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晏子春秋 / 雑下・田桓子疑晏子何以辭邑晏子答以君子之事也/景公欲更晏子宅晏子辭以近市得所求諷公省刑

景公賜晏子邑,晏子辭。田桓子謂晏子曰:「君歡然與子邑,必不受以恨君何也?」晏子對曰:「嬰聞之,節受於上者,寵長於君;儉居於處者,名廣於外。夫長寵廣名,君子之事也,嬰獨庸能已乎?」景公欲更晏子之宅,曰:「於之宅近市,湫隘囂塵,不可以居,請更諸爽塏者。」晏子辭曰:「君之先臣容焉,臣不足以嗣之,於臣侈矣。且小人近市,朝夕得所求,小人之利也,敢煩裡旅?」公笑曰:「子近市,識貴賤乎?」對曰:「既竊利之,敢不識乎?」公曰:「何貴何賤?」是時也,公繁于刑,有鬻踴者,敵對曰:「踴貴而屨賤。」公愀然改容,公為是省于刑。君子曰:「仁人之言,其利博哉!晏子一言,而齊侯省刑。詩曰:『君子如祉,亂庶遄已。』其是之謂乎!」

新字:景公賜晏子邑,晏子辞。田桓子謂晏子曰:「君歓然与子邑,必不受以恨君何也?」晏子対曰:「嬰聞之,節受於上者,寵長於君;倹居於処者,名広於外。夫長寵広名,君子之事也,嬰独庸能已乎?」景公欲更晏子之宅,曰:「於之宅近市,湫隘囂塵,不可以居,請更諸爽塏者。」晏子辞曰:「君之先臣容焉,臣不足以嗣之,於臣侈矣。且小人近市,朝夕得所求,小人之利也,敢煩裡旅?」公笑曰:「子近市,識貴賤乎?」対曰:「既窃利之,敢不識乎?」公曰:「何貴何賤?」是時也,公繁于刑,有鬻踴者,敵対曰:「踴貴而屨賤。」公愀然改容,公為是省于刑。君子曰:「仁人之言,其利博哉!晏子一言,而斉侯省刑。詩曰:『君子如祉,乱庶遄已。』其是之謂乎!」

書き下し

景公晏子に邑を賜う。晏子辞す。田桓子晏子に謂いて曰く、「君歓然として子に邑を与う。必ず受けずして以て君を恨ましむるは何ぞや」と。晏子対えて曰く、「嬰聞く、節を上に受くる者は、寵君に長じ、倹を処に居る者は、名外に広しと。夫れ寵を長じ名を広むるは、君子の事なり。嬰独り庸ぞ能く已まんや」と。景公晏子の宅を更めんと欲し、曰く、「子の宅は市に近く、湫隘囂塵にして、以て居る可からず。請う、諸を爽塏なる者に更めん」と。晏子辞して曰く、「君の先臣容る。臣以て之を嗣ぐに足らず。臣に於て侈なり。且つ小人市に近ければ、朝夕求むる所を得。小人の利なり。敢えて裡旅を煩わさんや」と。公笑いて曰く、「子市に近し。貴賤を識るか」と。対えて曰く、「既に竊かに之を利す。敢えて識らざらんや」と。公曰く、「何か貴く何か賤き」と。是の時や、公刑に繁く、踊を鬻ぐ者有り。敵対えて曰く、「踊貴くして屨賤し」と。公愀然として容を改め、公是が為に刑を省く。君子曰く、「仁人の言、其の利博きかな。晏子の一言にして、斉侯刑を省く。詩に曰く、『君子如し祉あらば、乱庶わくは遄やかに已まん』と。其れ是れを之謂うか」と。

現代語訳

景公が晏子に邑を賜ろうとしましたが、晏子は辞退しました。田桓子が晏子に言いました。「君は喜んであなたに邑を与えたのに、受けずに君を恨ませるのはなぜですか。」晏子は答えました。「私はこう聞いています。上から節度を受ける者は君の寵愛を長く保ち、質素に住まう者は名が外に広まると。寵愛を長く保ち名を広めることは、君子の務めです。私だけがやめることができましょうか。」また景公は晏子の住まいを替えようとして、こう言いました。「そなたの家は市場に近く、低くて狭くやかましく、塵も多くて住めない。高くて明るい場所に替えさせてほしい。」晏子は辞退して言いました。「君の先代の臣下が住んでいた家です。私はそれを継ぐに足りませんのに、私には贅沢です。それに、小人は市場に近ければ、朝夕に欲しいものが手に入ります。小人の利です。里の者たちを煩わせるようなことはいたしません。」公は笑って言いました。「そなたは市場に近い。物の値の貴賤はわかるか。」晏子は答えました。「すでにその恩恵を受けています。知らないはずがありません。」公が「何が高く、何が安いか」と尋ねると、当時、公は刑罰を乱用していて、足切りの刑で使う義足を売る者がいました。晏子は答えました。「義足は高く、靴は安いです。」公は顔色を改めて悲しげな表情となり、これを機に刑罰を減らしました。君子は言いました。「仁人の言葉の恩恵は広いものだ。晏子の一言で、斉侯が刑罰を省いた。詩に『君子がもし福をもたらせば、乱れはすみやかに止まるであろう』とあるが、まさにこのことだろう。」

解説

前半は、景公の贈り物を受けない理由を田桓子に問われた晏子が、上から節度を受ければ寵愛が長く続くと答える場面です。後半は、公が晏子の家を引っ越させようとする別の逸話で、市場に近いと物の値がよくわかるという一言から、足切りの刑で使う義足が高く靴が安いという事実が公に突きつけられます。叱責も直接の諫言もせず、市場の相場を話題にして、刑罰の多さを悟らせた巧みな運びです。現代でも、数字や現場の事実を淡々と示すことが、上司や経営者の判断を変える最も穏やかな方法になることがあります。批判の言葉でなく事実で気づかせる姿勢が参考になります。

この章句が説くこと

諫言刑罰現場市場節度晏子春秋

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