古事記 / 上巻・国作りの始まり
亦追撥河之瀨而。意禮(二字以音)爲大國主神。亦爲宇都志國玉神而。其我之女須世理毘賣爲嫡妻而。於宇迦能(三字以音)山之山本。於底津石根宮柱布刀斯理。(此四字以音)於高天原冰椽多迦斯理(此四字以音)而居。是奴也。故持其大刀弓。追避其八十神之時。每坂御尾追伏。每河瀨追撥而。始作國也。故其八上比賣者。如先期。美刀阿多波志都。(此七字以音)故其八上比賣者。雖率來。畏其嫡妻須世理毘賣而。其所生子者。刺挾木俁而返。故名其子。云木俁神。亦名謂御井神也。
新字:亦追撥河之瀨而。意礼(二字以音)為大国主神。亦為宇都志国玉神而。其我之女須世理毘売為嫡妻而。於宇迦能(三字以音)山之山本。於底津石根宮柱布刀斯理。(此四字以音)於高天原冰椽多迦斯理(此四字以音)而居。是奴也。故持其大刀弓。追避其八十神之時。毎坂御尾追伏。毎河瀨追撥而。始作国也。故其八上比売者。如先期。美刀阿多波志都。(此七字以音)故其八上比売者。雖率来。畏其嫡妻須世理毘売而。其所生子者。刺挟木俁而返。故名其子。云木俁神。亦名謂御井神也。
書き下し
また河の瀬に追ひ撥(はら)ひて、意礼(おれ)、大国主神となり、また宇都志国玉神となりて、その我が女須世理毘売を嫡妻(むかひめ)として、宇迦の山の山本に、底つ石根に宮柱ふとしり、高天原に氷椽(ひぎ)たかしりて居れ。この奴(やつこ)」とのりたまひき。故、その大刀・弓を持ちて、その八十神を追ひ避(さ)くる時、坂の御尾ごとに追ひ伏せ、河の瀬ごとに追ひ撥ひて、始めて国を作りたまひき。故、その八上比売は、先の期(ちぎり)のごとく、美刀阿多波志つ。故、その八上比売は率て来ましつれども、その嫡妻須世理毘売を畏みて、その生める子をば、木の俣に刺し挟みて返りき。故、その子を名づけて木俣神と云ひ、また名は御井神と謂ふ。
現代語訳
また川の瀬に追い払って、おまえは大国主神となり、また宇都志国玉神となって、わが娘の須世理毘売を正妻として、宇迦の山のふもとに、地底の岩盤に太い宮柱を立て、高天原に千木を高くそびえさせて住め。この奴め」と大神は言いました。そこで大穴牟遅神はその大刀と弓で八十神を追い払い、坂の尾根ごとに追い伏せ、川の瀬ごとに追い払って、はじめて国づくりをしました。八上比売は、先の約束どおり、結ばれました。ところが八上比売は出雲に連れて来られたものの、正妻の須世理毘売を恐れて、生んだ子を木の股に挟んで因幡へ帰ってしまいました。そのためその子を木俣神と名づけ、また御井神とも呼びます。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『古事記』上巻・大国主神へ続く系譜ここにその足名椎神を喚(め)して告りたまひしく、「汝は我が宮の首(おびと)に任(よ)さむ」とのりたまひ、また名を負せて、稲田宮主須賀之八耳神と号(なづ)けたまひき。故、その櫛名田比売をもちて、久美度邇(くみどに)に起こして、生みませる神の名は、八島士奴美神と謂ふ。また大山津見神の女、名は神大市比売を娶(めと)りて、生める子は大年神、次に宇迦之御魂神(二柱)。兄八島士奴美神、大山津見神の女、名は木花知流比売を娶りて、生める子は布波能母遅久奴須奴神。この神、淤迦美神の女、名は日河比売を娶りて、生める子は深淵之水夜礼花神。この神、天之都度閇知泥神を娶りて、生める子は淤美豆奴神。この神、布怒豆怒神の女、名は布帝耳神を娶りて、生める子は天之冬衣神。この神、刺国大神の女、名は刺国若比売を娶りて、生める子は大国主神。
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『古事記』上巻・御諸山の神と大年神の子ここに大国主神、愁へて告りたまひしく、「吾独りして何にかよくこの国を得作らむ。いづれの神か、吾とよくこの国を相作らむ」とのりたまひき。この時、海を光らして依り来る神あり。その神の言りたまひしく、「よく我が前を治めば、吾よく共に相作り成さむ。もし然あらずは、国成り難けむ」とのりたまひき。ここに大国主神曰(まを)したまひしく、「然らば治め奉る状(さま)は奈何」とまをしたまひき。答へ言りたまひしく、「吾は倭の青垣の東の山の上に伊都岐(いつき)奉れ」とのりたまひき。こは御諸山の上に坐す神なり。故、その大年神、神活須毘神の女、伊怒比売を娶りて、生める子は大国御魂神、次に韓神、次に曾富理神、次に白日神、次に聖神(五神)。また香用比売を娶りて、生める子は大香山戸臣神、次に御年神(二柱)。また天知迦流美豆比売を娶りて、生める子は奥津日子神、次に奥津比売命、またの名は大戸比売神。こは諸人もちて拝く竈神なり。次に大山咋神、またの名は山末之大主神。この神は近淡海国の日枝の山に坐し、また葛野の松尾に坐して、鳴鏑を用ゐる神なり。
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『古事記』上巻・大国主神と稲羽の素兎また名は大穴牟遅神と謂ひ、また名は葦原色許男神と謂ひ、また名は八千矛神と謂ひ、また名は宇都志国玉神と謂ひて、并せて五つの名あり。故、この大国主神の兄弟(はらから)八十神坐しき。然れども皆国は大国主神に避(さ)りき。避りし所以(ゆゑ)は、その八十神、各稲羽の八上比売を婚(よば)はむ心ありて、共に稲羽に行きし時、大穴牟遅神に袋を負ほせ、従者(ともびと)として率て往きき。ここに気多の前に到りし時、裸の兎伏せりき。ここに八十神、その兎に謂ひけらく、「汝為(せ)むは、この海塩を浴み、風の吹くに当りて、高山の尾の上に伏せれ」といひき。故、その兎、八十神の教へに従ひて伏しき。ここにその塩の乾くまにまに、その身の皮ことごとに風に吹き拆(さ)かえき。故、痛み苦しみて泣き伏せれば、最後に来し大穴牟遅神、その兎を見て、「何由(なにゆゑ)か汝が泣き伏せる」と言ひき。兎答へ言さく、「僕は淤岐島にありて、この地に度らむとすれども、度る因(よし)なかりき。故、海の和邇(わに)を欺きて言ひけらく、『吾と汝と競ひて、族(うから)の多き少なきを計らむと欲ふ。故、汝は、その族のありのまにまに、ことごとに率て来て、この島より気多の前まで、皆列み伏し度れ。
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『古事記』上巻・神世七代と国生みの始まり上の件の五柱の神は、別天神。次に成りませる神の名は、国之常立神。(訓常立も亦上の如し)次に豊雲上野神。この二柱の神も亦、独神と成りまして、身を隠したまひき。次に成りませる神の名は、宇比地邇神。次に妹須比智邇去神。(この二神の名は音を以てす)次に角杙神。次に妹活杙神。(二柱)次に意富斗能地神。次に妹大斗乃弁神。(この二神の名も亦音を以てす)次に淤母陀琉神。次に妹阿夜訶志古泥神。(この二神の名は皆音を以てす)次に伊邪那岐神。次に妹伊邪那美神。(この二神の名も亦音を以てすること上の如し)上の件、国之常立神より以下、伊邪那美神より以前を、并せて神世七代と称ふ。(上の二柱は独神各一代と云ひ、次に双べる十神は各二神を合せて一代と云ふ)ここに天つ神諸の命以ちて、伊邪那岐命・伊邪那美命の二柱の神に、「この漂へる国を修め理り固め成せ」と詔りたまひて、天の沼矛を賜ひて、言依さしたまひき。故、二柱の神、天の浮橋に立たして(訓立を多多志と云ふ)、その沼矛を指し下ろして画きたまへば、塩こをろこをろに(この七字は音を以てす)画き鳴して(訓鳴を那志と云ふ)引き上げたまふ時、その矛の末より垂り落つる塩、累り積りて嶋と成りき。これ淤能碁呂嶋なり。(淤より以下四字は音を以てす)その嶋に天降りまして、天の御柱を見立て、八尋殿を見立てたまひき。
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『古事記』上巻・大国主神の国譲りと宮故、更にまた還り来て、その大国主神に問ひしく、「汝が子等、事代主神、建御名方神の二神は、天つ神の御子の命のまにまに違はじと白し訖りぬ。故、汝が心いかに」ととひき。ここに答へ白ししく、「僕が子等二神の白すまにまに、僕は違はじ。この葦原中国は、命のまにまに既に献らむ。ただ僕が住所は、天つ神の御子の天津日継知らしめすとだる天の御巣の如くして、(とだるの三字は音を以ちてす。下もこれに効へ)底つ石根に宮柱ふとしり、(ふとしりの四字は音を以ちてす)高天原に氷木たかしり(四字は音を以ちてす)て治め賜はば、僕は百足らず八十坰手に隠りて侍ひなむ。また僕が子等百八十神は、即ち八重事代主神、神の御尾前となりて仕へ奉らば、違ふ神はあらじ」とかく白して、乃ち隠りき。故、白しし随に、出雲国の多芸志の小浜に、天の御舎を造りて、(多芸志の三字は音を以ちてす)水戸神の孫、櫛八玉神、膳夫となりて、天の御饗を献る時に、禱ぎ白して、櫛八玉神、鵜に化りて、海底に入り、底の波邇を咋ひ出でて、天の八十毘良迦(この三字は音を以ちてす)を作りて、海布の柄を鎌りて燧臼を作り、海蓴の柄を以ちて燧杵を作りて、火を鑽り出でて、云ひしく、「この我が燧れる火は、高天原には、神産巣日御祖命のとだる天の新巣の凝烟(凝烟を訓みて州須と云ふ)の八拳垂るまで焼き挙げ、地の下は、底つ石根に焼き凝らして、栲縄の千尋縄打ち延へ、釣りせす海人の口大の尾翼鱸、(鱸を訓みて佐和佐和邇と云ふ。この五字は音を以ちてす)控き依せ騰げて、打竹のとををとををに、(この七字は音を以ちてす)天の真魚咋献る」と云ふ。
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『古事記』上巻・大国主神の子孫の系譜次に妹高比売命、またの名は下光比売命。この阿遅鉏高日子根神は、今、迦毛大御神と謂ふ者なり。大国主神、また神屋楯比売命を娶りて、生める子は事代主神。また八島牟遅能神の女、鳥耳神を娶りて、生める子は鳥鳴海神。(鳴を訓みて那留といふ。)この神、日名照額田毘道男伊許知邇神を娶りて、生める子は国忍富神。この神、葦那陀迦神、またの名は八河江比売を娶りて、生める子は速甕之多気佐波夜遅奴美神。この神、天之甕主神の女、前玉比売を娶りて、生める子は甕主日子神。この神、淤加美神の女、比那良志毘売を娶りて、生める子は多比理岐志麻流美神。この神、比比羅木之其花麻豆美神の女、活玉前玉比売神を娶りて、生める子は美呂浪神。この神、敷山主神の女、青沼馬沼押比売を娶りて、生める子は布忍富鳥鳴海神。この神、若昼女神を娶りて、生める子は天日腹大科度美神。この神、天狭霧神の女、遠津待根神を娶りて、生める子は遠津山岬多良斯神。

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