者は其の楽しみを得ず。昔者楚の霊王頃宮を作り、三年未だ息まざるなり。又章華の台を為り、五年又息まざるなり。乾溪の役は八年、百姓の力足らずして息む。霊王乾溪に死し、而して民与に帰らず。今君明王の義に遵わず、而して霊王の跡に循う。嬰君に民を暴する行い有り、而して長庲の楽しみを睹ざらんことを懼る、息むるに若かず」と。公曰く、「善し。夫子に非ずんば、寡人百姓に罪を得ること深きを知らざるなり」と。是に於て委壊する勿からしめ、余財は収むる勿く、板を斬りて之を去らしむ。
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