古事記 / 上巻・八俣の大蛇への備え
亦問汝哭由者何。答白言。我之女者自本在八稚女。是高志之八俣遠呂智。(此三字以音)每年來喫。今其可來時故泣。爾問其形如何。答白。彼目如赤加賀智而。身一有八頭八尾。亦其身生蘿及檜榲。其長度谿八谷峽八尾而。見其腹者。悉常血爛也。(此謂赤加賀知者。今酸醬者也)爾速須佐之男命。詔其老夫。是汝之女者。奉於吾哉。答白。恐。亦不覺御名。爾答詔。吾者天照大御神之伊呂勢者也。(自伊下三字以音)故今自天降坐也。爾足名椎。手名椎神白。然坐者恐。立奉。爾速須佐之男命。乃於湯津爪櫛取成其童女而。刺御美豆貝。告其足名椎手名椎神。汝等。釀八鹽折之酒。且作廻垣。於其垣作八門。每門結八佐受岐。(此三字以音)每其佐受岐置酒船而。每船盛其八鹽折酒而待。
新字:亦問汝哭由者何。答白言。我之女者自本在八稚女。是高志之八俣遠呂智。(此三字以音)毎年来喫。今其可来時故泣。爾問其形如何。答白。彼目如赤加賀智而。身一有八頭八尾。亦其身生蘿及檜榲。其長度谿八谷峡八尾而。見其腹者。悉常血爛也。(此謂赤加賀知者。今酸醬者也)爾速須佐之男命。詔其老夫。是汝之女者。奉於吾哉。答白。恐。亦不覚御名。爾答詔。吾者天照大御神之伊呂勢者也。(自伊下三字以音)故今自天降坐也。爾足名椎。手名椎神白。然坐者恐。立奉。爾速須佐之男命。乃於湯津爪櫛取成其童女而。刺御美豆貝。告其足名椎手名椎神。汝等。醸八塩折之酒。且作廻垣。於其垣作八門。毎門結八佐受岐。(此三字以音)毎其佐受岐置酒船而。毎船盛其八塩折酒而待。
書き下し
また問ひたまひしく、「汝が哭く由は何ぞ」ととひたまひき。答へ白言ししく、「我が女(むすめ)は、もと八稚女(やをとめ)ありき。これを高志(こし)の八俣遠呂智(やまたのをろち)、年ごとに来て喫(く)ふ。今その来べき時なり。故、泣く」とまをしき。ここに問ひたまひしく、「その形は如何に」ととひたまへば、答へ白さく、「彼(そ)の目は赤加賀智(あかかがち)のごとくして、身一つに八頭八尾あり。またその身に蘿(こけ)と檜・榲(すぎ)と生ひ、その長は谿(たに)八谷(やたに)峡(を)八尾(やを)に度りて、その腹を見れば、ことごとにつねに血爛(ただ)れたり」とまをしき。(ここに赤加賀知と謂へるは、今のほほづきなり。)ここに速須佐之男命、その老夫に詔りたまひしく、「これ汝が女ならば、吾に奉らむや」とのりたまひき。答へ白さく、「恐(かしこ)けれども、御名を覚(し)らず」とまをしき。ここに答へ詔りたまひしく、「吾は天照大御神の伊呂勢(いろせ)なり。故、今天より降り坐しつ」とのりたまひき。ここに足名椎・手名椎神、「然坐さば恐し。立て奉らむ」とまをしき。ここに速須佐之男命、すなはち湯津爪櫛(ゆつつまぐし)にその童女を取り成して、御美豆良(みみづら)に刺して、その足名椎・手名椎神に告りたまひしく、「汝等、八塩折(やしほをり)の酒を醸(か)み、また垣を作り廻らし、その垣に八つの門を作り、門ごとに八つの佐受岐(さずき)を結ひ、その佐受岐ごとに酒船を置きて、船ごとにその八塩折の酒を盛りて待て」とのりたまひき。
現代語訳
スサノオはさらに尋ねました。「あなたたちが泣いているわけは何か」。老夫は答えました。「私の娘は、もとは八人いました。それを高志の八俣の大蛇が毎年来て食べてしまいます。今年もその来る時期になったので泣いているのです」。「その姿はどのようなものか」と問うと、「目はほおずきのように赤く、一つの体に八つの頭と八つの尾があります。体には苔や檜や杉が生え、長さは八つの谷、八つの峰にわたり、腹を見ると、いつも血で赤くただれています」と答えました(赤加賀智とは、今のほおずきのことです)。スサノオは老夫に言いました。「あなたの娘を私にくれないか」。老夫は「恐れ多いことですが、お名前を存じません」と答えました。スサノオは「私は天照大御神の弟である。今、天から降ってきたところだ」と名乗りました。足名椎と手名椎は「そういうお方でしたら恐れ多いことです。差し上げましょう」と言いました。そこでスサノオは少女を櫛の姿に変えて、自分の髪に挿し、足名椎と手名椎に命じました。「あなたたちは、何度も醸した強い酒を造り、垣を巡らし、その垣に八つの門を作り、門ごとに八つの棚を設け、棚ごとに酒桶を置き、桶ごとにその強い酒を満たして待ちなさい」。
解説
この章句が説くこと
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